3-60 夫妻にとても喜ばれました……特にあのスキルがネ!
学園に転移魔法で帰ってきたのだが、女子寮の空き部屋で国王のゼヨ伯父様たちが待ち構えていた。
ゼヨ伯父様はプリシラの目が本当に治ったのか凄く気になったようだ。
アーリヤ姉さんはゼヨ伯父様の言を聞いて不妊治療の為に付いてきたようだ。
アーリヤ姉さんは自殺が頭をよぎるぐらいだ……切羽詰っているのだろうから何とかしてあげたい。
リューク君の記憶にないこの人の名前なんだっけ? ナビー?
『……ダリル・C・ファクス、王族の血筋を引いた侯爵家の者ですね』
『先代国王の弟の孫か……』
プリシラとキャッキャ言ってるおっさんは放っておいて、俺はこっちを何とかしよう。
「ダリルさん、お久しぶりです。お元気そうですね」
「ああ、私は元気なのだが……最近妻が元気がなくてね。国王様が君なら何とかしてくれるというので、迷惑かなと思いつつも訪ねてきてしまった。すまない……」
「いえ、近いうちに一度診てあげようと思っていたところです。貴族にとって後継問題は切実ですからね」
「そう言ってもらえると有難いよ」
「じゃあ、まずは、アーリヤ姉様から診ましょうか? 男より女性の方が問題が多い可能性が高いのです」
「ええ、お願い。ありがとうリューク君」
サリエを連れて隣の部屋で診察しようとしたら、フィリアとルルが付いてきた。
「ちょい二人とも、裸になる必要があるんだ。遠慮してあげてくれないか?」
「アーリヤさん、聖女としてリューク様の治療技術にとても興味がありますの。是非同伴をさせてくださいませんか?」
「アーリヤ様、わたくしもヒーラーとして是非リューク様の技術をこの目でみとうございます」
「あの? 裸になるの? わたくしそのようなことは聞いてなかったのですけど?」
「止めますか? 恥ずかしがってる場合じゃないと思いますが? それに治療行為ですし……昔はお風呂に一緒に入った仲ではないですか」
「リューク君、いくつの頃の話をしているのですか……。まぁ、仕方がないですわね。お二人も見たいのであれば構いませんよ。聖女様とヒーラーとして有名なフィリアさんに一緒に診てもらえるなんて光栄ですしね」
「「ありがとうございます」」
もともと王女様は侍女を何人かはべらせての入浴なのだ。一般人と違い、女性が何人いようが恥ずかしいとかいう感覚はあまりないだろう。
あら? 原因はアーリヤ姉さんにあった。
「どうやら原因はお姉様の方みたいですね。子宮筋腫の大きいモノができていて、卵管を圧迫しているようです」
「あの? 専門用語なのかな? 言っていることがさっぱりなのですが……」
「分かり易く言うとですね、赤ちゃんが出来るお腹の場所に、大きなおできができてしまっているのです。そのおできが邪魔をしちゃっているので、旦那さんの子種を上手く受け取ることができないのです」
「そうなのですか!? やはりわたくしのせいだったのですね……あの人に申し訳ないですわ」
アーリヤ姉さんは涙目になっている。
不謹慎だが、アーリヤ姉さんとっても魅力的だ……あんな影の薄い奴には勿体ない美人さんだ。
「大丈夫ですよ。この程度直ぐに治せます……他に体の異常はないようですので、このおできを魔法で取っちゃいますね」
「治るのですか?」
「ええ、うちのセシア母様も似たような症状でした。セシア母様の方は死に至るものでしたので大変でしたが、アーリヤ姉様のモノはタダのおできですので、10分もあれば治せます」
「お願いリューク君! 子供が出来るようにしてください!」
「勿論です」
「ん、リューク様、私がやっても良い?」
「そうだな……筋腫がどんなモノか、先日ちょっと説明してあげたから治せるかもな。サリエがやってみるか?」
「ん、頑張る。【アクアフロー】【細胞治療】まず魔素の流れを作って――」
「お、良い感じだぞ。そうそう、その余分なおできを消し去るイメージが大事なんだ……」
少し時間が掛かってるが順調だ。
「ん、消えた? リューク様、確認してみて」
「どれどれ、完璧だ。サリエ、上手いぞ!」
サリエは30分ほどかかったが、少しづつ削り取って筋腫を除去することに成功した。
最近サリエはフィリア以上に回復魔法に熱心だ。自分の母さんが死んだ時のことを思っているようなのだ……もし、あの時自分が回復魔法の使い手ならと。なのでサリエの気持ちを察して、丁寧に教えてあげることにしたのだ。
本来、サリエには聖属性の適性はあまりない。俺の【カスタマイズ】で付与してあげたモノなのだ。サリエはとても熱心に回復の仕方を知りたがる。
「治ったのですか?」
「ええ、後は少し魔素の停滞箇所があるのでサリエが散らしてくれます」
俯けになってマッサージをしたのだが……。
「リューク君! この娘私に下さいな!」
「ダメです。その娘は俺の婚約者ですからね。絶対あげませんよ」
「そうなのですか……残念です。なんて気持ちが良いのでしょう。なんだか体が凄く軽くなりましたわ」
あまりの気持ち良さに、この侍女をクレと言ってきたのだ。分からないでもないけどね……今回かなり手加減していたようだが、失神しそうなほどにサリエのマッサージは気持ちが良いのだ。
旦那さんの方なのだが……疲労があるものの健康体だった。俺も疲れているので当然マッサージはなしだ。
フィリアたち?
ダリルさんの診察も見たがったが、勿論追い出した。俺以外の男の裸なんか見せたくない!
「ダリルさんはどこも異常はないですね? 健康体です」
「そうか、良かった。それで……子供はできるかな?」
「そうですね、6日後にゼヨ伯父様に預けてある秘薬を飲んで性行為をすれば、ほぼ確実に子供が出来るでしょうね。男女比は9:1ですけど……」
「6日後か? 分かった。頑張ってみるよ。リューク君ありがとうな。感謝する!」
「あ、それとこれは皆に秘密ですよ? ちょっとしたスキルを伝授してあげます」
【性技】をコピーしてLv2にしてあげた。
「ん? これは?」
「エッチが上手になるスキルです。皆には内緒ですよ? それでアーリヤ姉様を蕩けさせてあげてください。女は子種を注ぐだけではダメなんです。優しく大事に慈しんであげないと夫婦の営みは上手くいかないというのが、うちの父様の持論です」
「ゼノ殿の? あの夫妻はいつも仲良さそうだよね……分かった、使わせてもらうよ」
彼が下手というのは言わないであげた……武士の情けだ。
だって俺が言われたら凹むもん!
伯父様に例の秘薬を渡すように伝え、今日は帰ってもらった。
アーリヤ姉さんの件はこれで解決するだろう。
伯父様からいくつか建国の進捗を聞いたが、大工や土木関係の人員集めも順調なようだ。
今日はもう疲れた……自室に帰って風呂に入りたい。
「リューク様……サリエちゃんが使えるということは、わたくしも学べばさっきのスキルを覚えられるのでしょうか?」
「今のフィリアではまだ無理だね。【魔力操作】と【魔力感知】の熟練度が足りない」
「そうですか……残念です……」
急にサリエが色々技術をマスターしているので怪しんでいるようだが、突っ込んでは聞いてこない。
今の俺に嫉妬してくれるフィリアなら【コネクト】と【カスタマイズ】でコピーしてあげても良いのだろうけど、まだちょっと不安なんだよね……ローレル姉妹やサーシャたちの件で、不意に愛想を尽かされて婚約解消とか言われかねない。
自業自得なんだけど……もうちょっと強い絆が欲しいよな。
今度ちょっと関係を迫ってみようかな……建国の際、今のフィリアじゃ足手まといにしかならない。それまでにスキルを色々コピーしてあげたいのだ。
さぁ風呂だ!
「サリエはもっと回復技術を学びたいの?」
「ん、この魔法は凄い。もっと知りたい」
俺はサリエを後ろから抱っこして、湯船につかりながらリラックス状態だ。
「今度部位欠損になった腕とか足の繋ぎ方を教えるね。燃えてなくなった腕とかは厳しいけど、剣で切断されたモノなら意外と簡単に治せるから、そのコツを教えてあげる」
「ん、嬉しい!」
「それと、2日後サリエの誕生日だろ? 養父のトルトスさんに婚約を取り付けに行くから、その日にアポを取っておいてくれる?」
その言を聞いて、サリエは泣きだした。
「サリエ?」
「ん、嬉しいの! リューク様ありがとう!」
口約束はしていたものの、公爵家の子息なうえに、もうすぐ王になろうとしているのだ。本当に結婚してくれるのか、サリエの立場からすると凄く不安だったようだ。
「明日うちの父様にも報告に行くね。反対はしないだろうけど、事後報告は流石に怒るだろうからね」
「ん、ダメって言われないかな? フィリアでも一度はダメって言われたのでしょ?」
「フィリアが10歳くらいの時は、本当に只可愛いだけの取り柄のない少女だったからね。公爵家としては家格の低い子爵家の娘では容認できなかったんだろうね。サリエは問題ないよ。その剣の腕前だけでも公爵家としては見過ごせないだろうけど、今の俺に何を言っても『神託だ!』の一言で済むからね」
流石に疲れていた俺は、入浴後サリエにマッサージをしてもらいさっさと寝た。
翌朝7時……ダリルさんからコールがあった。
内容は「アーリヤが昨晩泣くほど喜んでくれた。朝も凄く機嫌が良いんだ!」と言うものだ……凄く腹立たしかったので、これまでダリルさんが超下手すぎて行為自体がアーリヤ姉さんからすれば苦痛だったとバラしてやった!
凄く凹んでいたが、朝から俺にのろけ話なんかするからいけないのだ! それでも凄く感謝していて、建国の際には寄付金を出してくれるそうだ。
朝食は皆と一緒にナナの部屋で摂ることになっている。ローレル姉妹も今日からは一緒だ。扱いはルルとプリシラの侍女兼任だ。姉妹は調理にも参加している。
大騒ぎになるだろうな……。
何せ聖女様と王女様の途中編入だ……今日は彼女たちの初登校なのだ。
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