1-15 ジェネラルの所持してた剣は凄く良いものでした

 洞窟内部は獣臭と血の匂いでむせ返るほど酷い事になっている。

 【嗅覚強化】をOFFにしているが【身体強化】の方があるのでどうしても臭いのだ。


 風魔法で洞窟内部を換気しながら見て回る。


 洞窟の最奥に武器庫のようなものを見つけたが、どれもこれも錆びていて良品とは言えない。置いておくとまたオークに再利用されてしまうので、全て【インベントリ】に放り込んで持ち帰ることにした。


 武器庫には幅2mほどの大きさの宝箱があり、中に30cmぐらいの綺麗な宝石箱が入っていた。中を確認すると宝石が10個入っている。どこかの商隊を襲った時に奪ったのだろう。オークが持っていても役に立たないだろうに……。


『……オークも綺麗な光物は好きなのですよ。上位種は知能も高いですしね』

『そうなのか……』


 他にもぎっしりお金の詰まった袋やアクセサリー類が14点入っていた。


「おーい! サリエ! 宝箱があって宝石箱に宝石が10個入ってたぞ!」


 走って駆けつけてきた。サリエも光物に興味があるのかな?


 「ん! どれ? 見たい!」


 宝箱を手渡してあげると中を覗いてニンマリした。


「サリエは宝石好きなのか?」

「ん! 綺麗! ルビーやエメラルドもある! 高く売れそう!」


「なんだ、宝石より、お金の方が好きなのか」

「一杯稼いだら孤児院に寄付できる」


 あーそっち。自分の為じゃないのね……自己中な俺とは大違いだ。


「サリエも僕も血だらけだね。【クリーン】剣も直しておこうか【リストア】」

「ん、リューク様、ありがとう」


「このジェネラルが使ってた剣、凄くいい剣だね。俺のよりずっといい物だよ。ミスリルの純度が71%もあるし、オリハルコンも11%も混じってる。ミスリル71%、オリハルコン11%、鋼18%だね」


「ん、リューク様の今使っている剣の純度はどれくらいなの?」


「僕のは、ミスリル42%鋼58%だね。ミスリルが10%以上あると錆びることがなくなるからいいよね」

「ん、私のも見てほしい」


「サリエのショートソードはミスリル52%、鋼48%だね。短剣のマン・ゴーシュの方はミスリル74%、鋼26%だね」


「ん、リューク様のより良い物?」

「そうだね、サリエの物の方がミスリルの純度が高くて良いものだ」


「ん、リューク様、ジェネラルの剣に持ち替えるの?」

「一旦ギルドに全部提示して持ち主がいないのを確認しないといけないんだよね。10日間誰も持ち主が現れなかったら僕たちのものになるけどね」


「ん、もし持ち主が現れたらどうなるの?」


「個人を特定できる証明ができれば、ギルド査定の半分の値段で売ってあげて返すことになる。現金は証明できないから僕たちの物になるね。宝石なんかは大抵鑑定書があるから、ギルドを通した正規品なら持ち主が現れると思う。本来の所有者が半値で買い取れない場合や、既に亡くなっていて、その人に身寄りがいなかったり、家人が買取れない場合も僕たちの物だね。剣なんかには今僕が持ってるやつみたいに家章が入ってるものがあって、個人が特定できる場合があるけど、この剣は何も入ってないから多分僕たちの物になるよ」




 サリエと洞窟内部をくまなく探索した。


「ん、もう何もないね?」

「じゃあ、外に出よう。臭くて吐きそうだ」


 洞窟を出て今後の相談をする。


「オークどうする? また血抜きしてからギルドに売る?」

「ん……ロープが足らない」


 死んでから時間が経つと血が凝固してしまい、持ち込んで後からギルドで血抜きを行っても肉が血生臭くなり、味がかなり落ちるのだ。事前にこっちで血が体の内部で固まる前に血抜き処理をやっておくと買取査定がかなり良くなる。


 【魔法創造】

 1、【重力操作】

 2、・重力を操り浮かせたり移動させたりできる

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動


「またコピーしてあげるね。【重力操作】【魔糸】【魔枷】【将の咆哮】【ファイアボール】【ファイアウォール】、これで焼く作業も手伝えるね」


「ん、知らないスキルがいっぱいある」


「【重力操作】は【レビテト】みたいなもので、重力を操作して自分や物を浮かせて移動なんかができるようになる。【魔糸】は自分の魔素を糸にしたもので、イメージ次第で強度が変わってくるから、糸を出す際に強くて丈夫なイメージで出すといいよ。柔らかくて伸びるようにもできるし、魔力操作で自由に操ることが可能だよ。【魔枷】も拘束用の魔法だけどそのうち役に立つと思う。実際にやって見せた方が解るから、サリエを縛ってみるね」


 そう言いながらも既に魔糸を指先から出してサリエの右腕に巻きつけている。そのまま左腕に絡みついた瞬間キュッと閉めれば後ろで両手が拘束された。


「ん! 一瞬で捕まった!」

「そうそう切れないから、解こうとしてみてごらん」


「ん、無理……解けない」

「そして【魔枷】を使うと」


「ん、魔力が出ない!」

「これで魔法も使えなくなるから、拘束するには最適でしょ?」


「ん、ラエルを拘束したい!」


 サリエの【魔枷】は外し、【魔糸】はそのまま残し【重力操作】を発動する。


「今サリエは無重力にしてあるから、こうやって糸で楽に引っ張れるんだ。これをオークの足に縛って浮かせて木に括っていけば楽に吊るせるでしょ。昨日はオークを吊るすのに凄く疲れたからね」


「ん、リューク様の発想が凄い!」

「あはは、縛って動けないサリエにいたずらしちゃうぞ~」


「ん? きゃー?」

「なんだよそのわざとらしい悲鳴は、棒読みかよ!」


 サリエの【魔糸】と【重力操作】を切ってあげて、順番に木にオークを【魔糸】でぶら下げてやり方を実演する。4体ほどぶら下げた時にサリエが声を掛けてきた。


「ん、私もやってみる」

「ちょっと木が足らなくなりそうだから、木と木の間に魔糸を張ってそこにぶら下げようか」


「ん、分かった」


 周辺の木々の間にずらっと首なしオークが逆さにぶら下がっている。至るとこで血が滴って異様な光景だ。

 1頭づつ【インベントリ】から出して装備品を剥ぎ、ひたすらぶら下げていく。全部でオークは132頭もいた。


 兎は9匹、猪のような魔獣や体高2mもあるカマキリの魔獣、足も含めたら4mほどの蜘蛛の魔獣も知らないうちに狩っていたようだ。移動の時にMAPで射程に入った瞬間殺したので目視で確認していなかったのだ。


「サリエ、カマキリって売れる?」

「ん、キラーマンティス。両手の鎌と魔石が良い値で売れる」


「猪と蜘蛛は?」


「ん、猪はスタンプボア、オークよりお肉が美味しい。高級食材。オークナイトよりは劣る? 蜘蛛はストリングスパイダー、お尻から出る糸が高級糸で良い服が作れるからこれも高値で買ってくれる。魔石はそれほど高くない」


「どうすればいいのか分かる?」

「ん、猪はオークみたいに血抜きがいるの。オークと一緒にギルドで剥いでもらうといい」


「ふむ、他は?」 

「ん、カマキリは鎌と魔石だけなので今すぐ私が3匹とも剥ぎ取る。蜘蛛は血抜きが必要なくて、魔石だけ抜いて持ってけばそのまま買ってくれる。足の肉が美味しい」


「……蜘蛛はちょっと食べたくないな……」

「ん、じゃあ全部売却。兎はどうするの?」


「今回多いから、全部ギルドで剥いでもらおうか?」

「ん、了解。あの……兎のお肉貰っていい?」


「孤児院にあげるのかい?」

「ん、昨日の兎のシチュー美味しかったから、子供たち食べ盛りなのでお肉は凄く喜ぶ」


「じゃあ、これだけあるんだからオークも30頭ほどあげようか。教会には神器のアイテムBOXがあるからね。いくらあっても腐らないでしょ」


「ん、リューク様ありがとう!」


 神殿で保護されたサリエが孤児院に寄付したがるのは理解ができる。少しでも恩を返したいのだろう。


 サリエがカマキリを解体してる間に、最初に吊るしたオークの血抜きが終えている。


「ゴブリンとコボルドの魔石を抜くの面倒だね。もうこのまま燃やしちゃおうか?」

「ん、ダメ! 生き物の命を奪ったのに、粗末に扱っちゃダメ! 屑魔石でも1個1000ジェニーになるし、討伐報酬ももらえる。ギルドのランクアップ査定にも影響するの。私が取り出すから待ってて」


 サリエに怒られた……確かにサリエの言うとおりだ。

 ここはゲームの世界ではないのだ。

 俺たちはレベル上げだけの為に生き物を殺したのではなく、冒険者として肉やお金を稼ぐ意味もあるのだ。あくまで狩猟だ。素材を粗末に扱ってはいけない。それに、元々俺は遊びの為のゲームフィッシングやトロフィーハンティングは反対派だ。


「じゃあ、僕は血抜きが終えたオークを順番に下ろして【クリーン】をかけて収納していくから、ゴブリンの魔石の取出しは任せるね」


 【クリーン】は掛けなくてもいいのだが、少しでも買取査定を上げるためだ。


「ん、頑張る!」


 洞窟前の広場にゴブリンとコボルドをぶちまける。


「じゃあ、魔石を抜き終えた分の死骸は、判らなくならないようにサリエの【インベントリ】に一旦入れといて。後でまとめて焼却するから」


「ん、分かった」


 2人とも作業が終わり、洞窟前の広場で死骸を焼却する。


「さて、オーク132、猪2、蜘蛛3、兎9なんだけど。どうしようか? この量を一度に出すとヤバいよね?」

「ん、どうしよう?」


「うちの騎士で【亜空間倉庫】の容量が多い奴を数名呼ぼうか? 街道から1.4kmだし、街からも15kmぐらいしかないから馬で来てもらえば1時間かからない」


「ん、それがいいのかな?」


『……お待ちください。マスターが今後活動するのに隠し通すのは不便です。冒険者程度の相手ならもうどうにでもなるのですから、さっさと公開するべきです。容量無制限というのは言わなくても大容量ということにすれば良いのです』


『それもそうか……早いか遅いかの違いだしね。特に身内には公開してコピーしてやった方がいいもんね。世間には大容量ということにして、身内には時間停止機能と容量無制限を教えてコピーしてあげようかな』


「サリエ、変更だ。サリエと僕で半分ずつ持って帰る」

「ん、でも……」


「世間には僕とサリエは大容量ということにして、身内には時間停止機能と容量無制限を公開してコピーしてあげようかなと思っている。今後隠し通してもメリットが少ない。それなら身内にはばらして温かいものや冷たいものを食べたり保存できる方が有効だ。僕たちはよからぬ奴が言い寄ってきても返り討ちにできる実力ももうあるし、公爵家という家の権力もあるので悪いようにはならないだろう」


「ん、確かに……隠すより使った方が有用」


「じゃあ、帰ろうか。サリエ、結構稼げたけど、今回は寄付しないでお金を貯めて、2人とももっといい武器を新調した方が良いかもしれない」


「ん、分かった」


「レベルと実力に見合った装備じゃないと、今後強敵が現れた時、武器負けしてしまうからね」

「ん、リューク様のおかげで私、めちゃくちゃ強くなれた。もうこの武器だとちょっと頼りないかも……」


「だろ? だから孤児院も大事だろうけど、お肉とかの援助だけにして、自分たちの装備を固めような」

「ん、そうする。まずはリューク様からね」


「いや、僕のは今回のジェネラルのでいい。サリエのショートソードを変えるべきだな。身体強化と腕力強化でもっと重くても扱えるようになっただろ? 10cmほど長い剣に変えた方がいい」


「ん、もっと重くてもいける」

「130cmしか身長が無いサリエは長すぎても扱いにくくなるから、後10cm長いぐらいで丁度いいはずだ。まあ、剣のことはサリエの方が詳しいだろうから好きなのを選ぶといい」


 サリエにオークを半分渡し、【テレポ】を使って街の入り口付近に移動する。


「ん、朝【テレポ】を使った場所!? あっという間……凄い」


「上がったステーテスも気になるけど、もうすぐお昼だし、どこかで先に昼食にしようか?」

「ん、お腹ペコペコ」




 ステータス確認やギルドに行く前に、サリエと先に昼食を済ますことにした。

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