3-30 ナビーは俺をのせるのが上手いです
ナビーは俺の扱いが上手い。
ナビーは、俺のイメージで誕生したモノなのだが、感情などは俺がベースになっているようで、俺については知り尽くしている。今回もナビーに丸め込まれそうだ。
だが、それが一番良いと思えるような案なので、毎回賛同してナビーの助言どおり行動してしまっている。今のところ、ナビーの指示でいいようになったことは多々在るが、悪くなったことはない。
むしろ、無視して行動したら情けない結果になっている。
無視して良い結果になったのは、唯一サーシャたちに出遭えたことぐらいかな。
なので、ナビーの言葉は言いなりになるのではなく、良く聞いて考える事にしている。創主の爺さんが言った言葉だね。
「ナビーは学園に通いながら、片手間の3年で建国できると思っているのか?」
『……いえ。マスターなら建国だけなら1年ほどですね。夏休みの最初の3日で竜共を鎮め彼の地を平定します。海岸線から50kmほど奥地の湧き水の出ている湖畔の畔に建国して上水・下水の整地をし、きっちり区画整理して水路を潤滑に流します』
「その辺の説明は今はいい。俺が聞いてるのはナビーは国遊びがしたいのかってことだ」
『……人を誘致するのです。やるからには遊びでは済まされません。人の人生が左右される事柄です』
「そういうのが俺は嫌なんだよ! なんで人の人生を背負い込まなきゃならないんだよ! 俺はもっと自由に生きたいんだ!」
『……マスター1人が背負う必要はないのですよ? 面倒なことは宰相にやらせればよいのです。キリクとか宰相に向いているのではないですか? あの者は根っからの執事体質ですので甲斐甲斐しく働いてくれると思います。若過ぎる宰相だと近隣国に舐められる可能性もありますので、最初は誰か政治のベテランを側において、キリクを鍛えてもらうとよいでしょう。そうだ! 其処の馬鹿兄弟と違って叔父のゼファーが宜しいかと思います』
「ナビーは国造りをしたいのか?」
『……はい。それが何年か後にマスターの為になります。手間なのは最初の内だけです。それも、必死になる必要はないと思っています。マスターなら片手間でできるはずです。まだ時間はありますので、とりあえずローレル姉妹案件の治水工事で試してみてはどうでしょうか? おそらくそこで何らかの手応えがあると思います。何度も言いますが、1人でやる必要はないのです。役所のようなものを構えて人に任せるのです。登記をする者、治水をする者、税の徴収、分配。元から国の統治は1人ではできません……マスターは環境を整えて丸投げで良いのです。適材適所の割り振りと監視はナビーとアリア様で行います』
確かにローレル姉妹をこのまま見捨てて行くわけにはいかない。
知らん顔して俺がこの国を出て行くと、また近いうちに川が氾濫して莫大な借金を残して彼女たち姉妹の家は破綻する。
没落した家の女は悲惨なものだ。
奥方や年頃の女は借金奴隷として国に売りに出される。
買い手は殆どがエロ貴族か娼館だ。莫大な借金故開放されることもなく、客が取れる限界まで娼婦として働かされ、客が取れないような年齢に達すると今度は重労働な鉱山の採石場や土木業の過酷な雑務にまわされるのだ。
かといって父様が救済に介入すると周りに示しがつかない。今後他の開拓に勤しんでいる者がこけたとき、全部父様が被る事になってしまう。寄親は寄子に対し、依怙贔屓してはいけないのだ。
マームは努力家なので自分で頑張るかもしれないが、俺がパーティーに誘った事で、俺が居なくなった後クラスで平民から仲間はずれにされ孤立する可能性がある。
「ゼヨ伯父様、暫く学園に用もありますので国外に出るのは中止にします。ですが、暗部は目障りなので寄こさないでください。今サーシャたちに張り付かせている者たちも撤収させてください。俺には神の監視網があるので全てお見通しです。今回のプリシラの件も、女神アリアではなく、女神ナビーによって教えられたものです。俺には専属女神が付いていますので、くれぐれも謀ろうとか思わないでください。今回のようなことをまたやったら、城ごと【ナパームボム】の餌食にしますからね」
「そのさっきから言ってる【ナパームボム】と言うのはどういうものなのだ? なんか邪悪な響きなのだが……」
「落とした地点から半径50mが灼熱の海になるものです。城など1発で溶けて無くなるでしょう」
「なんて恐ろしいものを……女神アリア様がお前に授けた魔法なのか?」
「そうですね。そう捉えてもらっていいと思います」
うん、嘘は言ってない……正確にはアリアが授けた魔法で、俺が新たに創ったオリジナル魔法だけどね。
あ、そういえばアリアの口枷外すの忘れてた。アリアを見たらまた涙目になっている……。
ちょっと可哀想なので外してあげる……そう睨むなよ。お前が悪いんだろ。
「それでだ、うちの娘の件なのだが……リュークは全部聞いていたとのことだが……」
『ナビー? ジェネラルの睾丸でそんなものできるのか?』
『……はい、それならもう完成して【インベントリ】に保管していますので、お使いください』
『話の流れで予想してたのか……勝手に作ったことを怒るべきか、言う前から先を読んでタイミング良く仕上がっていることを褒めるべきか……』
『……褒めてください! ナビーはマスターの為にしているのです。悪いようには行動しません!』
『まぁ、そうだな。うん、ありがとう。使わせてもらうね』
「伯父様、これです。精力剤の一種ですが、オークの種族特性に生まれてくる子の9割以上がオスってのをご存知ですか?」
「ああ、勿論知っている。その代わりに、どの種族とでも子を成せる特性を有しているのだよな? 同種のメスが足らない分、多種のメスを犯して孕ませるのがオークやゴブリン族どもの特性だ」
「そうです。そして、もう1つの特性として排卵誘発効果ですね。奴らの出す精液のその効果のせいで、オークに犯された女性の85%以上がたった1回で妊娠してしまいます。なのでこの薬を夫婦で飲んで性行為を行えば、男児の生まれる確率は9割以上のうえ、妊娠確率85%という効果が得られます。更に男性の精力も暫くはオーク並ですので、間違いなく子ができるでしょう」
「そのような薬初めて聞いたが、もしそれが本当なら貴族たちはこぞって金を出してそれを求めるぞ」
「女神の知識なので間違いないでしょう。俺が国を建国したなら、国の特産として売りに出しても良いですね。今回は特別にゼヨ伯父様に3本あげましょう。貴重な鉱石の代金替わりです」
「リューク! その薬、まだあるなら俺にも何本かくれないか?」
「父様はこれをどうするのですか? ああ、ロッテ先生か……」
「ああ、ロッテはどうやら男の子がほしいようだ。40歳近い高齢なので、1人生めればいいと思っているようなので、できれば希望通り男児を授けてやりたいのだ。それと我が領地の寄り子に、なかなか子ができなくて困っている夫婦が何組かいてな……貴族にとって子ができぬと爵位を剥奪されてしまうからな。できれば養子ではなく、自らの子で継承させてあげたい」
「でも健康な男女にしか薬の効果はでないです。何年もとなるとセシア母様のようになんらかの弊害があるのかもしれないですね。旦那さんの方に子種がないのであれば、もうどうやっても子はできません」
「子種がないってこともあるのか?」
「ええ、大きくなっておたふく風邪とかもらって、高熱を出した人とかに多いそうです」
話の流れでナナが思い出したかのように俺に質問してきた。
「あっ! 兄様! 【性技】というのは何のことでしょうか?」
クソッ! アリアの奴、余計なこと言いやがって! ナナだけじゃなく、フィリアとサリエまでいぶかしんだ目を向けてるじゃないか!
「ああ、それは今日のプリシラ救出の際に手に入ったスキルだ」
「今日ですか? サーシャとかいう娼婦たちに教わって身に付けたものではないのですか?」
「違う、今日の午前中の話だ。それとナナ、サーシャたちのことを見下した言い方をするのは許さない。彼女たちは皆家庭の事情、親の都合で娼婦に仕方なくなったのだ。さっきお前が隣国に嫁ぐ話になったのと全く同じだ。お前は家の都合で隣国の知らない相手、彼女たちは娼館にくる知らない不特定多数の男たちが相手だ。どっちも自分で選べないという点では同じだろう? 彼女たちを見下すというなら、ナナも望まぬどこかに一度嫁ぐといい。相手が一人なので彼女たちよりはかなりマシだろうが、好きでもない望まぬ男の性の相手をしてみれば、彼女たちの悲しみや苦しみの気持ちも少しは理解できるようになるはずだ」
「ごめんなさい兄様……おっしゃる通りです。でも見下したのではありません。彼女たちに嫉妬していただけです。プリシラどう?」
「はい。リュークお兄様は嘘は言っていないですね。【性技】というスキルは今日手に入れたようです。【スティール】のような技やスキルを盗む特殊なスキルをお持ちなのかもしれないですね? そうでしょ? リュークお兄様?」
「こら! お前たち! 2人でなに結託して俺の言葉を査問しているんだ」
「やはり、何かそういう系統のスキルをお持ちのようですね」
「プリシラ、もう忘れたのか? 俺はそうやって探ってくる行為は嫌いだと言ったよな? 厄介な奴を俺が仲間に入れると思うか? 自分で嫌われるようなことをやってるんだ、俺に拒否されても自業自得と思え」
あっ……シクシク泣き出してしまった。
そういえば、まだプリシラは15歳だったな。ちょっと言い過ぎたか?
『……マスター、このくらいでよいのですよ。プリシラは凄く良い娘なのですけど、今のように興味を持ったことは問い詰めて自分が納得しないと収まらないのです。そのせいで姉妹たちからも煙たがられて、城内でも孤立しています』
「プリシラ、嫌ってはいないから泣かなくてもいい。でも、忠告を無視して何度も繰り返すようなら、お前の姉妹同様、俺もそのうちお前を避けるようになるぞ? それは誰のせいでもなく、プリシラの自業自得なんだからね」
「はい。リュークお兄様に嫌われないようにいたします。どうか嫌わないでくださいまし」
「別に心を覗かれたぐらいで嫌ったりはしないよ。俺は女神たちに常に監視されているから、もう慣れっこなんだ。だからプリシラがちょっと覗いても全然平気だよ。でもやっぱり不快なものは不快だからね。通常の会話中にプリシラが覗いてしまうのは良いけど、さっきのように積極的に意図して覗かれるのはやっぱ嫌だからね」
「はい、ごめんなさい。気をつけます」
後はククリお姉さまの件だな……建国か、どうしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます