3-108 うるさい雀たち

 チュンチュン!

 バシャバシャバシャ!

 チュンチュンチュン!


 う、五月蠅い……。


 雀の鳴き声で目覚める。


 横を向くとフィリアが眠っていた……やっぱ可愛い!


 そしてシーツの隙間から美乳が……いや、神乳が見えている!

 朝からムラッときたが、ここは我慢しないとね。


 チュンチュン!


 異常な五月蠅さにフィリアも目覚めたようだ。

 俺と目が合い、顔を耳まで赤らめシーツを頭の上まで被ってしまった。


「おはようフィリア」

「お、おはようございます……なんだか凄く恥ずかしいです」


 昨晩はお互いにめっちゃくちゃ乱れたからね。最初こそマグロ状態だったけど、回復魔法で痛みがなくなってからは俺の言いなりで色々ご奉仕してくれた。


 恥ずかしがっているフィリア可愛い!


「今、凄く幸せだよ」

「わたくしもです♡」


 チュンチュン! バシャバシャ!


 おっぱい見て、朝からムラムラしているが、外の騒がしさが気になる。

 可愛い彼女を抱きながら雀の鳴き声でお目覚めとか、アニメではお決まりのシーンだが……その鳴き声が異常に五月蠅いのだ。


 窓から外を見たら、滝のほとりで3羽の雀が溺れていた。

 うん? 雀? で、でかくないか!


『……マスターおはようございます。あれは溺れているのではなく、朝の水浴びです』

『ナビーおはよう。水浴び?』


 体高3mほどのでっかい雀が、水に浸かって羽をばたつかせている。

 でかいから鳴き声も大きく、『雀の鳴き声でお目覚めモーニングコーヒー』ってな気分には当然なれない。


『折角のフィリアとの朝チュンを台無しにしやがって……腹立たしい雀だ!』


 これは世の男性が憧れる『美少女との朝チュン』とは断じて違う!


『……チュンチュンバードという魔獣で、Bランクの結構危険な魔獣です。お肉がとても美味しいらしく、高額取引されているようですよ』


 小学生の頃、近所の焼き鳥屋で食べた雀のタレ焼きを思い出す……串に2羽刺さっているのを骨ごとバリバリと食べた。


 雀のタレ焼き結構美味しかったな……よし、狩ろう!


 見た目の可愛さに反して、雑食性の危険なBランクの魔獣だそうなので、上級魔法の【ウインダガカッター】を放って、3羽とも仕留める。


「あ! リューク様、レベルが3つも上がりました!」

「えっ? そんなに⁉」


 俺も1つ上がっていた。

 先日の課外実習の時は狩りまくっても1つ上がっただけなのに、Bランク魔獣の経験値を2人で均等割りするとこれほど得られるのか。


『……やはりダンジョンの魔獣より、フィールドの魔獣の方が経験値を沢山得ている分、割りが良いようです』


 そういえばダンジョン内の魔獣は、レベルが上がる前に狩られるので、生まれたてのレベル1~2くらいの魔獣しかいなかったな。




 レベルが上がって喜んでいるフィリアの手を引いてお風呂場に向かう。

 昨晩は興奮しすぎて何度も襲っちゃったからね……全身色々とベトベトなのだ。


 お互い洗いっこし、昨晩使わなかった『サウナ』に入る。


「塩サウナって言ってね、この塩を肌に刷り込んで入ると凄く汗が出て肌もスベスベになるんだ」

「お塩をこんなに使って……なんだか勿体ないですわ」


 沿岸国から輸入しないといけないので、うちの国は塩が高いんだよね。だから海岸を含めた銀竜住まうあの危険エリアの建国はこの国にとっても重要になってくるのだ。


 3分の砂時計が落ちたので、サウナから出て水風呂に入る。


「わぁ~! お肌がスベスベです♪」

「毛穴が開いて大量の汗と一緒に汚れが毛穴の外に流れ出るんだよ。そしてこうやって開いた毛穴を冷水でキュッと閉めてあげると肌の肌理が整い、塩の効果も合わさってスベスベになるんだ。あの塩には回復剤も少し混ぜているので効果も良いようだね」


 何度か繰り返し汗を沢山掻いたが、フィリアはとても気に入ってくれたようだ。


 サウナの後はマッサージを行う。

 プリシラの目を治療した時に、フィリアも一度診察するという約束だったけど、今日まで機会がなかったのだ。


「気持ちいいです! ナナとマームが幸せそうな顔をしていたのも納得ですわ」


 【ボディースキャン】でフィリアをチェックしたが、いたって健康で安心した。


 ただ、塩サウナでスベスベになった柔々のフィリアの肌をマッサージしていたら、また我慢できなくなってしまった。



 遠慮なく頂きます!



  *  *  *


 やることやってすぐ帰るのもなんだか味気ない。


 せっかく渓谷にいるのだし、魚影も濃いようなので渓流釣りでもしてみようかな……。


 ログハウスを【インベントリ】に収納し、フィリアと滝の下流に向かった。

 本当は川を下るのではなく、上に向かって釣り歩くのが良いんだけど、釣れるかどうかのお試しだしね。


 移動中に以前採っておいた竹をナビー工房で乾燥させて釣竿に加工してもらう。


『ナビー、糸はストリングスパイダーを使おうか。俺が糸に【強靭】のエンチャントを付けるよ』


『……了解しました。浮きや針はどうしますか?』

『浮きはさっきの雀の羽毛を使おうか。針は使い捨てるので鉄製でいいよ』


「リューク様、何をなさるのですか?」

「渓流釣りというのをやってみようと思う」


「魚釣りですか? やったことないですわ」


「貴族令嬢だと野蛮な下品な行為だとかなのかな?」

「そんなことはありませんわ。でも、やったことのある御令嬢は少ないでしょうね。うふふ、楽しみですわ♪」


 川辺の石を剥ぐって川虫を見つけ針に刺す……確かこれで釣れるんだよな。


「えっ⁉ リューク様、それが餌なのですか!」

「うん、カゲロウの幼虫などの川虫が餌になるんだよ。試しに俺が最初にやってみるね」


 即釣れた!


「これはヤマメだね……でも大きいな。30cm近くある」



 フィリアに竿を渡していそうなポイントをアドバイスする。


「岩の周りや、流れ込みの下辺りにいることが多いよ」

「わぁ! リューク様なにかきました!」


 またすぐに掛かってきた……これまた大きい!

 フィリアは中々釣り上げることができず、必死に両手で釣竿を持って格闘している。

 

「慌てず、ゆっくり竿を立てて魚を弱らせてから手繰り寄せるんだ!」

「はい! あわわ……そっちはダメ!」


 あわあわ言って必死なフィリア……なんか可愛い!


「つ、釣れましたわ!」

「でかっ! 50cmぐらいありそうだね……イワナかな? あれ? イワナとヤマメって生息域が違っていたと思うんだけど……」


『……どうやらこの世界ではあまり関係ないようです』


 まぁ、釣れるならなんでもいいや!


「食べられない魚なのでしょうか?」

「いや、とても美味しい魚だよ。お昼にでも塩焼きにして食べようか?」


「本当ですか! それは楽しみですわ♪」


 内臓取りと血抜きは即座にやっておく……死んで血が凝固してからだと美味しくないからね。


 その時サリエからコールが鳴る。


「どうした? 何かあったか?」

『ん……お昼どうするの?』


 なんかサリエの拗ねた感がハンパない。


『……それは当然です。フィリアのことを認めていると言っても、マスターのことが好きなサリエとしては複雑な気持ちでしょうね』


 ナビーが俺にだけ念話でサリエの心情を伝えてくれた。

 まぁ、そうだよね。


「お昼はこっちで魚や朝狩ったチュンチュンバードを串焼きにして食べようかと思っている」


『ん? チュンチュンバード? それ美味しいって聞いたことある!』

「今フィリアと魚釣りして遊んでいるんだ」


『ん、釣り私もしたい! あ、でも邪魔?』


 フィリアの方を見たら笑顔で誘ってあげてと言ってくれた。


『ん、ナナ様も誘わないと後が怖い?』

「あ~、確かに……間違いなく拗ねるだろうね」


 という訳で、サリエ、ナナ、プリシラ、ルル、チェシル、マシェリ、パエル、アーシャ、俺とフィリアを入れた10人に増えてしまった。


 フィリア一人をここに残すわけにもいかないし、かといって一度帰るのも折角の良い雰囲気が台無しだ。どうしようか考えていたら、サリエが俺に付けたマーキングを利用し、皆を連れて転移してきた。


「ん、MPが……ウッ……」


 流石のサリエも、8人の同時転移はきつかったようだ。


 ナナのフィリアを見る視線が怖い……フィリアは恥ずかしいようで、皆と視線を合わせないように釣りに興じている。


「マームとキリクは誘わなかったんだね?」

「ん、お昼ご飯のために部屋に集まっていた人だけ」


「兄様! フィリアの薬指になにか凄く輝くモノが嵌められています!」


 フィリアを睨んでいたナナが目ざとく婚約指輪を見つけたようだ。

 お昼の日差しを受け、めっちゃ輝いていた。


 それまで恥ずかしそうに皆から離れたところで釣りをしていたフィリアが、見せびらかすように手を上げこっちに来た。


「昨晩リューク様が自らお造りになってプレゼントしてくださったのよ♪ どう? 見たことないくらい綺麗でしょ♡」


「兄様! フィリアだけずるいです!」

「ん、私も欲しい!」


 直接のおねだりはナナとサリエの二人だけだったが、ルルやプリシラ、チェシルとマシェリも凄く欲しそうに眺めている。


「皆のもちゃんと作るから……」


「フィリアさん羨ましいです。私も早く聖女という肩書は引退して、一人の女としてリューク様に尽くしたいです」


 ルルの奴……ぼそりと小声で嬉しいことを言ってくれてるのだけど、ちょっと重い。




 皆心得ているようで、フィリアへの下世話な追及はなかった。

 皆の分の釣竿を出し、ワイワイと入れ食いの渓流釣りを楽しんだ。


 渓流釣りと言うより、釣り堀だね……ほとんど移動もしないままの入れ食い状態だ。



 炭をおこし、イワナとヤマメは塩焼きに、チュンチュンバードは焼き鳥にした。


「ん! 焼き鳥うまうま!」

「リュークお兄様、凄く美味しいですわ!」


 サリエとプリシラはタレ焼きが気に入ったようだ。


「兄様、ナナはこのお魚が一番美味しいです♪」


 それ、ナナが自分で釣ったやつだね。


 皆でのBBQは超楽しい!

 楽しんだ後は皆で後片付けをし、ゴミは勿論ちゃんと持ち帰る!



 朝の雰囲気をぶち壊してくれたチュンチュンバードだったが、味は最高だった!

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女神に騙された俺の異世界ハーレム生活 回復師 @k1509

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