第156話 堀口明日香3、諸々の召喚1
ジゼロンを召喚するのに全SPポイントを使ったので、明日になるまで何もできない。ジゼロンを遊ばせておくのはもったいないんだけど、今のところ何も言いつけることがない。
この近くに散らばっているという魔族に渡りを付けにやってもいいかもしれないけれど、わたしは防御力皆無なのでジゼロンをそばから離すことはちょっとできない。
何もすることはないし、お腹も空いてきたので、アイテムバッグの中に入ってたお弁当を食べることにした。ジゼロンにも勧めたけれども、もったいないので遠慮します。と、断られた。
ジゼロンがアイテムボックスの中から椅子代わりに適当な石を床の上に出してくれたのでそこに座って食べることにした。
女神さまがアイテムバッグの中に用意してくれたお弁当はコンビニのノリ弁そっくりな弁当だったので、ドラゴンから見たら食べても食べなくてもそれほど変わらないのかもしれない。
ジゼロンがわたしの横に立って
飲み物はペットボトルに入っている濃い緑茶を飲んだ。
お弁当も緑茶もおそらく召喚魔法陣で召喚できるはず。お弁当とお茶でSPポイントを1ずつ消費するとなるとちょっとお高いような気がするけど、毎日1000ポイントももらえるわけだからそんなに高くはないのかもしれない。いやいや、これからわが国の人口が増えてくれば、ノリ弁もお茶も大量に必要になる。そう考えると、お弁当とお茶でSPポイントが1ではボッタクリのような気がする。
食べ終わった弁当の容器とペットボトルはジゼロンが回収してくれた。椅子代わりの石も片付けてくれた。ジゼロンは召喚されてまだ3時間も経っていないはずなのに何気によく気が付く。
お腹が膨れたら眠くなってきた。午前零時でSPポイントがもらえるとして、それまで寝ていることにした。
アイテムバッグから毛布を2枚取り出して2枚とも床の上に敷き、大判のタオルもアイテムバッグから取り出して丸めて枕にして横になった。
「ジゼロン。日が変わったら起こしてくれる?」
「かしこまりました」
「陛下、日が変わりました」
ジゼロンが起こしてくれたんだけど、周りが真っ暗で何も見えなかった。そしたら急にあたりが真昼のように明るくなった。見れば、部屋の天井近くに明るい光が輝いていた。
「ライトの魔法です」
「ありがとう」
SPポイントがちゃんと配給されているか意識したら1000ポイント残っていることが分かった。
それですっかり目が覚めたわたしは、床に敷いていた毛布や枕にしていたタオルをアイテムバッグの中に片付けた。
「ジゼロン、上に上って召喚魔法陣でいろいろ召喚するわよ」
「了解しました」
ジゼロンが先に立ってわたしがそのあとに続いた。部屋の明かりはジゼロンについて移動するようだ。
階段を上がると外は星空だった。前を歩くジゼロンの明かりで上の方の星ははっきり見えないんだけど、振り返ると星が尋常じゃなく瞬いていた。
ジゼロンのライトに照らされた召喚魔法陣の前に立ったわたしは、ベッド、寝具、食事用のテーブルに椅子、応接セット、タンスにドレッサーを思い描いた。
「出でよ!」
一瞬だけ召喚魔法陣が青く光ったあと、わたしの思い描いた諸々が召喚魔法陣の上に出現していた。
「ジゼロン。あなたのアイテムボックスの中にいったんしまっておいてちょうだい。まだまだ余裕はあるんでしょ?」
「だいじょうぶです」
ジゼロンが召喚魔法陣の中に入っていき一つ一つに手をあててそれらをアイテムボックスにしまっていった。
SPポイントがどれくらい減ったのか確かめたら、残りが999ポイントだった。1ポイントで済んだようだ。表示上の問題で1.49ポイントだったかもしれないけれど随分得した気になってしまった。物品的価値で言うと1ポイント100万円くらいの価値がありそうだ。1000ポイントだと10億円じゃん。うっひょー!
そう考えると、10万ポイントで召喚したジゼロンは1千億円か。高いと言えば高いし安いと言えば安い。
次は護衛用の兵士だな。一人召喚して何ポイント必要か確かめないと。
「出でよ!」
召喚魔法陣の真ん中に一人の兵士が立っていた。兵士は革の鎧に革のヘルメットを被り、手には槍を持っていた。残りSPポイントは996。兵士一人で3ポイントらしい。一人300万円。人身売買だと、一人300万円ならそうとう安いのでは。
最初の兵士をわたしの隣りに立たせ、その後9人召喚した。全員完全武装だった。これで残り969ポイント。
兵隊を揃えたのはいいんだけど、兵隊たちが生活する兵舎とか作らないといけない。そうこう考えたら必要な物をわたしが考えるだけでは絶対に足らないものが出てしまう。
「ジゼロン。あなた、わたしの代わりに召喚出来ない?」
「わたしが使っても良いSPポイントを陛下からわたしに譲渡していただければ、この世界に存在するものなら召喚できると思います」
「どうすればあなたにSPポイントを渡せるの?」
「頭の中で考えていただければいいと思います」
「じゃあ、とりあえず469ポイント渡すわ」
「はい。受け取りました」
ほんとだ。SPポイントが500になってる。
「それで、兵隊たちが生活できるよう兵舎や必要なものを揃えてちょうだい。余るでしょうから、余ったぶんでこのお城跡の上にお城を建てるような人材を召喚してくれる? そういった人材が生活に必要な資材も一緒にね」
「了解しました。
その前に、陛下の部屋に家具などを運んでしまいましょう」
そう言ってジゼロンがライトを残したまま消えていなくなり、10秒ほどして現れた。
「ジゼロン、いま消えてたけどどうしたの?」
「転移で陛下のお部屋にいってまいりました」
「あら、そんなこともできるんだ」
「はい。
部屋の中は真っ暗ですので、ランプを召喚しておきます」
「待って、それならわたしが召喚する」
ジゼロンが召喚すると油式のランプを召喚しそうだったのでわたしは電池式のLEDランタンを思い浮かべた。LEDの仕組みなんか分からないけど、ちゃんと召喚出来た。SPポイントは誤差の範囲内でおさまったみたいで500ポイントがそのまま残っていた。
わたしが召喚魔法陣の上からLEDランタンを手にしたところで、ジゼロンが、
「陛下、お部屋まで転移でお送りします。先にそのランプを点けてからの方がいいでしょう」と、言ってくれた。
「そうね」
LEDランタンのスイッチを入れたらこれも結構明るかった。
「陛下、わたしの手を持っていただけますか?」
「これでいい?」
わたしはジゼロンの左手首を右手の人差し指と親指で摘まんだ。
「それでも結構です。
それでは転移します。転移」
召喚魔法陣のかわりに地下の部屋が目の前にあった。これはすごく便利。わたしも使えたらいいんだけど、わたしにはSPポイントを受け取る能力があるだけで何のスキルもないんだよね。ドンマイ。
家具などもちゃんと並べられて、ベッドはベッドメーキングされていた。たった10秒ほどでここまでできたとは。1000億の男は伊達じゃなかった。
ただ、10メートル×20メートルの部屋って200平米もあるわけで、家具が入った後の部屋の中は逆にすごく殺風景だった。夜が明けて目が覚めたらトレーニング用具を一式そろえてもいいかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます