第26話 姉弟(きょうだい)


 追い剥ぎ3人を実質的に射殺してしまった。しかも3人とも首チョッパして3つの頭は現在わたしのアイテムボックスの中に納まっている。それくらいなんともないけどね。


 3人目を首チョッパしたあとムラサメ丸は血振りしてクリンをかけてから鞘に入れてアイテムボックスにしまっておいた。


 追い剥ぎに襲われたらしい前方の馬車の近くにはレーダーマップの黄色の点どおり地面に二人座っているのが見えた。向こうを向いているので二人はわたしが追い剥ぎを3人ともたおしたうえ首チョッパしたところを見ていたのかどうかわからない。


 わたしとゲランさんが近づいていくと、その二人がこちらに向き直った。二人は10歳前後の男女の子どもだった。その二人に近づいていくいくと、4つある車輪のうち一つが外れて横転した馬車の間に血だらけになった男女の死体が転がっていた。



「賊は3人とも退治したから、ふたりとも安心していいよ」


 顔つきがなんとなく似ているので二人は兄弟なのだろう。女の子の方が年上に見えるので姉弟かな?


 子ども二人は縛られていたわけではないらしい。


「ありがとうございます」と、女の子が立ち上がって答えた。男の子も一緒に立ち上がった。


「わたしは、ソフィア・ベネット。こっちは弟のアレックスです」


 この二人は名字持ちか。


「わたしはシズカ」


「私はエリカ・ゲランと言います」


 ゲランって名字だったんだ。初めて知った。名字持ちということはいいところの人だったんだ。


 それはそれとして、わたしが馬車の近くに横たわった血だらけの男女の死体に目をやったことに気づいた女の子が教えてくれた。


「父と母です。

 御者のおじさんは逃げている途中で馬車から転がり落ちて見えなくなりました」


 御者は逃げ出したのか追い剥ぎに殺されたのかは分からないけれど転がり落ちたということは殺された可能性が高いな。



 御者のおじさんがわたしたちの馬車から降りてきて、斜めになった馬車を一通り見て、


「予備の車輪をこの馬車は積んでいるようでしたから、何とか修理できないか見てみましたが、軸受けが壊れてしまっているようですから、馬車大工に頼まないと修理できないと思います」


「仕方ないですね。つぎの宿場町の役場で賊の首を引き渡さなければなりませんから、そこで役場の人に頼んでみましょう」


 壊れた馬車に積んである荷物くらいならわたしのアイテムに入るから持っていこう。


 姉弟きょうだいの両親の死体は運べそうにないので、道端に埋めるしかない。


「ご両親の亡骸は道端に埋めるしかないけど、それでもいい?」


 と、聞いたところ、二人ともうなずいた。目に涙をためていたが泣き出さなかったことで逆にかわいそうだった。


 わたしはアイテムボックスからスコップを取り出して、墓穴を掘った。ゲランさんと御者のおじさんが手伝おうかといったくれたけど、スコップは一つしかないので断った。


 御者のおじさんは、わたしが墓穴を掘っているあいだに、斜めになった馬車につながれていた2頭の馬を外してやって、追い剥ぎたちの馬と同じようにうちの馬車の後ろに繋げた。


 墓穴の大きさは二人が並んで横になるくらいの大きさで深さは50センチくらい。いままでこれほど大きな穴を掘ったことはなかったけれど、スコップが簡単に土に刺さってあっというまに掘れてしまった。スターターパックの装備はどれも特別な能力があるような気がしてきた。


 血で汚れた二人の亡骸なきがらにクリンをかけてから、穴の底に並べてやった。


「これから土を掛けていくから、最後のお別れを」


 姉弟きょうだいは黙って墓穴の下に眠る両親の顔を見た後、わたしを見てうなずいた。


 わたしは墓穴の周りに盛り上げていた土を穴の中に戻していった。墓穴の形に膨らんだ土をスコップで叩いてある程度の形を整えて、近くに転がっていた丸石をその上に置いて墓石にした。


 そういった作業を街道脇でしているあいだ、何台かの馬車がわたしたちの横を通り過ぎていった。街道を歩いて旅する人はあまりいないようで、旅人は通りかかっていない。


「馬車の中に大切なものがないか二人して見てきて」


 姉弟が馬車の中に入ってそれぞれの上着を見つけて出てきた。馬車の中に残っていたのはそれだけだったようだ。


「行こうか」


 二人をわたしたちの馬車まで連れていき、進行方向側の席に並んで座らせた。わたしとゲランさんは二人の向かいに座った。


 直ぐに馬車は次の宿泊を予定している宿場に向かって進み始めた。宿場まで2時間以上かかるはずだ。


 姉弟をどうするか考えないといけないので、身の上を聞くことにした。


「ご両親が亡くなったばかりで大変な時だけど、あなたたち身寄りはあるの?」


「はい。都に祖母が住んでいます。わたしたちは祖母に会うために馬車に乗っていました」と姉のソフィアが答えてくれた。


 馬車は4人乗りだし、行き先も同じとなると、都まで連れていくしかないな。


 わたしがゲランさんの顔を見たら、ゲランさんがうなずいた。


「わかった。わたしたちも都に行く途中だから、二人をお祖母ばあさんのとことろまで送ってあげるよ」


「ほんとですか!?」


「うん」


「ありがとうございます。

 アレックスもお礼を言って」


「あ、ありがとう、おねえさん」


「どういたしまして」


 こうしてわたしたちは両親を亡くしたベネット姉弟を都まで連れていくことになった。


 そのあと、わたしは当り障りのない範囲でゲランさんに追い剥ぎのことをたずねてみた。


「街道に追い剥ぎは結構出没するんですか?」


「ブレスカ近郊では、ここ数年街道で追い剥ぎが出たという話はありません。賞金首についての手配書などは今のところ回ってきていませんでした。ただ、都より北の地方では追い剥ぎや強盗など多いようです」


 運が悪かったのか。わたしたちの馬車の方が先に進んでいたら、わたしたちが先に襲われて子どもたちの乗った馬車はあんな目に遭っていなかったはずだ。



 次の宿場町に到着したわたしたちは、駅馬車の駅舎に連なる宿屋に部屋を取った。御者のおじさんは馬車に繋いで連れてきた5頭の馬を駅舎に売った。5頭まとめて金貨400枚で売れたそうだ。その400枚の内、2頭分160枚は姉弟のものなので、都に到着したら二人に渡すことにした。残りの240枚はわたしが貰ってしまった。御者のおじさんに手間賃として金貨10枚渡そうとしたら断られた。


 姉弟を御者のおじさんに託してわたしとゲランさんで宿場町の役場に赴き追い剥ぎを退治したことと壊れた馬車を街道沿いの空き地に置いていると伝えておいた。そのあと切り取った追い剥ぎの頭を裏庭まで持っていき3個並べて置いたところ、昨日都から回ってきた手配書の賞金首だったそうで、金貨150枚の賞金を頂いてしまった。


 あれよあれよという間にお金持ちになってしまった。この分だと、どこか田舎に家を買ってそこでのんびり暮らすことも夢ではないかもしれない。



 夕食は4人で駅舎の食堂で食べた。御者のおじさんは、駅舎では御者専用の食堂で食事をして、宿泊も御者専用の部屋があり、そこに泊っている。遠慮しているのか、ブレスカの街の規則なのかは分からないが、本人曰く、顔見知りがいる場合もあり、そちらの方が居心地いいそうだ。そうかもしれない。




 寝る前にステータスを確認したところ、弓術スキルが少し上がり剣術スキルがわずかに上がっていた。


<ステータス>

レベル9

SS=8

力:17

知力:13

精神力:12

スピード:12

巧みさ:15

体力:23


HP=230

MP=130

スタミナ=230


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(12パーセント)

識別2(26パーセント)

言語理解2(15パーセント)

気配察知1(40パーセント)

スニーク1(32パーセント)

弓術2(28パーセント)

剣術2(66パーセント)


<アクティブスキル>

生活魔法1(11パーセント)

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