第129話 ダンジョン6、第2層2
ナキアちゃんの言葉に従ってわたしたちは左の方に歩いていった。わたしが先頭でその後をナキアちゃん、最後がキアリーちゃんの順だ。
「モンスターくらい出てこんかのー」
罠がないか慎重に歩いているわたしの後ろでナキアちゃんがまたまた危ないことを言い始めた。すぐにフラグは回収されそうな気がする。
そう思ったんだけど何事もなく100メートルほど進んで十字路に出た。
そこまで来る間に通路を挟む左右の壁にかなりの数のくぼみがあった。全部のくぼみにあの金属扉が付いていたけど、わざわざ扉を開けて中をのぞくようなことはしなかった。
通路はどの方向にもかなり長く続いていて、どの方向にも200メートルほど先が十字になっているように見える。レーダーマップの索敵距離が100メートルくらいしかないのでその先のことは詳しくは分からない。少なくともその間、レーダーマップ上どの方向にもそれラシイ点は映っていないのでモンスターはいないようだ。
いや、レーダーマップ上今までみたことのない紫の点が正面の通路の先にあるように映っている。何だろう? 可能性があるのは罠なんだけど。罠があるとしてどうすればいいんだろ?
「ナキアちゃん。十字路の場合3方向あるけどやっぱり左?」
「いや。左ばかり回っておっては同じところをぐるぐる回ることもあり得るわけじゃからここは真ん中じゃな」
「はっきり断定はできないんだけど、まっすぐ行くと50歩くらい先に罠があるみたいなんだよ」
「どのような罠があるのか確かめた方が良いのではないか?
しかし、シズカちゃんはいろんなスキルを持っておるのじゃな。わらわたちにとって頼もしい限りじゃ」
「だね」
ナキアちゃんのその言葉で、どういった罠があるか確かめようということになり、まっすぐ進むことになった。
罠があると思われる場所の手前まで進んで通路の床に何か変わったところがないかとよく見たら、床の真ん中に1辺1メートルくらいの正方形に細い線が走っていた。これって落とし穴だよね。
「この四角が罠と思うけどどうする? 床の真ん中にあるから落とし穴じゃないかな」
「床の上の四角となると落とし穴の蓋じゃろうから重くして落としてみるのじゃ。……」
ナキアちゃんが蓋を重くするよう祈ったら。ホントに蓋が開いて通路の真ん中に大穴が空いた。
上から穴の中をのぞいたら、穴の深さは5メートルほどだった。落とし穴から落っこちてケガをしなかったら穴は比較的狭いので穴の壁に両手を突っ張って登れそうだ。とはいえ、いきなり足元が抜けて5メートルも落っこちてケガなしということはまず考えられないので、決して甘い罠ではない。
わたしのレーダーマップで罠を判別できると分かったことは大きい。今回はある意味罠を解除したわけだけど、解除できなくても脇をすり抜けることもできるわけだからグッと安全になった。
「落とし穴以外の罠を解除できるかどうかは分からないけど、罠の位置が分かるようになったみたいだから、いきなり罠にかかることはないと思う」
「シズカちゃんは、一体いくつスキルを持っとるんじゃ?」
「ほんとすごいよね」
「いやー、それほどでもー」
そこから先も順調にダンジョンの通路を移動していった。十字路では結局のところ適当に曲がったりまっすぐ進んだりし、T字路だけ左に曲がっていった。わたしの広域マップにはちゃんとマップができ上っていて、同じところを通っていないことは分かっている。何気にナキアちゃんの勘ってすごいようだ。
1時間くらいそんな感じで適当に通路を歩いているあいだに数カ所罠があったけど全部落とし穴だった。
それにしてもモンスターに遭遇しない。交差点だと前後左右が見渡せるわけだけどモンスターは見当たらなかった。
「どこかの扉を開けて部屋の中に入って見ない?」
「そうじゃな。歩いているだけではつまらぬのじゃ」
「じゃあ、手近なところでそこの扉を開けてみようか?」
「待って、わたしが開けてみる」
いままで通路から見てきた金属の扉はどれも同じで取っ手などついていなかった。キアリーちゃんの言う扉にも取っ手など付いていなかった。試しに押してみたら簡単に開いた。
扉を開けたら、正面に大口を開けたトカゲが見えた。ビックリする間もなくトカゲの口が光ったと思ったらトカゲの口からわたしに向かって火の玉が放たれた。火の玉のスピードは簡単にかわせるくらいのものだったけれど後ろにナキアちゃんとキアリーちゃんがいるので火の玉に向かって居合切りの要領でベルトから下げたムラサメ丸を鞘走りさせ、飛んでくる火の玉に向けて斜め下から切り上げるように振り切った。
前回ゴブリンの洞窟で火の玉を払った時と同じで火の玉は消えてしまった。あの時よりも火の玉のスピードは少し遅く感じたけど、アノ時と比べ今のわたしは格段にレベルアップしているので実際の速さはどっちがどうとかは分からない。見た目だけは目の前のトカゲの方がゴブリンなんかよりよほど強そうなので多分今の火の玉の方が速かったんじゃないかな。
扉の先は思った通り10メートル四方の石室で、扉の正面にいたのは見た目は大型のトカゲで特徴は火を吐いたくらいで、それ以上の特徴は分からなかった。
そのトカゲが次に何かする前に、斜めから切り上げたムラサメ丸を上段に構えてトカゲの顔に向けて縦の真空切りを放ってやった。トカゲは何も反応できないまま頭が縦に半分に割れてそのまま床にバタンと伸びてしまった。床はトカゲの頭から出続けている血とか体液で汚れてしまった。
「あっという間にシズカちゃんがたおしてしまったのじゃ」
「火の玉が見えたけど」
「火の玉は切ったら消えちゃった。流れで真空切りを放ったら簡単にたおせちゃった」
「モンスターが少しばかり哀れじゃな」
「ちょっとだけだけどね」
ナビちゃんにこのモンスターのことを聞いてみたけど分からないそうだ。ここが初めてのダンジョンみたいだから、ナビちゃんでも分からないのだろう。
「このトカゲは何という名前なのじゃろ?」
「火の玉を口から吐き出したみたいだったから、火吹きトカゲでいいんじゃない。
ところで、これ食べられるのかな」
「モンスターだから、食べられるんじゃないかな」
「魔石があるだろうから。採ってみる」
大トカゲというよりワニに近い感じの火吹きトカゲをひっくり返してムラサメ丸で胸の辺りを割いてからムラサメ丸にクリンをかけて鞘に戻した。切り口に手を突っ込んでまさぐったら、上の階層で手に入れたビー玉より少し大きなビー玉が見つかった。
取り出した魔石と突っ込んだ右手にクリンをかけてナキアちゃんとキアリーちゃんに魔石を見せた。
「この魔石もそこらのモンスターと変わらぬ魔石じゃな」
「だね」
今頃になって気づいたんだけど、ダンジョンの中のモンスターとダンジョンの外のモンスターの魔石がほとんど同じということは、同じオリジンと考えてもいいってことじゃ? だから何? って言われればそれまでなんだけど。
[あとがき]
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歴史もの『皇国2436』(全2話)
https://kakuyomu.jp/works/16817330663967268439
織田信長が日本統一を果たし国名を日本皇国と定めて189年……
皇国は重商主義から帝国主義に大きく舵を切った。
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