第134話 ダンジョン11、第3層1
昼食を食べてしばらくまったりしてから、わたしたちは再度ダンジョンに跳んだ。跳んだ先は午前中最後に立っていた石室の中。まだナキアちゃんのシールドは続いていた。
ナキアちゃんがライトの明かりをともした後、シールドのことをナキアちゃんに聞いてみた。
「ナキアちゃん。ナキアちゃんのシールドだけどいつまでもつのかな?」
「放っておいたらこのままいつまでも続きそうじゃ」
それはすごいな。ふつうならシールドの魔法なんだろうけど、ナキアちゃんのシールドの指輪はスキルだからいつまでももつのかも? いずれにせよもうナキアちゃんには隙がなくなったということだ。キアリーちゃんのシールドバッシュの指輪もそうだけど、見た目はなんの飾りもないチープな指輪のくせにとんでもない指輪だ。
部屋の中に用事はもうないので、通路に出てからわたしたちは次の扉に向かった。
次の扉をナキアちゃんが開けたら、モンスターはいなかった。代わりにそこは今までの10メートル四方の石室と違って20メートル四方はある石室で部屋の真ん中に下り階段があった。
「どうする? 下に行けば行くほど強いモンスターが現れて、代わりに宝箱の中身が上等になっていくというのがダンジョンの定番なの」
「それなら下に行くしかないではないか」
わたしたちはナキアちゃんを先頭にして左後ろにキアリーちゃん、右後ろにわたしの順で階段を下っていった。ライトの明かりは階段の天井を擦るような感じでナキアちゃんの頭上に輝いている。
60段ほどの階段を下り切った先は第2層の入り口の石室と同じ感じの正方形の石室で階段のある壁以外の3つの壁にそれぞれ扉が付いていた。さっそく総当たりで扉を開こうとまず左の扉に向かおうとしたところ、レーダーマップに紫の点があることに気づいた。部屋の真ん中に罠があった。危ないところだった。
「部屋の真ん中に罠があるみたいだから、ナキアちゃん、ファイヤーボールで罠を吹き飛ばしてくれる?」
「了解なのじゃ」
ナキアちゃんが右手を出したと思ったらそこから白い光線が部屋の真ん中の床に当たり、その部分が吹き飛んだ。破片がわたしとキアリーちゃんに当たったけど何ともなかった。ナキアちゃんにも破片は飛んだけど、シールドに守られたナキアちゃんには当たっていない。罠は落とし穴ではなかったようで床は抉れただけで大穴は開いていなかった。結局どういった罠だったのかは不明だ。
「わらわに怖いものなどないのじゃ! ヒャヒャヒャ」
至極ご満悦のようだ。
罠を解除というか破壊して部屋の中がスッキリしたので改めて左側の扉をナキアちゃんが開けた。
その部屋の中には珍しくモンスターはいなかった。石室はいつもの石室だけど、扉の正面の壁際に四角い小さな池があり、壁から池に向けて水が温泉の掛湯みたいに吹き出ていた。その関係で池の周りはしぶきで濡れている。池の水面と同じ高さのところに水抜きの穴が壁側に開いて、そこから池の水が壁の中に流れ出て水位を保っているようだ。
「この水飲めるのかな?」
「まさか毒ということはないじゃろう」
毒なら完全に罠なのでレーダーマップで紫の点で表されるはずだけど紫の点はどこにもなかった。
「罠じゃないみたいだから、毒ではないと思う」
「少々の毒でもナキアちゃんに祈ってもらえば平気だし」
キアリーちゃんが池の前まで行って上から落ちてくる水に両手を掬うような形に合わせて、手のひらの中に溜まった水を飲んでしまった。
「おいしい水だよ」
「キアリーちゃん、調子が悪くなったら早めに言うのじゃぞ」
「うん。でもだいじょうぶそうだよ」
わたしもキアリーちゃんのマネをして上から落ちてくる水に両手を合わせて溜まった水を飲んだ。
「冷たいし、おいしい」。実際冷たくておいしい水だった。
「この水で氷を作ったり濃いお酒を薄めたらおいしいと思わない?」
「どれどれ」
ナキアちゃんも手を出して一口壁から流れ出る水を飲んだ。
「ただの水のくせに、おいしいのじゃ」
ウイスキーの樽が空いていたので、その中に水を入れ、一度すすいでからクリンをかけ、それから上から流れ落ちてくる水を一杯に入れてアイテムボックスにしまっておいた。
「これは夕食を食べた後だね」
「夕食を食べながらでいいのではないか?」
「それもそうだね」
最初の階段のある部屋に戻るまえ、ついでだったので壁から流れ出る水を鑑定してみた。
<鑑定>
ヒールポーション。
痛みを鎮め傷の治りを早める効果がある。服用しても患部に直接かけてもよい。直接患部にかけた上、服用すると効果は高まる。
「この水、ヒールポーションらしいよ」
「なんと。ヒールポーションが垂れ流しなのじゃ」
「でも、飲んでしまえばただのおいしい水だから」
「それもそうじゃな。
シズカちゃんはこの場所にいつでも跳んでこられるんじゃろ?」
「うん。そう思う」
「
「そうだね」
わたしたち3人、一人あたま100万枚くらい金貨を持つわけだからお金が足りなくなることなんてそうそうなさそうだけどね。
最初の階段のある部屋に戻ったあと、階段正面の扉をナキアちゃんが開けた。レーダーマップには何も現れていない。
扉を開けた先は岩壁から突き出た岩棚の上だった。
岩棚の広さは、扉から前方に7、8メートル、左右に15メートルくらい。岩棚の左右の端から岩壁に沿って石段が下の方に続いていた。
岩棚の真ん中まで進んで上を見上げると100メートルくらいの高さに岩でできた天井が見えた。
岩棚の縁まで行って下をのぞくと、200メートルくらい下に石畳が広がり、その先に神殿のような建物があった。アテネの神殿と違ってここの神殿にはちゃんと屋根が付いている。
下の石畳の上には人のようなものが複数というかわらわらと動いていた。レーダーマップの範囲外なのでそれが敵なのかどうかは分からなかった。
「下の方で動いているのが骸骨に見えるんだけど」とキアリーちゃん。
わたしは不射の射の構えを取って狙いをつけてみたら、確かに盾と剣を持った骸骨だった。スケルトンとか言うモンスターのハズだ。
「確かに骸骨だね。どうする?」
「この岩棚の上から目に付く限りの骸骨を退治してから下に下りていけばよいと思うのじゃが、どうじゃろう?」
「じゃあそれでいこうか」
キアリーちゃんは飛び道具がなかったのでナキアちゃんとわたしで岩棚の縁に立って下で動いているスケルトンに向かって攻撃し始めた。わたしは不射の射。ナキアちゃんはファイヤーボールという名の光線銃だ。
そしたら、ナキアちゃんのファイヤーボールが150メートルくらい飛んだところで消えてしまった。
「ありゃりゃ? どうも遠くまで飛ばんようじゃ」
「そこの階段を下ってから撃とうよ」
ということで、岩棚の横から出ていた石段を下りていった。石段は横幅が2メートル、前後の奥行が30センチほどの段が連なったもので、もちろん手すりなど付いていない。下りていくとき少し緊張した。
階段を半分くらいまで下りたところから、わたしとナキアちゃんでスケルトンたちに向けて不射の射とファイヤーボールを乱射した。キアリーちゃんは盾を構えて先頭に立って下から上がってくるかもしれないスケルトンに備えた。
「攻撃は二人に任せたからね」
下の方から爆発音と骨が石畳の上に散らかる音が聞こえ始めた。スケルトンたちは右往左往するだけだ。
わたしが40匹ほどスケルトンを粉々にして、ナキアちゃんはそれ以上のスケルトンを粉々にした。
「動いているのはほとんどいなくなったから下まで下りていこうよ」
「そうじゃな」
「うん」
よく考えたら下は良く見えてるんだから転移できることに思い至った。
「ごめん。下に転移できそうだから、転移で下に下りよう」
「気付いてくれてよかったのじゃ。わらわはちょっと怖かったのじゃ」
「わたしも」
ということでわたしは二人を連れて、神殿?の前の広場に転移した。
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