第135話 ダンジョン12、第3層2、神殿


 わたしたちは岩棚から下に続く階段の途中から、神殿風の建物の周囲に広がる境内の手前の広場に転移した。神殿の境内もわたしたちの立っている広場も石畳で、広場から5段ほどの階段を上るとその先が神殿の境内で、そっちは敷石の鼠色の濃淡で幾何学模様が描かれている。


 転移したとたんに、レーダーマップにたくさんの赤い点が映った。わたしたちの周りの石畳の中からスケルトンが湧き出てきている。全身が地面から湧き出たスケルトンは武器を構えてわたしたちに向かって近づいてきた。


 階段から攻撃していた時には気づかなかったけれど、スケルトンの眼窩の奥には赤い何かが光っていた。それっぽいけど、脆いことは分かっているので怖いとかそんなものは全くなかった。


 わたしたちは3人で背中合わせになって周りから近づいてくるスケルトンを破壊していった。


 キアリーちゃんはわたしとナキアちゃんの遠距離攻撃の死角をついて近づいてくるスケルトンをシールドバッシュとライトニングムーブでまとめて破壊して、すぐに元の位置に戻る。


 押し寄せてくるのはほとんど白いスケルトンなんだけど、中には一回り大きくて黒光りするスケルトンもいた。だからと言ってそんなこと関係なくバラバラ、粉々になって吹っ飛んで行った。


 10分ほどそうやって押し寄せるスケルトンを3人で破壊していたらスケルトンがまばらになってそのうち一匹もいなくなってしまった。


 その間わたしはレベルアップしていた。スケルトンってザコモンスターだから経験値なんてわずかなものだろうと思ってたんだけど意外と経験値があったみたい。


レベル77

SS=11

力:74

知力:55

精神力:48

スピード:98

巧みさ:92

体力:49


HP=490

MP=2750

スタミナ=490


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(96パーセント)

鑑定1(4パーセント)

言語理解2(95パーセント)

気配察知1(95パーセント)

スニーク1(48パーセント)

弓術MAX

剣術8(27パーセント)

威風(10パーセント)

即死


<アクティブスキル>

生活魔法1(43パーセント)

剣技『真空切り』

アドレナリン・ラッシュ

威圧

弓技『不射の射』

転移術



 わたしたちが立っているところを中心にして半径10メートルくらいの石畳の上は比較的きれいなんだけど、そこから先にはスケルトンたちの砕けた骨と、スケルトンたちが持っていた剣と盾がいたるところに転がっていた。魔石も転がっているんだろうけど、面倒くさいので拾う気にならなかった。



「やっと片付いた。建物の中を調べてみよ」


「見た目は神殿じゃが、何かの神さまをまつっておるんじゃろうか?」


「こんなところにある神殿に祀られている神さまとなると邪神じゃないかな」


 確かにマトモな神さまがまつられているとは思えないし、そもそもスケルトンが氏子だし。


「気を引き締めてかかった方がいいカモね」


「そうじゃな」


「だね」


 気が引き締まった気持になったわたしたちは神殿に続く石段を上って境内に入り、その先に並ぶ石の柱の先の出入り口から神殿?の中に入っていった。ちなみに、石の柱にはふくらみは無かった。


 神殿の中は広々としたホールになっていて、ホールの真ん中に直径5メートルほどの銀色の円柱が天井まで伸びていた。その円柱の基部から透明な素材でできた長さが2メートル、直径が1メートルほどの筒が等間隔で突き出ていた。


「筒の中に人が入っている?」


 透明素材でできた筒の中に人が寝ているように見える。


 三人で近寄り筒をよく見たら、中にわたしたちくらいの女の子が目を瞑り全裸で眠っていた。女の子の体は青く輝いていて周囲は青みを帯びた液体で満たされているように見える。女の子には何本もの銀色のチューブがつながれていた。なにこれ?


 女の子を納めた筒というよりケースは銀色の円柱の周りに等間隔に並んでいて、筒の数は全部で12個あった。12個のケースうち全部で9個のケースの中にそれぞれ青く輝く女の子が寝ていた。残りの3つのケースは中の液体自体が薄黒く濁って、黒く変色ししわだらけになったある種のミイラが入っていた。


「これはいったい何なんじゃ?」


 わたしはケースや銀色の円筒を鑑定しようとしたけど何もわからなかった。


「全然わからない。

 黒くなった3人はダメだけど、9人は中で生きてるように見える」


「わらわも9人は生きておるように見えるのじゃが、はたしてこの中から助け出せるんじゃろか?」


「この入れ物を壊してしまうと中に入っている女の子は死んじゃうような気がする」


「見た感じ、この中に入っているから生きてるみたいだしね」


「このまま放っておくしかないわけじゃな」


「そうだね」


「うん」



 神殿のホールの中には円柱とそれを取り巻く12個のケースしかなかった。


「目ぼしいものがこれだけのようじゃし、ここから出るしかないじゃろう」


「この神殿の周りを巡って見ない? 何か分かるかもしれないよ」


「そうじゃな」


「うん」



 一度神殿から出たわたしたちは神殿の建物沿いに石畳の境内を歩いていった。


 神殿の建物自体は四角い建物で、装飾はあるけど複雑な形をしているわけではない。



 一周して神殿の正面に戻ってきたところで気づいたところを話した。


「壁の厚さがどれくらいあるのか分からないけれど、神殿の中に比べて奥行きが長くなかった?」


「わらわもそう思ったのじゃ」


「わたしも」


「きっとさっきのホールの先に隠し部屋があるんだよ」


「きっとそう」


「わらわもそう思うのじゃ」


「中に戻ってちゃんと調べてみよう」


 再度神殿の中に入っていったわたしたちは入り口から奥の石組の壁まで駆けていった。



 3人で手分けして壁のどこかに何か仕掛がないか探していく。


 わたしは右端まで正面の壁を一通り探したけれどそれラシイ仕掛けは見つからなかった。


「おかしいなー」


 ふと、右側の壁を見たら、そこにちゃんと四角く出っ張った石があった。


「なんかそれラシイのがあった。

 押してみるから二人とも壁から少し離れてくれる」


 二人が壁から離れたところで出っ張った石を押してみた。


 そうしたら、今まで3人で仕掛けを探していた正面の壁全体がゆっくりと下に沈み始め、最後に完全に沈み込んでしまった。壁の上端が床にぴったりくっついて違和感なく床の一部になってしまった。


 壁が床に沈んだ先にあったのは、宙に浮いた直径5メートルほどの立体映像?の球体だった。海や陸地、雲のようなものも見えるので地球儀に見えないことはないけど大陸の形なんかは見たこともないものだった。それと、球体は完全な球体ではなく、一部、というかかなりの部分、だいたい4分の1が欠けていた。欠けた部分の奥の方は赤く光って周囲は黒く、全体的に雲がかかっているように見えた。


 これってもしかして、わたしのいるこの世界なの? たしかガーディアとか神さまが言っていたこの世界、惑星? ホントにこれがこの星の姿だったとしたらもう駄目なんじゃない?


 ナキアちゃんとキアリーちゃんもびっくりしているだろうと思って振り返ったら、二人は立体映像を見上げたまま微動だにしていなかった。というか完全に停止していた。



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