第136話 ガーディアとアドミナ

[まえがき]

いちおう、タイトル一部回収回になります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ナキアちゃんとキアリーちゃんが固まってしまったと驚いていたら、わたしは真っ白い空間の中に意識だけで存在していた。ここはガーディアに行く前に連れてこられた場所だ。


 そして頭の中にまたあの声が響いた。アドミナと名乗る神さまだ。


『まさか、あなたがあの場所にたどり着くとは思ってもいませんでした』


 何が言いたいんだろう?


『あなたは、地球の管理者からの影響を強く受けているようです。

 でなければ記憶を持ったまま生き返ることもなかったでしょうし、入り口のない地下内に隠された神殿にたどり着くこともなかった。今あなたをここに呼んで確信しました』


『神殿への入り口はちゃんとありましたよ』


『いえ、あの神殿は地下に造られたもので出入口は閉ざされていました。誰かが後から出入口を作ったのです。誰かというのは地球の管理者に違いありません』


 出入り口を誰が作ろうが出入口はちゃんとあったんだし、誰が作ろうがわたしにとってどうでもいいことだった。今はどうでもよくないところを聞かなくちゃ。


『それは分かりました。

 記憶を持ったまま生き返ることもなかったということですが、記憶を持たずに生き返ったら、完全な振り出しですよね?』


『その通りですが、あなたが意識することはありませんし、意識することもできません。ですからあなたが振り出しに戻ったということを認識することはありません』


『わたしにとってそれは意味のないことじゃないですか?』


『あなたがこの世界にやってくることなくあのまま地球にとどまっていれば、次の瞬間車と衝突し、数秒後に死ぬことが運命づけられた身でした。2カ月命が伸びたことは無意味ではないでしょう』


 確かに2カ月であれ寿命が延びるのはありがたいことかもしれないけど。


『わたしは死に戻りを永遠に繰り返すはずだったんですか?』


『いいえ。一往復あたり意識のある2カ月間は寿命を消費しています。寿命が尽きる100年間で600往復前後、あなたはあの森とあの島を往復して生を終えるはずだったのです』


 2カ月寿命が延びるとはいえ、そんなの誰でも嫌がる運命じゃない。いくら交通事故で死ぬ寸前だったわたしを助けてくれたからと言ってもやっていいことと悪いことがある。急にアドミナのことが怖くなった。


『ですが、あなたはその輪を脱してしまった。

 これは非常にまずい状態です。

 地球の管理者につながっているあなた自身を今さらどうすることもできない以上、あなたを輪の中に戻すこともできません。また新たに地球からあなたのような方を召喚しても地球の管理者の影響を受けていることでしょうからそういった方法を取ることもできません』


 アドミナはわたしに手を出せないと言っていることだし、今は聞けるだけのことを聞いておこう。その後のことはその後のことだ。


『あそこにあった球はなんだったんですか?』


『あれはあなたが考えている通り、ガーディアの今の姿です。放っておけばあと40年もしないうちに崩壊の加速が始まり、全ての命を道連れに60年後には砕け散っているでしょう。わたしはこの星ガーディアを守るため新たな手を打つつもりです』


 わたしが関係しないならどんな手を使ってもらっても大いに結構。どんどんやってこの星の寿命を延ばしてください。


 だけど、ちょっと待って。


『わたしはこの世界に来て生きていくだけで魔力の循環が改善されるので何もしなくていいと言われてたけど、あれは嘘?』


『嘘ではありません。

 あなたは生きていくため多くのモンスターを殺し魔力を開放しました。さらに地球からの転移者であるあなたが死んだとき膨大な魔力が開放されたことでこの星の寿命が30年ほど伸びています。

 あなたが本当に消滅するまでさらに200年この星の寿命が伸びる予定でした』


 確かに、アドミナの言っていたことは嘘ではなかったけど、魔力の循環を改善するためにわたしが2カ月間生きて死ぬことを繰り返す必要があったとは。


「わたしが地球からの転移者であることに何か意味があるのですか?」


「地球はこの世界と比べ魔力的な意味で高い位置にあります。地球からこの世界に転移した者にはガーディアと地球との位置エネルギーに相当する魔力が蓄えられるのです。地球からの転移者がこのガーディアで死ねば、一度だけですがその分の魔力がここガーディアで解放されるのです」


 なんか嫌な話だな。そういえば私と同じ転移者の明日香はどうなんだろう?


『魔族の女王のこと知っているでしょう?』


『はい。彼女もあなたと同じような役割を負わせたのですが早々にわたしの手から離れてしまいました。それであなたを地球から召喚しました』


『地球の管理者がらみで?』


『彼女の場合はまた別の要因です。彼女は自身が召喚する魔族の反乱により2カ月ごとに生と死を繰り返すことになっていましたが、魔族は召喚された端から彼女を女王として認め反乱が起こる気配さえありませんでした』


 なるほど。


『手前にあったカプセルに入っていた女の子たちは?』


『巫女と呼ばれる特殊な個体です。今現在ガーディアが崩壊せず形を保てているのは彼女たちの体の中に眠る膨大な魔力で星をつなぎとめているからです。現在3体の巫女が亡くなり、彼女たちの受け持った部分は崩壊してしまいました』


『9体は生きているってことですよね?』


『生きてはいますが意識はありません。巫女たちの全てはガーディアの崩壊を防ぐために捧げられています』


『カプセルから出ることはできるんですか?』


『出れば生命活動を維持できません。同時にその個体が受け持っていた部分の崩壊が始まりますが、崩壊はその部分だけで留まらず周囲にも広がりこの星を維持できなくなります』


『今の9体で限界ということですか?』


『そういうことです』


『亡くなった巫女はあのままなんですか?』


『あの形になってもわずかに魔力が残っているのであのままカプセルに残しています。この星に新たに巫女の能力を持つ者が現れれば、その者を新たな巫女として亡くなった巫女と交換・・します。残念ながらこの600年間を通してこの星に巫女の能力を持つ者は現れていません。これは魔族の絶対数の不足と、人族の魔力、魔法離れが原因とわたしはみています』


『今眠っている9人は何年くらいあの中に入っているんですか?』


『600年から1500年です。質問はそれくらいですか? そろそろあなたをあの場所に戻しましょう』


『最後に聞きたいことがあるんですが?』


『なんですか?』


『わたしの寿命はまだ100年近く残っているのですか?』


『この星が崩壊すれば私同様あなたの命は尽きますが、この星が崩壊せず100年以上もてば地球の管理者に愛されているあなたなら問題なく100年生きるでしょう。

 そろそろ元の世界にお戻りください』


 ……。



 気付けばわたしはガーディアの立体映像のある部屋に戻っていた。


 ナキアちゃんとキアリーちゃんがガーディアの立体映像を見上げて、ブツブツ言っていた。二人の姿を見てすごく安心した。


 わたしが妙なループから抜け出せたのは地球の管理者さんとつながりがあったからって言われたけど、地球の管理者さん、誰だか知らないけどありがとう!



[あとがき]

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