第131話 ダンジョン8、第2層4


 ダンジョンの石室で大蜘蛛をたおして、大蜘蛛から魔石を取り出したら宝箱が現れた。


 宝箱の中には銅の指輪が入っていた。その銅の指輪を試しにはめてみたところ巧みさが+5され、シールドバッシュスキルが使えるようになった。盾を持つキアリーちゃんに最適だ。ということでキアリーちゃんがその指輪を使うことになった。



「通路を歩いておっても何も面白くはなかったのじゃが、扉をあけて部屋の中に入ればモンスターは現れるし宝箱も手に入ってすごく楽しいのじゃ。どんどん扉を開けていくのじゃ」


 ナキアちゃんがダンジョンクロールに目覚めてしまった。


 今の部屋はそこで行き止まりだったので、いったん通路まで戻ったわたしたちは、目に付いた扉を開けていくことにした。


 シールドバッシュスキルのテストを兼ねて扉を開けるのはキアリーちゃん。わたしがキアリーちゃんの後ろに付いて、その後にナキアちゃんの順で行くことにした。


 キアリーちゃんが次の扉を開けたと同時にレーダーマップに赤い点が1つ現れた。


 いきなりの攻撃はなかったけれど、キアリーちゃん越しに部屋の中に角を生やした大ウサギが見えた。ダンジョン物の小説によく出てくるホーンラビットに違いない。


 盾を構えたキアリーちゃんは、腰に下げた剣を抜き、ホーンラビットに突っ込んでいった。


 わたしはナキアちゃんをガードしなければいけないのでその場で待機。


 ホーンラビットは盾を構えて突っ込んでくるキアリーちゃんに跳びかかっていったところをキアリーちゃんが剣で切りつける代わりに盾で合わせた。


 ガシャン! という衝突音と、やや遅れてコロンという何かが床に落ちた音。そしてドシャッという音がした。最後の音はホーンラビットが床に落ちた音だった。


 見ればホーンラビットの角は折れて、その角は床に転がり、床の上で動かなくなっていたホーンラビットの首はあらぬ方向に向いていた。


 キアリーちゃんのところまで近寄って行ったわたしとナキアちゃんに、キアリーちゃんが今の戦いでのシールドバッシュについて話した。


「盾をぶつけた時ほとんど反動が無かったし、シールドバッシュが外れる気がしなかった」


 スキルの効用はかなりのものみたいだ。


「魔石を取って収納しちゃうね」


 そう言ってナイフを取り出したわたしはホーンラビットをひっくり返して胸を割き、中からビー玉より少し大きな魔石を取り出した。今回はわたしも注意してたんだけど、魔石を取り出したタイミングで部屋の奥に宝箱が現れた。


「ウヒョヒョー。また宝箱が現れたのじゃ」


 今回の宝箱も前回の木の箱と同じ木の箱だった。


 わたしは急いで魔石と諸々にクリンをかけてホーンラビットの死骸ともどもアイテムボックスしまっておいた。


 レーダーマップには罠を表す紫の点は現れてはいない。


「この宝箱にも罠がかかっていないみたい」


「ならば、今度はわらわが宝箱を開けてみるのじゃ」


 ナキアちゃんが宝箱に走り寄って手を伸ばしたら、前回と同じように宝箱のフタが勝手に開いた。


 箱の中からナキアちゃんが取り出したのは、銀色の鎖だけのネックレス?だった。


「これはネックレスじゃろか?」


「そうじゃないかな」


「わたしがちょっと見てみるから貸してくれる」


 ナキアちゃんから受けっとったわたしはそのネックレスを首から下げて、ステータスを確かめた。


レベル76

SS=10

力:73

知力:55

精神力:48

スピード:102(+5)

巧みさ:92

体力:48


HP=480

MP=2750

スタミナ=480


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(89パーセント)

識別2(90パーセント)

言語理解2(95パーセント)

気配察知1(95パーセント)

スニーク1(48パーセント)

弓術MAX

剣術8(27パーセント)

威風(10パーセント)

即死


<アクティブスキル>

生活魔法1(43パーセント)

剣技『真空切り』

アドレナリン・ラッシュ

威圧

弓技『不射の射』

転移術

ライトニングムーブ


 これもすごいぞ! スピードが+5された上にアクティブスキルとしてライトニングムーブか。これもキアリーちゃんに上げた方がいいな。それとは別に識別が伸びてた。見たこともない魔法アイテムを見て、何なんだろうと考えているからかも?


「動きが少し速くなった上に、ライトニングムーブってスキルが使えるようになるみたい。これもキアリーちゃんが着ければいいんじゃないかな」


「そうじゃな」


 キアリーちゃんはネックレスを首にかけて鎧の内側に入れた。


「ライトニングムーブということは目にもとまらぬスピードで動き回るということじゃろうか?」


「そうじゃないかな」


「次のモンスターで試してみるね」


 この部屋も行き止まりだったので、いったん部屋を出て、通路を少し歩き次の扉の前まで来た。


「開けるよ」


 キアリーちゃんが盾を構えたまま扉を開けたら、レーダーマップにまた赤い点が現れた。


 キアリーちゃん越しに部屋の中を見ると、大トカゲがいた。大トカゲが口を開けた? と思ったら目の前にいたハズのキアリーちゃんが大トカゲの横に立っていて、大トカゲは首をすっぱり切断されて切断面から血を盛大に吹き出しながら床にたおれた。


 どこかに行って見えなくなっていた大トカゲの頭部は少し離れたところに落っこちていた。レーダーマップの赤い点はもちろん消えている。大トカゲは火吹きトカゲだろうと思ったけれど火を吹くことなく死んじゃったので実際火吹きトカゲだったかどうかは分からない。


 アドレナリンラッシュ時のわたしより明らかにスピードは勝っていた。なにせわたしでさえ今のキアリーちゃんの動きは目で追えなかったもの。


「今の見えなかったよ」


「わらわもじゃ」


「ライトニングムーブって意識したら急に周りが止まっているような感じになったんだよ」


 なるほど。加速装置だな。


 大トカゲからも魔石を取り出して死骸ともどもアイテムボックスにしまっておいた。


 魔石は取り出したけれど、今回宝箱は現れなかった。大トカゲはハズレモンスターなのかも?



 わたしたちが入ったこの部屋には入り口の扉の他に前方と左右の壁の真ん中にそれぞれ扉が付いていたので、向かって左側の扉から順に開けていくことにした。


「開けるよ」


 今回もキアリーちゃんが盾を構えたまま扉を開けた。同時にレーダーマップにまた赤い点が現れた。今回はどうせ相手は雑魚だろうということで、わたしとナキアちゃんはキアリーちゃんの真後ろではなく、少しずれて立っている。この方が良く見えるからね。


 部屋の中にいたのは泥人形?


 キアリーちゃんが見えなくなったと思ったら、ドンという音と一緒に泥人形が粉々に飛び散って、泥人形のいたところにキアリーちゃんが立っていた。運よくわたしとナキアちゃんには泥がかからなかった。


 キアリーちゃんがライトニングムーブで高速機動し、シールドバッシュで盾を泥人形に叩きつけたようだ。キアリーちゃんの盾はもちろん泥だらけなのでキアリーちゃんは一度盾を振ってからクリンをかけ、防具にもクリンをかけて泥を落とした。


「バラバラになっちゃったね」


「部屋中泥だらけなのじゃ。

 これだと魔石を探すのが大変そうなのじゃ」


「ごめん」


「謝ることではないのじゃ。現にわらわもシズカちゃんも泥をかぶっておらぬしな」


 ナキアちゃん、もし泥をかぶってたら怒ったのかも?


 3人で手分けして魔石を探したところ、床の上に転がっていた魔石をわたしが探し当てた。魔石を指でつまんで拾い上げたらまた宝箱が現れた。この部屋も入り口にしか扉はない行き止まりの部屋だった。


「また出たのじゃ!」


「今度は何だろ?」


 今度の宝箱も今までと同じ金属の金具で補強された木の宝箱だった。レーダーマップを見たところこの宝箱にも罠は仕掛けられていないようだったので、今度はキアリーちゃんが宝箱を開けた。


 中をのぞいたら、茶色の革装の本が一冊入っていた。


 どう見ても魔法の本だ。って、魔法の本なんて一度も見たことないわたしじゃ全然分からないけどね。


 わたしのゲーム知識から言って、本を使うことで本に閉じ込められていた魔法スキルを習得する。あるいは、その本を使うことで、魔法が発動する。その二つが考えられる。本は表紙を開けることで本を使ったことになると思う。


 どういった魔法が本に込められているか分からないけど、わたしやキアリーちゃんが魔法戦士に成る必要はないので、ナキアちゃんに本を渡した方がいいと思う。


 そのことを二人に説明したら、二人とも納得してくれた。


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