第23話 王都行き1


 ゲランさんからもらった支度金は金貨10枚だった。


 全部で金貨60枚いただいたことになる。いっぱしのお金持ちになってしまった。


 王都に向かう前に矢を大量に用意しておこうと思ったわたしは矢を売っているところを探して通りを歩いていたら武器屋があった。文字が読めるようになって何気に嬉しい。



 武器屋だったら矢も売っているだろう。そう思って店の中に入ると、店の中には台の上に武器が並べられ、鎧かけには、各種の鎧がかけられていた。壁には長柄の武器がかけられている。客は2、3人いて店の人は2人。その2人が客対応していた。


 わたしは店の中を回ってざっと見たところ、矢はどこにあるのか見当たらなかった。店の人に聞かないといけないようだ。


 片方の店の人の接客が終わったので、矢を売っていないか聞いてみた。


「ありますよ。あまり需要がないので、表に出していませんでした。何種類か持ってきますのでその中からお選びください」


 そう言って店の人は奥に引っ込んで、すぐに矢を数本手にして戻ってきた。


「当店では3種類の長さの矢を扱っています。矢羽根はどれも水鳥の羽から作っています。値段も50Cで同じです」


 今は小金持ちだから値段のことをあまり気にせず買えるけど、矢って意外と高いものなのね。弓術スキル取得時のボーナス矢と同じくらいの長さの矢を選んでおいた。ボーナス矢を使っているわたしからすると、品質は高くないように見える。矢って消耗品だものね。


「この矢を100本貰えますか?」


「お待ちください」


 店の人が手にした矢を持って再度奥に引っ込み、矢の束を抱えて戻ってきた。


「5000Cですから、ちょうど金貨1枚になります」


 わたしは金貨1枚を支払い、矢の束を抱えて店を出た。店を出た時には矢の束はアイテムボックスに収納している。


 あと必要なものは何かあるかな? 馬車の中で口さみしくなったりするかもしれないから、お菓子が欲しいけど、どこでどんなお菓子を売ってるかわからないし、買えたとしても誰かと相乗りかもしれないから勝手にむしゃむしゃ食べられない。でも、備えあれば憂いなし。どこかにお菓子でも売っていれば買っちゃお。


 途中の食事はおそらく道中の宿場町のようなところで取るんでしょうけど。そういえば馬車で王都まで何日かかるんだろう? 常識なんだろうけれど、無常識のわたしでは見当もつかない。まさか馬車で1日ってことはないわよね。宿屋に帰ったら、ニーナちゃんに聞いておこう。明日あした町を離れることも忘れずに言っておかなくちゃ。


 大通りから一本脇道に入って歩いていたら食料品を売っている通りが見つかった。


 野菜と果物を売ってる店で乾燥果物なども売っていたのでクルミと緑色のレーズン、それにデーツとピスタチオ?を買った。これは嬉しい。わたしの感覚からいってどれもかなり安かったので、大量に買ってしまった。ピーナッツを売っていないことに気づき急に柿ピーが食べたくなった。


 あとは普段着というか、お出かけ用の服だ。一着しかない着たきり雀状態だとこれから何かと困りそうだ。


 ということで衣装屋に行ったわたしは、なるべく色合いの良い衣装を購入した。


 黄土色のシャツ?に茶色のスエードのパンツだ。これでも売っている中で色合い的には一番よかったんだよね。


 買っておいたほうがいいものが他にもあるんだろうけど、何も思いつかなかったので、小鹿亭に戻ることにした。途中で串焼きを買い食いして昼食代わりにした。


 小鹿亭の玄関を入った先のカウンターの奥にちょうどニーナちゃんがいた。


「シズカさん、お帰りなさい」


「ニーナちゃん。明日から急に王都に行くことなったの」


「それは急ですね。あっ、5日分の代金を頂いてたはずだから、1日分お返ししますね」


 ニーナちゃんがカウンターの引き出しを開けて中から銀貨を1枚取り出して渡してくれた。


「ありがとう。

 王都まで馬車で何日くらいかかるかニーナちゃん知ってる?」


「王都なんか行ったことないんだけど、15日くらいかかるって聞いたな」


「そんなに遠いんだ」



 部屋の鍵を貰ったわたしは部屋に戻って、ベッドに横になって一休みした。


 移動に15日間もかかるとなると大旅行だ。王都に行って精鋭チームに入るためにどんなことをするのか分からないけれど、お城の門の前にいって、ブレスカからやってきたシズカという者ですけど精鋭チームに入れてくださいって言うのかしら? 少なくとも紹介状とそれを渡す先くらい教えてくれないとわたし泣いちゃうよ。



 今から心配しても仕方がない。行けば何とかなるっしょ。



 そんなことを考えていたら知らないうちに昼寝してしまったようで、目が覚めたらもう夕方だった。お腹がまだもたれている感じがしたけれどちゃんと食べた方がいいと思って1階に下りていき食堂に入った。


 二人席に着きその日の定食を食べていたら、手が空いたみたいでニーナちゃんがやってきた。


「シズカさんがいなくなるとさみしくなっちゃうな。

 王都には何しに行くんですか?」


 他言無用とか言われていないから、話してもいいよね。


「モンスターの動向を調査するパーティーを王都で作ってるんだって。それに参加してくれって市長のターナー伯爵に言われたの」


「すごーい。オーガもやっつけたくらいだから当然か」


「そういうことなので、仕事が終わったらまた帰ってくるよ」


「シズカさん、待ってるからね」そう言って、ニーナちゃんは仕事に戻っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る