第64話 ゴブリン討伐後
マリム村からは道も分かっていたし何だか体が軽く感じられて1時間ちょっとで冒険者ギルドに到着した。息切れなどしていないし心拍数もそれほど上がっていない。こうなってくるとある種の超人だ。
昼過ぎの時間帯のせいで、ギルドのホール内にはあまり人もおらず、窓口には受付嬢が1人座っているだけだし、その受付嬢の前に冒険者がいるわけでもない。
暇そうにしている受付嬢の前にいき、昨日受注したゴブリン退治の仕事を終えたと村長にサインしてもらった受注票と一緒に報告した。
受付嬢は受注票を手に、台帳のようなものをめくって、
「マリム村のゴブリン討伐ですね。受注者はシズカさん。
サインは同じものです。確認しました。依頼達成ごくろうさまです」
「それで、ゴブリンの左耳はどこに持っていけばいいですか?」
受付嬢が買い取り窓口の方を見て、
「買い取り窓口に人がいないようですからここで確認させていただきます」
「結構数ありますよ」
「それでしたら、買い取り窓口に回っていただけますか? そこで確認します」
買い取り窓口に回り、受付嬢の指示通り台の上で布袋をひっくり返してゴブリンの耳を全部出したらゴブリンの耳が小山になった。
「こんなに」
「全部で82個あるはずです」
受付嬢はゴブリンの耳を数え始めた。
「小さいのはゴブリンの子どもですね」
「はい」
「この大きい耳はゴブリンではないですよ」
「ホブゴブリンです。あと何匹か一緒にいたんでたおしました」
「そうでしたか。上位種までいたんですね。放っておけば大ごとになっていた可能性がありました。ホブゴブリンの討伐報酬は銀貨10枚です。
ゴブリンが80匹にホブゴブリンが2匹で銀貨100枚=金貨2枚、そして20匹以上討伐達成の金貨1枚でちょうど金貨3枚になります」
受付嬢は伝票のようなものに数字を書いて、引き出しから金貨を3枚取り出しカウンターの上に置いた。
わたしは金貨を受け取り、アイテムボックスに入れている巾着をとりだしてその中に入れておいた。巾着はすぐにアイテムボックスにしまっておいた。
これで今日の仕事は全て終わった。
どこかで昼食をとろうと思ったのだけれど、明日丸一日空いているので、なにか簡単な仕事を探しておこうと思い壁に貼りつけられた依頼票を見ていくことにした。
「なになに。
麦の刈り取り手伝い」
当然だけど季節労働もあるよね。
「こっちは、臨時警備隊員か」
ターナー伯爵が警備隊を強化するようなことを言っていたような気もするな。手っ取り早く冒険者でしのごうってことか。しかし、この世界も正社員の採用は抑えて臨時職員で対応するとか。どこの世界も世知辛いんだなー。
一日で完了できそうな単発の仕事はないのかな?
ここに貼ってある仕事のほとんどは武器も防具もいらないような仕事だけれど、他の冒険者たちはどういった仕事をしてるんだろう? どこかにダンジョンでもあってそこに潜っているのかな?
「えーと、
馬車の護衛か。珍しいな。確か街道は安全なので護衛を付けることはまずないとか聞いたような気がするけど。
そういえば、ベネット姉弟の両親を今回は助けたいなー」
「そして、こっちがお尋ね者の捕縛か。
この似顔絵、意外とうまいな。
見つけることができれば捕まえられるけど、見つかるはずないよね」
これといった依頼は見つからなかった。やっぱり南の森が解禁されないとだめなのかもしれない。今のわたしなら大抵のモンスターをたおせるからどうってことないんだけど、走っても行き来だけで丸1日はかかるから今回は無理だよなー。
そうだ! 受付嬢は今のところ暇そうにしているから、1日でこなせそうな仕事がないか聞いてみよう。いちおうゴブリン討伐とかオーガの魔石売却の実績があるから何かいい仕事を見つけてくれるかも?
さっき対応してくれた受付嬢はまた元の席に戻って暇そうにしていたので、さっそく話してみることにした。
「済みません」
「はい。今度はどういったご用件でしょう?」
「何かわたしに向いた仕事ってないでしょうか? いちおう一人でオーガもたおせます」
「それでしたら、市長から腕のたつ冒険者を紹介してほしいと非公式の依頼が当ギルドに出ています。これまで該当者がいませんでしたので紹介していませんでしたが、シズカさんならうってつけと思います。当ギルドからシズカさんを市長に紹介してもよろしいですか?」
そうか、そういうことか。エレナちゃんイベントがなくなったらオーガがやってくるのを街の南門前で待ち受けて街や警備隊に被害が出る前に退治してやれば調査隊イベントに参加できるかもしれないと思っていたけど確証なかったからありがたい。
「ぜひ市長に紹介してください」
「分かりました。
明日の午前10時にギルドにいらしてください。市庁舎から担当の人に来てもらい紹介いたします」
「よろしくお願いします」
何だか得したような気になった。昨日あとさき考えず中央広場でパトロールした関係でエレナちゃんイベントが起きない可能性もあったからラッキーだった。これも10億人に1人という幸運度の賜物かも?
安心して冒険者ギルドを出たわたしは、お腹が空いていることを思い出してギルドの近くで開いていた食堂に入った。
食堂の感じは王都でナキアちゃんたちと入ったあの食堂に似ていた。今日は一人だ。4人席とか6人席があったけど2人席はなかった。4人席が1つ空いていたのでそこに座った。
店の人が注文を聞きに来たのでエールとおすすめ定食を頼んだ。
すぐに定食のトレイと一緒にジョッキになみなみと注がれたエールが運ばれてきたので代金を払い、最初にエールに口をつけた。エールは生暖かくてとても飲む気になれなかった。
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