第63話 ゴブリン討伐4、祭壇
ゴブリン洞窟の中は迷路のようになっているわけではなようで、入り口から続く通路を50メートルほど進んだら左右に枝分かれする形で小部屋ができていた。レーダーマップで見ると、この先で10匹単位でゴブリンが固まっているのが分かる。実際奥の方からゴブリンの喚き声も聞こえてきている。
岩盤の中をゴブリンがどうやってくりぬいたのか分からないけれどね。こういったアリの巣構造ならわたしをすり抜けて逃げ出すことはまずできない。
最初の小部屋とその次の小部屋の中にゴブリンはいなかったけれど部屋の隅に残飯の山ができて異臭を放っていた。残飯の中には骨や野菜のくずなどが混ざっている。詳しく見る気にもなれないのでさっさと次の部屋に向かった。
3つ目の小部屋の中には残飯の山の他ゴブリンが10匹ほどいた。どのゴブリンもまだ若いようでわたしを出迎えたゴブリンたちよりだいぶ見劣りのする体格だった。
ゴブリンたちはギャーギャーわめくだけで壁に張り付いている。うるさいので「黙れ!」と大声を出したら静かになったうえ動かなくなった。何気に素直じゃん。だからと言って見逃さないけどね。
壁に張り付いたゴブリンの胸にムラサメ丸の刃先を突き入れ息の根を止めていくだけの簡単な作業だ。昔のわたしだったらできるわけないようなことが簡単にできてしまう。少なからず怖い面もあるけれどこの世界で生きていくうえで必要なことと割りきればどうってことない。
部屋の中にいた10匹ほどのゴブリンを始末して一度血振りしたムラサメ丸にクリンをかけて次の部屋に。
次の部屋にもさっきと同じくらいの若いゴブリンが10匹ほどいてギャーギャーわめいてた。
そしてさっきと同じように「黙れ!」と怒鳴ったら静かになった上に動かなくなった。これって『威圧』の効果なのかな? 怒鳴ると発動するんだね。何気に便利だ。ゴブリン程度の雑魚が相手だと効果があるんだろうけど、オーガクラスとなると無理なんだろうな。
次の部屋の中にはゴブリンの子ども?が20匹ほどいてピーピー泣いていた。今のところレーダーマップ上では黄色い点だ。みればどのゴブリンもつぶらな瞳をしている。かわいい。こんな子どもたちに手をかけるなんて。
もちろん手にかけるよ。だってわたしちゃんとアニメのゴブリン〇レイヤー見てたんだもの。とは言え、一応心を鬼にするためいったんゴブリンの子どもたちに背を向けて部屋から出ていくそぶりを見せてやったとたんにレーダーマップの黄色い点がいっきに赤くなった。
同時に背後から向かってくる音が聞こえた。振り向きざまにムラサメ丸を横なぎにしたら5匹ほどのゴブリンの子どもを切り殺していた。ゴブリンの子どもの目を剥いて歯をむきだしたちゃんとゴブリン
これでレーダーマップ上に赤い点も黄色い点も見えなくなった。
一度ムラサメ丸を血振りしてクリンできれいにした後鞘に戻して、洞窟の突き当り、おそらく最後の部屋に向かった。
最後の部屋はこの洞窟の中で一番広い部屋で広間のようだった。部屋の真ん中に石でできた高さ30センチほどの円盤状の台があった。近寄ってみると、台上に五芒星が彫り込まれ、五芒星の5つの頂点にはオーガの魔石ほどの魔石が置かれていた。
識別しようとしてみたけれど何もわからなかった。識別のレベルが上がらないと無理みたい。
何かの儀式用の祭壇? ゴブリンの巣窟の最深部でそれラシイ祭壇となると?
どういった用途の祭壇なのか分からないけれど、良いものではないことは確かだ。五芒星の頂点に置いてある魔石を全部回収してやった。
五芒星を台ごと破壊したいけど適当な道具がない。
そうだ!
わたしは壁際に下がって手に持ったたいまつを壁にもたれかけるように置いて、ムラサメ丸を両手で構え真空X切りを石の円盤に向け連射してやった。
X切り換算3発で円盤は粉々になってしまった。恐るべしわが真空X切り。
ここでシステム音が鳴った。
『経験値が規定値に達しました。レベル26になりました。SSポイントを1獲得しました。知力が+1されました。精神力が+1されました。巧みさが+1されました』
『経験値が規定値に達しました。レベル27になりました。SSポイントを1獲得しました。知力が+1されました。精神力が+1されました。スピードが+1されました』
『知力が20になりました。MP最大値が知力の10倍から20倍になり、400になりました。アイテムボックスの容量が知力の20倍キロから30倍キロになり、600キロになりました』
ゴブリンを数十匹たおしたけれどもその程度でレベルが3つも上がるとは思えないので、祭壇の破壊に意味があったとしか思えない。しっかし、この祭壇は一体何だったんだろう?
MPについては今のところ恩恵にあずかっていないのでどうでもいいけど、アイテムボックスの容量がいっきに1.5倍も増えたことはありがたい。これだけあれば、また調査隊に参加するとして調査隊全員の荷物を運んでもおつりがくる。
ゴブリンの左耳は引き返す途中で転がったゴブリンの死骸からナイフで一つ一つそぎ落とし布袋に回収していった。数えながら耳を削いでいったんだけど、子どものゴブリンも含めて70匹もいた。ここに到着する前に12匹たおしているので全部で82匹だ。
お出かけ中のゴブリンが何匹かいるのだろうけど、ゴブリンの巣の掃除は終わった。
洞窟がまたモンスターに利用されてはマズいと思い、たいまつをゴブリン洞窟の入り口から中に投げ込み、両手で構えたムラサメ丸で真空X切りを3発入り口の周りの岩に当てたら入り口が崩れて埋まった。
時刻はまだ11時前。これから村に帰って村長にゴブリンの耳を見せた上、ブレスカの冒険者ギルドに戻って依頼達成報告すれば今日のお仕事は終了だ。
お腹はまだ空いていなかったので休憩することなくというか、ランニングで村に戻っていった。昔読んだことのあるweb小説で主人公とヒロインがいつも駆けていたけど分かる気がしてきた。テレテレ歩いてたらいろいろ無駄だものね。
ランニング中に確かめたわたしのステータス。
レベル27
SS=24
力:28
知力:20
精神力:19
スピード:31
巧みさ:35
体力:33
HP=330
MP=400
スタミナ=330
<パッシブスキル>
ナビゲーター
取得経験値2倍
レベルアップ必要経験値2分の1
マッピング2(70パーセント)
識別2(55パーセント)
言語理解2(82パーセント)
気配察知1(84パーセント)
スニーク1(44パーセント)
弓術3(51パーセント)
剣術6(98パーセント)
威風(4パーセント)
<アクティブスキル>
生活魔法1(24パーセント)
剣技『真空切り』
アドレナリン・ラッシュ
威圧
緩い坂道を駆け下りる感じで30分ほどでマリム村に帰り着いた。
すぐに村長の屋敷に行き、門前でゴブリン退治を終えたと大きな声で報告してやったら、屋敷の中から村長が現れた。
「お前さん、まだ昼前じゃないか。嫌になって逃げだしたんじゃないだろうな?」
「まだゴブリンは残っているかもしれないけれど、巣の中にいたゴブリンは全部退治してます」
わたしはアイテムボックスの中からゴブリンの耳の入った布袋を取り出して村長に手渡した。
村長は怪訝な顔をして袋の口を開いて中をのぞき込んだ。
「こ、これは?」
「ゴブリンの左耳。子どものゴブリンの耳も含めて全部で82個。
数えてみます?」
「いや、結構。あんたただものじゃなかったんだな。
いや、ほんとうにありがとう。そういえば受注票にサインするのではなかったかな?」
「そうそう、ここにサインしてくれますか」
アイテムボックスの中からギルドで渡された受注票を村長に手渡した。
「家で書いてくるからちょっと待っててくれ」
しばらく待っていたら村長が受注票を持って帰ってきた。村長のサインを確認してアイテムボックスにしまっておいた。
「さっきも言ったように巣の中にいたゴブリンは退治したけど、はぐれのゴブリンがいると思うからそこは今まで通り気を付けてください」
「わかった。重ねてありがとう」
一仕事終えたわたしはブレスカに向かって駆けていった。
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