第37話 精鋭調査隊9、ナキアとキアリー3
ナキアちゃんの話の後キアリーちゃんが自分のことを話し始めた。
「じゃあ、今度はわたしのことを話すね。
わたしは見ての通り剣と盾で戦うスタイルなの。だからメンバーの最前列でメンバーを守りながら敵と戦うのがわたしの役目。それだけだとただの前衛なんだけど、わたしの場合は声を出すことで敵の攻撃を一身に集めることができるし、少々のケガなら勝手に治っちゃうの。そのわたしにナキアちゃんが祈ってくれるとケガがみるみるうちに治っちゃうんだよ。もちろん首を切り落とされたら死んじゃうと思うし、腕を切り飛ばされたら生えてくるわけじゃないから拾ってくっつけないといけないんだけどね」
拾ってくっつければそれですんじゃうんだ。何それ怖い。
「今回は王宮からのたっての願いで調査隊に参加しているナキアちゃんを守るのがわたしの務めなの」
この国としても治癒のエキスパートのナキアちゃんは重要人物なんだろうから、そのナキアちゃんを投入しての調査ということはそれだけ大切な任務って考えないといけないよね。なんだか、チートを貰っていい気になっていたけど、わたしなんかじゃ及びもつかないくらいこの二人すごいじゃない。
「キアリーちゃんもすごいんだ」
「わらわたちのことをあえて大したことではないとまで言わぬが、その大したことのある二人で何とか仕留めた獲物はカエルとヘビだけじゃものな。
そういう意味では、シズカも大したものじゃぞ」
「ありがとう。でも弓矢を使えることは今のところ二人にしか言ってないからなー」
「別に良いではないか。必要な時に弓矢を取り出して使う分には。誰も咎めはせんし、黙っていたことをあの隊長なら分かってくれると思うのじゃ」
「わたしもそう思う」
「ところでシズカ。矢は何本くらい持っておるのじゃ?」
「100本近く持ってる」
「ほう。そんなにあるなら何も問題ないのじゃ」
「そうだね」
「だいぶ集まったから、薪はもういいんじゃないかな?」
「そうじゃな。あとは食材探しじゃな」
「キノコが見つかればいいよね」
「キノコもそうだけど、根菜があればいいんだけど。そうそう。
食材じゃないけど、わたし干しブドウとかクルミとか持ってるよ」
「ほうー。それはそれは」
「夕食が終わったら一緒に食べよう」
「楽しみなのじゃ」
「楽しみ」
それからわたしたちは食材を探して林の中を歩き回った。あの赤いキノコを含めて結構な量の食材が集まった。わたしは何も言わなかったけど、ナキアちゃんはパクチーもどきを一生懸命集めていた。青物も大事だけどパクチーはねー。
「そろそろ夕食の準備を始めようか?」
「そうじゃな。この辺りは少し開けておるから、ここでよいのではないか?」
「そうだね」
さっそくわたしたちはかまどを作りあげた。枯れ葉はまだ湿っていたので、細い枯れ枝を下に敷いてだんだん太い枯れ枝を上に積み上げて3人のファイアで火を点けた。
今回の鍋も昼食の時と同じ鹿肉。鍋が煮立って、アクを何度かすくってから野菜を入れた。野菜は山イモ?とゼンマイのような山菜が手に入ったのでそれを入れた。今回はわたしが作っているのであのキノコは入れなかったしナキアちゃんが入れたいと言ってたパクチーもどきも入れなかった。
味付けは塩だけだけど、これはこれでおいしいと思えばおいしい。思うことができればね。今回はイモも入ってるからよけい味噌が欲しい。
若干大き目に切った山イモに火を通すため鍋をかき混ぜていたら、ナキアちゃんとキアリーちゃんが後ろでカエルとヘビの話を始めた。
「鹿肉はおいしいのじゃが、カエルとヘビ肉が余ってしまうのう」
「明日の朝、ハーネス隊長にあげようよ」
「もう一週間以上も前の肉じゃがだいじょうぶじゃろうか?」
「少しくらい変な臭いがしてもハーネス隊長ならだいじょうぶ。
よーく熟成させた肉なんだからきっとおいしいって食べてくれるよ。何かあってもナキアちゃんが祈れば解決だし気にしたら負けだよ」
「それもそうじゃったな。これでアレもやっと片付くのじゃ」
カエルとヘビは食べなくて正解だったようだ。まだイノシシ肉があったはずだから明日の朝食はイノシシ肉を使おう。
「できあがりかな」
二人のコップに具だくさんスープをよそってやって、自分のコップにもよそって、ナイフで切ったパンをスープで柔らかくして食べた。
今食べているパンは今日の1個目のパンの残りで、2個目のパンが丸々1つ残ることになる。アイテムボックスに入れておけば傷まないので、何かの時の非常食になるはずだ。
鍋が空になった頃には空に星がきらめき始めた。鍋や食器類を簡単に洗ってからクリンをかけてアイテムボックスにしまっておいた。
「みんななに食べる? レーズンに乾燥デーツ、殻入りのクルミの他にも木の実があるよ」
地面の上に布を敷いてその上に、一通り皿に盛って置いたところ、
「シズカちゃん、クルミとこの木の実は生じゃぞ」
クルミとピスタチオ?は生だったのか。知らなかった。
「じゃあ、煎ればいいのかな」
「殻に入ったマメみたいな木の実は殻ごと簡単に煎れるはずじゃが、クルミは難しそうじゃな。
殻から出して煎った方が良さそうじゃ」
ということで、クルミを石の上において上から石で砕いていった。中の実を集めてフライパンに入れ、かまどの上において薪を足して煎ってやった。5、6分フライパンを揺らしながらクルミを煎っていたらいい匂いがしてきた。それからもう2、3分煎って皿の上に空けた。
まだ殻から出したクルミがだいぶあったけど、次はピスタチオ?を煎ってみることにした。ナキアちゃんとキアリーちゃんはレーズンとデーツをおいしそうに食べている。
こっちも5、6分煎っていたら殻が割れ始め、いい匂いがし始めた。そこから2、3分煎ってから皿に空けた。ナキアちゃんとキアリーちゃんは先ほどでき上ったクルミをおいしそうに食べている。煎ったクルミを入れた皿の中にはあとほんの少ししか残っていなかったので、次はクルミを煎ることにした。
クルミをフライパンで煎る方法のだいたいの見当がついたので、適当にフライパンを動かしながらわたしもレーズンとデーツをつまんでみた。
どちらも甘い。緑のレーズンは甘いだけでなくすこし酸っぱいところがまたいい。デーツは相当甘くて黒砂糖っぽい味がした。これなら砂糖代わりに料理に使えそうだ。
クルミ2回目が煎り上がったので皿の上に空けて、今度はピスタチオ?の2回目だ。これも2回目なのでフライパンを適当に動かしてわたしはクルミを食べてみた。ちゃんとクルミだった。さきほどのデーツの甘みが口に残っていたので、クルミの渋皮の苦さがそれはそれでいい。ナキアちゃんとキアリーちゃんはピスタチオ?をおいしそうに食べている。中身を取り出した殻を二人で指ではじいてどこまで飛ぶか競争していた。なぜか、ナキアちゃんがはじいた殻はよく飛んだ。
「ナキアちゃん、もしかしてマメの殻に祈ってないよね?」と、横目でキアリーちゃんがナキアちゃんを見て言った。
「うん? わらわは何も知らんのじゃ」
「もう、ナキアちゃんたら」
楽しそうで何より。
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