第126話 ダンジョン3、スライム実食と行き止まり
わたしたちはダンジョンの中を奥に向かって歩いていった。普通のダンジョンというかわたしの知識からいって、ダンジョンはもう少し入り組んでいて迷路っぽくなってるはずなんだけど、ダンジョンのゆらぎからここまで1キロほどずっと真っすぐな一本道だし、見えてる限りずーとまっすぐ洞窟が続いている。
この1キロを歩いている間に大コウモリをもう3匹仕留めて取り出した魔石といっしょにアイテムボックスにしまっている。
「スライム出てこないね」
「そうだね」
「われらに恐れをいだいて隠れておるのかも知れぬのじゃ」
相手は見境なんてないモンスターだし、わたしたちも監視しているわけでもないだろうから、それはないだろう。と、思ったけれど、ナキアちゃんが言っているので案外あり得るような気もしてきた。
そうしたら、レーダーマップの表示範囲ギリギリにいきなり赤い点が3つ現れた。この現れ方は最初にスライムらしきものが現れた時と同じだ。
「150歩先におそらくモンスター。数は3。
スライムの可能性が高い」
赤い点は最初の時と同じくらいの速さでこちらに向かってきている。
「作戦通りナキアちゃんがモンスターを見つけたらたおしちゃって。
うまくいかずにモンスターが近づいてくるようなら不射の射でたおしちゃう」
「見えさえすれば簡単なんじゃが。
今度は凍らせるか、沸かしてやるか、それが問題なのじゃ。
3匹いるなら順番じゃな」
レーダーマップを見るとモンスターは50メートルまで迫ってきている。
「80歩まで近づいてきている」
……
「60歩」
「50歩」
レーダーマップと照らし合わせてスライムのいる辺りを眺めてたら、底面が膨らんでそれが波のようにこっちに向かってきている。透明なのかタコみたいな保護色で光学迷彩しているのか分からないけどおそらくスライムだ。
「1匹、見えたのじゃ! ……。
もう1匹、3匹目も。……。
手ごたえはあったから3匹ともたおしたと思うのじゃ」
ナキアちゃんの言った通りレーダーマップの赤い点は消えてなくなっていたし、30メートルほど先には底面の岩に張り付いて白いコブのようなものが3つできていた。3つの内1つだけ特別白く見える。
「2匹は凍らせて、1匹は沸かしたのじゃ。ヒャッヒャッヒャ」
ナキアちゃんの祈り攻撃って回避不能だし、どんな防具も意味ないわけだから、攻撃力という意味では最強の気がする。
「どんなものか、確かめに行くのじゃ!」
「わたしもー」「わたしも」
スライムの実物ってどんなものなのかみんな気になっていたようで、3人揃って白いコブのところまで駆けていった。
「この特別白いのは沸かされた方だよ。玉子の白身っぽくない?」
「火を通した玉子の白身のようじゃな」
「ちょっと食べてみようか?」と、手袋を外しながらキアリーちゃん。
毒があっても即死しなければナキアちゃんがどうとでもしてくれるだろう。
キアリーちゃんは外した手袋を脇で挟んで、真っ白なスライムを指で少しだけちぎって口に入れ咀嚼した。
「玉子の白身そっくりな味がする」
「どれどれ。わらわもつまんで食べてみるのじゃ。玉子の代わりになるならしめたものじゃからな」
ナキアちゃんも外した手袋を脇に挟んで、スライムを指でつまんだ。ナキアちゃんのつまんだ量はかなり多かった。そのスライムの身を口に入れてムシャムシャ食べたナキアちゃんも食べた感想を言ってくれた。
「ほんに玉子の白身じゃな」
二人とも何ともなさそうなので、わたしも食べてみることにした。
3センチくらいを指でちぎって口に入れたところ、確かに玉子の白身の味がした。久しぶりだったのでもう3センチちぎって食べた。塩があった方がいいね。
アイテムボックスの中からスターターパックに入っていた塩、コショウを取り出して、10センチくらいの大きさでちぎったスライムに振りかけて食べたら目玉焼きの白身だった。
ナキアちゃんとキアリーちゃんも大胆にスライムを引きちぎったので塩、コショウしてあげた。
「これ、おいしい上に食べ応えがあるね」
「スライム一匹でも相当な量があるわけじゃから、売れば結構な値がつきそうじゃな」
「凍った2匹はそのままアイテムボックスの中に入れておくから、食べる時は氷から一気に沸かした方がいいと思う。それか大き目の桶に入れて戻すかだけど、いま大き目の桶は馬用に使ってるから予備がないな」
「この一匹でも相当な量じゃからいつでも良いじゃろ」
そのあとわたしは凍った2匹のスライムを収納しておいた。
「そろそろ行こうか」
わたしたちは洞窟内を奥に向って移動を再開した。
移動を再開してから洞窟内を1時間ほど歩いた。その間、大コウモリを6匹とスライムを3匹たおしている。スライムは3匹ともナキアちゃんが沸かしてたおした。結構遭遇頻度は高いと思う。
そっちはいいけど、洞窟の方はところどころくぼみがある程度で分岐も枝分かれもしていない。わたしのイメージするダンジョンはもっと迷路迷路してるんだけど。まさかここってダンジョンじゃなくってただの通路、トンネルなのかも?
「変わり映えがせんのう」
「どこまで続くんだろうね?」
「ここから見えるだけでもこの先相当あるよね。ダンジョンって曲がりくねったり枝道が沢山あって迷路のようになってるものと思ってたんだけどね」
「そっちのほうが面白そうじゃったな。迷子になってもシズカちゃんの転移で戻れるわけじゃし」
それからさらに1時間。前方が少し明るくなってきた。
この1時間で、大コウモリを3匹とスライムを3匹、新たに大ネズミを3匹たおしている。大ネズミにもビー玉大魔石が入っていたのでモンスターだったようだ。モンスターなら可食だろうということでアイテムボックスにしまっておいた。
「何じゃろ?」
「洞窟が広がってるように見える」
「何か特別な物でもあるのかな?」
心持ち足を速めて少し明るくなったところまで行った。
そこはかなり大きな空洞で、天井の高さは10メートルほど、広さも30メートル四方はあった。そしてその先に空洞はなかった。
「えっ? ここでお終いなの?」
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