第163話 プリフディナス5、1年、2年


 わたしがこの世界にやってきて1年が経とうとしていた。プリフディナスの人口は5万を超えた。SPポイントは1日あたり1500ポイント。王都の城壁内では高さ300メートル級の一般塔の建設も始まっている。


 すでに宮殿塔の第一期工事が終わり、わたしの執務室と居室、そして玉座の間が最上階に設けられた。玉座の間は宮殿塔が完成してもこのままこの階に置かれる。玉座の間の奥には一段高くなったひな壇がありそこにわたしの玉座が置かれている。


 玉座の間の中央には大型の転移魔法陣が設置された。これは宮殿塔の各所から転移魔法陣を使って一度に玉座の間に集まることを想定したものだそうだ。


 リリーム達の執務室も同じ階だけど彼女たち居室は下の階にある。



 春先から実験農園ではなく本物の農地で作付けが行なわれている。小麦、大麦、トウモロコシなどの穀物を中心にイモ類、葉野菜、実野菜と多種多様だ。そのほかに果樹、綿花、桑なども植え付けられた。果樹や桑は苗をジゼロンが召喚している。苗については種もみを農業試験場で撒いて育苗することになっている。種もみ撒きから5週間ほどで田植えをするそうだ。




 そして、今日はプリフディナス建国1周年=わたしがやってきて丸1年記念式典の日だ。わたしはあまり気にしていなかったんだけどジゼロンが記念式典をやろうと言いだしたものだ。


 ジゼロンも召喚されて1年ということになる。そこでわたしはジゼロンへの日頃の感謝を込めてとっておきのプレゼントを用意した。金ラメのちゃんちゃんこだ! エンシャント・ゴールドドラゴンのジゼロンにふさわしい贈り物だと思う。


 宮殿で働くいわゆる官僚たちを玉座の間に集めて1周年記念式典っぽいものを開いた。


 あいさつは面倒なんだけど、それでも一言だけ、


「プリフディナスができて1年が経ち、国民の数も5万を越えました。これからも国民は増えていきプリフディナスは発展していくでしょう。みんなにはこれからもこの国の中心となって働いてもらわないといけないので体には十分気を付けたうえで各自の仕事に励んでください」


 全員がわたしに向かって頭を下げた。ゲームじゃないから忠誠心を数字で見られないんだけど、ここにいる連中はほとんどわたしが直接召喚した魔族なので忠誠心は高いはず。


 それで式は終わり、宮殿の大食堂に移動して立食パーティーに移った。


 パーティーに入る前にわたしからジゼロンにちゃんちゃんこを渡したら気に入ったようで、その場でちゃんちゃんこを着てしまいそのままパーティーに出てしまった。わが国のナンバー2なので誰もジゼロンにちょっとおかしいとか口にしなかった。



 宮殿内はそんな感じだったけど、宮殿外でも一部の警備兵を除いて各所でパーティーが開かれている。建国記念日ってことで祝日扱いにしたわけ。



 金属だろうと石油、石炭だろうとSPポイントを使えば召喚魔法陣でいくらでも召喚できるけど、基礎資源をSPポイントに頼りたくはない。ということで、今年のテーマは宮殿塔を始めとする建築のほか、道路、運河、建設の他、農地の拡大も含めた農業全般と外周山脈での資源調査だ。それに近代科学技術研究が続く。




 そんなこんなと言うほどでもないけれど、プリフディナスは順調に発展していった。


 わたしがこの世界に来て丸2年が過ぎた。プリフディナスの人口は15万まで膨らみ、1日あたりのSPポイントは2500を超えた。昨年度の農業生産は天候にも恵まれたようで失敗もなく順調だった。


 リリームによると、嵐のようなものは滅多に無いということだった。周囲を山脈で囲まれた盆地だけのことはある。その割に適度な降水もあるそうなので、農業に適している土地だと言っていいのだろう。


 穀物については豊作とまでは言えなかったそうだが、まずまずの収穫があったようだ。その他の農作物についてもおおむね順調で農業本格開始2年目となる今年はさらに作地面積を広げていく。農業技術もある程度進んでいるようで、単位面積当たりの収量増も期待できるそうだ。


 現在の朝食のマイブームは大根おろしを納豆に入れて混ぜ混ぜすることだ。タレは昆布だしにみりんと醤油と砂糖を加えて一度煮立たせたもの。昆布とみりんと醤油は召喚魔法陣由来でわたしが直接召喚した。もちろん味噌も赤、白召喚している。


 わが国では国民に対して必要なものは全て支給しているため全員無給で働いてるんだけど、わたしだけはお小遣いとして毎日手に入るSPポイントのうち1の位を貰うことにしている。1の位の数字が0のことは滅多にないのでポイントはどんどん貯まる。


 今でも1ポイント、100万円相当というレートは変わっていないようなので、お小遣いと言うには無理があるかもしれない。


 召喚魔法陣経由で日本食を取り寄せることはもちろんできるんだけど、それではあんまりなので、宮殿食事部というものを作り、和食を中心に料理を研究させている。出来上がりをわたしが試食して評価することで食事部のスキルが日々向上している。と思う。


 レシピとして完成した料理は宮殿その他の食堂で提供する料理の一品となる。



 今年のテーマは、醸造酒と養蚕。ため池での淡水魚養殖。探鉱と鉱山開発、窯業と精錬と製鉄だ。盛りだくさんと言えば盛りだくさんだけど、それだけの人員は揃えている。


 昨年度、研究所の地質関係の技術者が護衛の兵士に守られ外周山脈を調査したところ、人魔大戦以前に採掘された廃鉱山の他に、新たに石炭、金銀銅、その他の非鉄金属、鉄鉱石、石灰石などの鉱体、鉱脈を発見している。鉱体、鉱脈はなぜか外周山脈の中でも東側に集中していた。発見された鉱脈や鉱体は当たり前だけど地表に近いため露天掘りで採掘可能だそうだ。


 研究所の地質関係の技術者によると、西側の外周山脈にも各種の鉱石は賦存するだろうが、ある程度の深度にあるためボーリング調査が必要だとか。ボーリング技術はまだ開発されていないし、現在見つかっている鉱体、鉱脈を採掘する鉱山開発を進めていっているうちに、そういった技術も開発されていくと思おう。


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