第5話 1日目終了


 ステータスの上がり方の法則は今のところわからない。ナビゲーターに聞けばいいか。


『ステータスの上がり方はどうなってるのかなあ?』


『レベルアップまでの行動に寄与したステータスを評価し、寄与度に応じて、合計で3ポイント分レベルアップ時に追加されます。ステータスアップにつながらなかった寄与度は、持ち越されます』


 なるほど。


 ところで、わたしのステータスは客観的に見てどうなんだろう。さきほどまでの戦いは、いくら相手がゴブリンとはいえ、戦いとも言えないほどの一方的なものだったし、弱いというわけではないと思うが。


『どうなんだろう、わたしのこのステータス? 一般人と比べて』


『ステータス値は平均的な成人のステータス値が5となるように設定されています。1ポイント増加ごとに10パーセント能力が強化されます。HPとスタミナは体力の10倍、MPは知性の10倍ですので、一般的成人のそれらの平均は50になっています。しかし、幸運度だけは例外で、幸運度の平均は0となっています。50パーセントの人の幸運値はマイナスです。幸運値は、平均値からの散らばり具合、いわゆる標準偏差が10となるように設定されています。幸運度の分布は正規分布に近いため、幸運値60とは、上方6シグマですから、おおよそ10億人に1人という幸運度になります』


 とりあえず、なるほど。


 今でも十分強いようだ。それ以上にすごく幸運なんだ。



 それから、わたしはさらに3グループ8匹のゴブリンを斃した。



『太陽が南中しました。時刻を新暦1255年4月18日午後0時00分と再仮設定します』


 昼になったか。まだあまりお腹は空いていない。それより、ゴブリンがこの数いるということは、近くにゴブリンの巣だか集落があるかもしれない。


 だとすると今まで1度に相手取るゴブリンの数は3匹ほどだったので楽勝だったが、5匹6匹、それ以上の集団に出くわすかもしれない。そういった集団に出くわしたら、気づかれないうちに逃げられるように気配察知で早めにゴブリンを見つける必要がある。


 とはいえ、レベルアップはできるうちにしたい。


 もう少し狩りを続けレベルアップをしよう。といっても、夕食や野営の準備もあるからあと2、3時間が限度かな。



 午後しばらくして、イノシシに出くわした。弓で1射、2射と射り、3射目で斃した。3射目を放った時には、イノシシは目と鼻の先まで来ており冷汗が流れた。恥ずかしながらゲームじゃないとその時初めて実感したよ。


<経験値が規定値に達しました。レベル3になりました。SSポイントを1獲得しました。力が+1されました。スピードが+1されました。巧みさが+1されました>


<ステータス>

レベル3

SS=2

力:12

知力:10

精神力:10

スピード:11

巧みさ:12

体力:21

幸運度:60


HP=210

MP=100

スタミナ=210


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング1(18パーセント)

識別1(10パーセント)

言語理解1(1パーセント)

気配察知1(16パーセント)

スニーク1(22パーセント)

弓術1(36パーセント)

剣術1(21パーセント)


<アクティブスキル>

生活魔法1(3パーセント)


 ナビゲーターの指示に従ってイノシシを解体し、軽く水で洗ってアイテムボックスに収納した。胃から小腸、大腸は食べられるそうだが下処理が大変ということなので、穴を掘って埋めておいた。水を何度か使ったためか、生活魔法が3パーセントになっていた。



 このアイテムボックスだが、容量は、大きさではなく重さだそうで、知力の20倍キログラムということだ。今だと、知力が10なので200キログラムになる。先ほどのイノシシは結構大きかった。ナビゲーターに聞いたら50キログラムほどの肉がとれたようだが、まだまだ余裕がある。


 時刻は午後3時過ぎ。


 少し早いかもしれないけど、初めてだし野営の準備をそろそろ始めた方がいいよね。


 携帯食料がアイテムボックスに入ってはいるけど、そういったものは大事にした方がいい。なるべく手に入る食材を使っていこう。


 野営するのによさそうな場所を探しながら、ナビゲーターの指示に従って食べられる草や根菜を見つけていった。セロリ、ニンジン、ネギ、長イモなどによく似た野菜が手に入った。


 しばらく林の中を歩いていたら、やや開けた場所があったのでそこで野営することにした。周りの石を集め、地面をある程度スコップで掘り、できた穴の周りに石を並べて、かまどっぽいものを作り、燃料として落ち葉や枯れ枝をその中に入れた。


 準備ができたところで、革鎧などの防具を外してアイテムボックスにしまった。それから、アイテムボックスの調理セットの中から何のために入っているのか分からなかった鉄の棒を二本かまどの上に並べて、その上に鍋を置いた。生活魔法で水を鍋の2分の1ほど入れ、ナビゲーターの指示に従ってかまどの下の燃料に生活魔法で火をいれた。


 鍋から湯気が立ち始めたところで、イノシシのあばら骨についた肉をナイフで削ぎ落しながら投入。よく考えたら、骨が入った方がいい出汁が出るので、結局肉を削ぎ落したあばら骨も鍋に入れてやった。鍋をかき混ぜながら灰汁アクと浮き上がった脂をお玉ですくっていった。


 鍋が煮立ってすっかり灰汁とあぶらをとったところで、少しずつ塩をいれ味を調整する。骨を取り出してから水洗いして大雑把に切った野菜?を入れ、しばらく煮立てた後、少し胡椒を振り、鍋に蓋をしてかまどから鍋を下した。


 そのまま置いて、少し冷めたところで鍋蓋を取ってお椀にすくって食べてみたところ、マズいわけではなかった。調味料が塩コショウだけだったわりにはおいしいのか。味〇素とかカツオ風味のほん〇しが欲しいが、これから先手に入らないのだろうなー。とかしみじみどうでもいいようなことを考えながら、お代わりを2回した。鍋の中にはまだだいぶ残っている。鍋ごとアイテムボックスに収納し、使った食器を洗って、アイテムボックスに片づけた。


 陽はまだ落ちていないが、若干肌寒く感じるので、アイテムボックスからマントを取り出し羽織ってみたところ結構暖かい。少し周りを回って、夜の間の焚き火用に薪を集めておいた。



 そのうち陽もすっかり沈み、月は見えなかったがものすごい数の星が空にきらめき始めた。もちろん見知った星座などはない。火を絶やさないように、少しずつ薪を焚き火代わりのかまどにくべる。夜の林の中は結構物音がする。鳥目ではないのか、鳥?の羽ばたき、小動物の鳴き声、風の音。かまどの中で薪のはぜる音。


 これまでも、返り血を浴びたりしていたので何回か生活魔法の『クリン』を自分自身にかけていたが、この『クリン』がすごい。服についた汚れが落ちるだけでなく、頭の先からつま先まで、体全体がリフレッシュする。もう癖になってしまった。


 そろそろ横になるか。


『クリン』をかけて、アイテムボックスから毛布を取り出し横になって目を閉じた。


 今日のことを思い出していたら、眠りについていた。



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