第102話 5日目の夜2、5回目の襲撃2
今のわたしにとってそれほど高速ではなかったので回避可能だけど、わたしが逃げてしまえば、後ろにいる4人が火の玉に飲み込まれる。
わたしは運を天に任せ、火の玉をムラサメ丸で真一文字に切ってやった。
いつかゴブリンの放ったヘロヘロファイヤーボールを切った時と同じように、火の玉が消えてしまった。
火の玉を封じられた
ギァエエエエー!
地面を震わすような咆哮で頭が幾分痺れてしまった。
ムラサメ丸で火の玉を封じられることが分かってよかったけど、わたしがここから動くと、ハーネス隊長たちが
射線がハーネス隊長たちから十分外れたところまで移動して、わたしは
これは少しばかり効いたみたいで
あまり近づきすぎていきなり
こういう時のための円盤だ。
わたしはムラサメ丸をアイテムボックスにしまい、10歩ほど下がって右手に4枚の円盤を挟んで
それでも円盤を続けて3回、12個ほど投げたところで後ろに人の気配を感じた。振り向くとナキアちゃんとキアリーちゃんが立っていた。
「シズカちゃん、こやつじゃがいくらなんでも生きものならヤカンのように沸かしてしまえば死ぬじゃろう?」
「あっ! そうかも。ナキアちゃんが祈ってモンスターの中身を沸かせばいいんだ」
「やってみるのじゃ。……。
どうじゃろか?」
効いているのか効いていないのか分からないけれど、レーダーマップ上の赤い丸は今のところ健在だ。
ヤカンに比べれば大きさが比較するのもばからしいほど巨大なカメにはナキアちゃんの祈りも通用しないのか? だけど重くすることはできたわけだから効かないってことはないはず。
しばらく見守っていたら、
弱ってる?
「ナキアちゃん、こいつの頭を重点的に沸かしてくれる?」
「やってみるのじゃ。甲羅の中に入っていても何とかなるじゃろ。……」
甲羅から外に出ていた
「ナキアちゃん、カメは死んだみたい」
「フフフ。わらわは新しい境地を切り開いたのじゃ。モンスタースレイヤーとわらわのことを呼んでくれても良いのだぞ」
「モンスタースレイヤー、ナキアちゃん、スゴーイ! アハハハ」
キアリーちゃんがそう言って笑ったので、わたしも「モンスタースレイヤー、ナキアちゃん、カッコいー!」と言って3人で大笑いした。
3人で笑っていたらハーネス隊長とカルヒがやってきた。
「でかした。これはナキアがたおしたのか?」
「わらわが、こやつを沸かしてやったのじゃ、ヒャヒャヒャ」
「沸かしたというのが何のことだか分からないが、ナキアはやはりすごいな」
「じゃろ」
「シズカ、このカメの魔石はどうする?」
「これはもうどうしようもないので、放っておくしかなさそうです」
「それもそうだな。
戻って朝まで体を休めるとするか」
ハーネス隊長とカルヒはそのまま野営地に向かって帰っていった。
「シズカちゃん、こいつ食べられないかな?」とキアリーちゃんがまたとんでもないことを言い始めた。
「どうかなー。血抜きしないまま煮ちゃってるから、マズくないかな?」
「足は煮えてないんじゃないかな?」
足といっても丸太を越えて大木ほどもあるので、食べられたとしても肉を切り取るのは容易ではない。
それでもキアリーちゃんが物欲しそうな顔をしてわたしを見つめるので、ムラサメ丸をアイテムボックスから取り出したわたしは
切れ目からは血が出ることもなかったのはいいんだけど、これからどうやって肉を切り取ればいいのか分からない。仕方ないので今度は斜めに切れ目を入れていき最初の切れ目に繋げて3角柱のような形で肉を切り取った。
切り取った肉の厚さは50センチくらいだったけど30センチは表皮で、残りの20センチは脂肪だった。足の肉はちょっとやそっとでは取れそうもなかったけれど、脂肪は揚げ物に使えるかもしれないと思いもう2つ3角柱を削ぎ取ってアイテムボックスにしまっておいた。
「肉は無理だったけど脂身をかなりの量取ったから、これで揚げ物ができるよ」
「ほう。それは楽しみなのじゃ」
「楽しみだね。揚げ物ってそこらの食堂じゃ売っていないもんね」
「そうじゃなー。油がそれ相応に高いゆえ、金持ちの食べ物じゃからなー」
油の大量生産が始まるまでは油は結構な値段がしたんだろうし、その油を大量に使う揚げ物は庶民が食べるには高価な食べものだということはうなずける。明日は期待に応えて揚げ物だな。
「そろそろ、わたしたちも休もうか」
「そうじゃな」
「うん」
わたしたちも野営地に戻ってそれぞれの毛布の上に横になった。
疲れはほとんど感じていなかったけど、わたしはすぐに眠りについた。
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