第159話 プリフディナス1、生活環境改善


 ジゼロンのおかげで、お城の周辺に住んでいた魔族が国民になった。それはいいけど国名どうしようか?


「ジゼロン。何かいい国名ある?」


「この地の名まえ、プリフディナスでよろしいのでは?」


「そうね。じゃあそうしましょう」


 国名が安直に決まったけれど、これ以外にはないと言えばない。まさかわたしの名字を取ってホリグチ王国もないし、わたしが住んでたさいたまからとってサイタマ王国なんかもっとあり得ないもんね。



 SPポイントを貰える零時過ぎに起きるため、部屋に戻って昼寝でもしようと玉座を立とうとしたところで、ジゼロンがわたしに、


「陛下のお部屋の配管と風呂の取り付けが終わったようです。

 タンクの水をお湯にしておきます」


 わたしが玉座に座っているあいだに、地下のわたしの部屋の配管工事が終わっていたようだ。


 しかも階段の近くにパイプにつながった給水タンクっぽい金属製の箱ができ上っていた。その箱の前までジゼロンが歩いていき、一瞬立ち止まってから帰ってきた。


「お湯の準備ができましたから、いつでもお風呂に入れます」


「じゃあ、風呂に入ってくる」


 わたしの部屋に帰ろうとしたら、兵士が二人付いてきて、部屋の入口前で立ちどまって通路側を向いて番兵になっちゃった。部屋に入ると衝立が置いてあって、その先にバスタブと金物製の台が置いてあった。日本式のお風呂の方が有難いんだけどそこまで贅沢は言えないよね。


 金属製の台の上にはボディーソープとシャンプーとリンスだかコンディショナー。下の段にタオル地の真っ白なバスローブとバスタオル、それに普通のタオルが数枚畳まれて置いてあった。タオルを触るとふんわりしていた。アイテムバッグに入っていた女神さまからもらったタオルより肌触りが断然いい。今治産のタオルも真っ青なタオルだ。



 バスタブには温度調節付きの蛇口とシャワーが付いていた。ジゼロンは現代日本の知識をある程度持ってるみたい。わたしが直接召喚した関係でわたしの知識が流れたんだろうな。



 服を脱いで裸になり最初にシャワーで汗を軽く流した後、頭をそのまま洗った。頭にタオルを巻いてから、バスタブを軽く洗って底の栓をはめてお湯を溜めた。お湯に浸かった時お湯がバスタブからこぼれてしまうと日本式のお風呂じゃないので周りが水浸しになる。そこは気を付けてお湯を溜めた。


 丁度良さそうな感じにお湯が溜まったところでお湯を止め、肩までお湯に浸かって一息ついた。


 フー。


 ジゼロンに丸投げしてるから何をしているわけじゃないんだけど気疲れしてたみたい。5分ほど目を閉じて目頭と鼻の付け根の間のくぼみを軽く揉みながらゆっくり鼻呼吸してたら元気が出てきた。ような気がし始めた。


 肩までお湯に浸かったままバスタブの栓を抜いたら、お湯が抜けるにつれて体が重くなった。当たり前のことなんだけど新鮮だった。お湯が全部抜けてからお風呂から上がり、バスタオルで体を拭いた後裸の上にそのままバスローブを着た。


 お風呂に入ってさっぱりはしたんだけど、バスタブの周りにカーテンがついてなかったから結局バスタブの周りはかなり濡れちゃった。やっぱり日本式のお風呂にしてもらおう。


 バスローブ姿でアイテムバックから飲み物を出してソファーに座って一服。飲んだのは炭酸水。


 コンビニ弁当で夕食を済ませようと思ってたらジゼロンの声が入り口から聞こえてきた。


「陛下、夕食の準備が整いましたので、お持ちしてよろしいでしょうか?」


「今着替えるからちょっと待ってくれる」


「はい」


 わたしは急いで部屋着に着替えた。バスローブは衝立の上にひょいと投げて掛けておいた。


「着替えたわ」



 ジゼロンに続いて鎧下の上に白いエプロンを着た女性兵士がワゴンを押して部屋の中に入ってきた。


 ワゴンの上に銀色のドームカバーをかぶせたお皿が何個も乗っていた。本格的だ。


 女性兵士がワゴンの下から白いテーブルクロスを取り出して、それがテーブルの上に広げ、その後ナイフとフォーク、そしてスプーンを並べてくれた。色艶いろつやからいって銀の食器みたい。


 ドームカバーを取ってお皿がテーブルの上に並べられていく。


 メインは牛肉のステーキ。それにスモークサーモンとクリームチーズの乗っかったサラダ。


 コンソメスープにバターロール。


 女性兵士は料理を並べ終わって一礼して部屋から出ていった。


「おいしそう。

 これ、ここで作ったの?」


「食材は召喚しましたが、調理は厨房です」


「料理人も召喚したの?」


「はい。明日には人員が200名を超す予定ですので、料理人は2名ほど。そのほかに助手4名召喚しました」


「ねえ、ジゼロン。あなた現代日本の知識を持ってるの?」


「はい。陛下に召喚していただいたおり、ある程度の知識を頂いています」


「やっぱりそうだったんだ。ドラゴンの知識だけでわたしの要望を聞くのは難しいものね」


「はい。ドラゴンわたしたちの常識は人間には通用しませんので」


 召喚はそういう仕様だったと考えておこう。ということは、一般的な作業員や兵士の召還はジゼロンに任せておけばいいけど、今後研究者や科学者、技術者をどんどん召喚して科学技術を19世紀から20世紀の地球並みに高めていきたいので、わたしが直接そういった研究者、科学者、技術者を召喚すれば多少なりとも現代知識が流れ、それが役立つような気がする。


 ジゼロンが見守る中食事を完食した。そしたらさっきの女性兵士がやってきてテーブルの上のお皿を片付け、お茶を淹れてくれた。お茶は緑茶だった。西洋料理のあとでも緑茶はアリだよね。


 お茶を飲もうとしたら、デザートに銘々皿に乗った羊羹が出された。食べた感じは虎〇の夜〇梅。異世界にきてこんなぜいたくができるとは。


 ジゼロンを召喚したことは大正解だった。


 羊羹を食べ終わってお茶を飲み終えたら、


「陛下、食器とテーブルクロスなどを片付けますから、ソファーの方へおいでください」と、ジゼロンに言われたのでそっちに移動した。


 女性兵士がテーブルの上を片付けて、その後台布巾でテーブルを拭いてくれた。最後に『クリン』と言ったようなので、彼女も魔法を使えることが分かった。魔族って本来魔法を使うのが上手な種族という意味らしいから当たり前か。その魔族の女王さまが魔法を全然使えないわけだからちょっと皮肉だよね。まっ、いいけど。



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