第160話 プリフディナス2、リリーム・ガイウス


 温かくて本格的な夕食でお腹いっぱいになっちゃった。デザートも食べてしばらくしたらちゃんと眠くなってきた。


「ジゼロン。零時になったら起こしてちょうだい」


 そう言ってわたしはランタンの明るさを絞って部屋着のままベッドにもぐりこんで目を閉じた。



『陛下、午前零時になりました』と、ジゼロンの声が頭の中に響いて目が覚めた。すぐにランタンの明るさを元に戻した。


 通路は明るいので何も持たず部屋から出た。部屋の出口にはちゃんと2名の兵士が立っていて、その二人がわたしについてきた。


 わたしは護衛の兵士2人を引き連れて階段を上って地上に出た。考えたらわざわざ召喚魔法陣の前に行かなくてもSPポイントの確認はできたんだよね。まあいいや。




 ジゼロンは召喚魔法陣の前に立っていた。


 わたしはジゼロンの隣りまで歩いて行ってSPポイントを確かめたら、1020あった。はて?


 何だかわからないけど20ポイント増えていた。その中で1000ポイントはジゼロンに渡した。ジゼロンに20ポイント増えていたことを話したら、おそらく国民の数が影響しているのではないかということだった。ということは昨日周辺の魔族が2000人弱国民になり、ジゼロンが100人くらい召喚してるので、国民の数が全部で2000人くらいになって20ポイント増えたってこと? 100人で1ポイントか。大して多くはないけどありがたいことはありがたい。少なくともこれからどんどん国民は増えていくわけだからポイントも右肩上がりだ。


 いちおうこれで用事は終わったのでわたしは部屋に戻ってベッドにもぐりこんで朝まで眠った。



 朝食は昨日の夕食のときと同じようにエプロンを付けた女性兵士が給仕をしてくれた。今日の朝食はスクランブルドエッグにカリカリのベーコン。ゆで卵のスライスの乗ったサラダにコーンスープ。それにトーストだった。飲み物はガラスのコップに入ったオレンジジュース。これじゃあホテル住まいだよ。


 朝食を食べ終えたわたしは、部屋着から普段着に着替えた。そして入り口の左右に立っていた護衛の二人を引き連れて地上に上がり、作業の進み具合を眺めた。何だか知らないけれど、召喚魔法陣の周りに足場が組まれ石壁が立ち上がっていた。


 ジゼロンは召喚魔法陣の前に例のごとく立っていたけど今日は図面のようなものを持っていた。召喚する物もだんだんと複雑なものになるんだろう。と、思う。


「陛下。おはようございます。

 召喚魔法陣はこの国で最も大切な施設ですので、周囲を囲うことにしました。

 これがその部分の完成図です」


 ジゼロンが手に持っていた図面を広げて見せてくれた。


 召喚魔法陣の周りに4カ所出入り口を設けるように壁が立ち上がり、上は天井ですっかり覆われるようだった。天井までは17歩と書いてあった。


「天井までは17歩と書いてあるけど、ってどういう単位なの?」


「だいたい60センチに相当しますので、天井まで17歩は10メートルに相当します」


「これって、魔族の単位なの?」


「魔族に限らずこの世界で一般的に用いられている単位です。この上の単位がで1万歩。約6キロになります」


「そうなんだ。

 10メートルとなると相当高いよね?」


「大型の資材の召還を想定していますのでその程度にしました」


「分かったわ」


 そのあとわたしはジゼロンの後について工事の進捗状況を見て回った。バラックの数がだいぶ増えていたし、雑草の生えていた石畳はほとんど修理されていて、雑草はどこにも見えなかった。城跡の周囲を囲む外壁も修理がだいぶ進んでいた。まだ見違えるほどとは言えないけれど、かなりのスピードで工事は進んでいるようだ。


「ジゼロン。1日1000ポイントで足りてる?」


「1000ポイントで出来る範囲のことをするだけですが、かなりのことができます。ご安心ください」


「うん」


 城の敷地内をジゼロンと見回って、あとは任せてわたしは部屋に戻った。部屋の戻ったからといって特に何もすることはなかったので長椅子に寝っことがってここ数日のとを考えていたら、わたしより少し年上に見える魔族の女性がわたしをたずねてきたと上で仕事をしていたジゼロンがテレパシーみたいなアレで伝えてくれた。わたしは急いで被り物を被って地上に上がり玉座に着いた。


 玉座に着いたところでジゼロンが玉座の左側に立ち、さらに左右に5名ずつ兵士が槍を持って控えた。


 それから間を置かず、兵士に伴われて5人ほどの女性がわたしの前までやってきた。


 先頭に立つ女性が一歩前に出て自己紹介した。


「ガイウスの孫娘リリーム・ガイウスと申します。

 わたしとここにおります4名を陛下のおそばに仕えさせていただきたく参りました」


 どうしようか? これ。ジゼロンの顔を見たらうなずいた。ということは申し出を受けろって事よね。


「ガイウスと4名の者、ありがとう」そう言っておいた。


 ジゼロンが例のテレパシーでわたしに話した。


『ガイウス殿はわたしに付いて、高級官僚含みでここの全体について学んでもらいましょう。後の4名はそのまま陛下の身の回りのお世話係でよいでしょう』


 4名も必要ないけど、格好付けは必要だものね。


 わたしはジゼロンにうなずいて、5人に告げた。


「ガイウス殿はこのジゼロンに付いて全体のことを学んでください。残りの4名はわたしの身の回りの世話をお願いします」


「かしこまりました」と、リリームが答えて、残りの4名が頭を下げた。


「5人の住居は陛下の隣りの部屋にしましょう。必要なものはすぐに取り揃えます。

 ガイウス殿はわたしについてどういうことをやっているのか見ていてください。

 部屋の準備ができたら知らせるので4人は陛下のそばにいてください。

 ところで5人は住み込みで働くということでいいんですよね?」


「はい。そのつもりで荷物を持ってきています」


「了解しました。足りないものがあれば言ってください。たいていのものは用意できますから」


「その時はよろしくお願いします」


「それではガイウス殿。わたしについてきてください」


「ジゼロンさま。わたしのことはガイウス、ないしリリームと呼び捨てでお願いします」


「わかりました、リリームさん。わたしのことはジゼロンと呼んでください」


「はい」


 ジゼロンがリリームを召喚魔法陣の前に連れていき、5人のための家具や寝具その他もろもろを召喚して、それを次々とアイテムボックスに収納していった。


 ここからだとリリームの顔は見えなかったけど、驚いてると思う。


 わたしの後ろには2名の護衛が付きっ切りなんだけど、今度は侍女が4人追加で付きっ切りになってしまった。


 もし4人が護衛としての能力があるようなら、護衛の兵士は他で使えるので4人にその辺を聞いてみることにした。


「あなたたち、武器は使えるの?」


「短剣程度ですが使えます。武器より攻撃魔法の方が得意です」と、一人が答えたら、残りの3人がうなずいた。


 魔法の方が武術より上とは一概には言えないと思うけど、侍女は侍女なんだし、侍女の仕事に短剣はいかにも邪魔そうなのでこれはこれでいいんじゃないかな。


 あとでジゼロンに話しておこう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る