第3話 ガーディア、チュートリアル

[まえがき]

いつも通り、ガチガチのテンプレでのスタート。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 視界の中でそのウサギっぽい生物の横に名前が現れた。『大ウサギ』


 まんまだった。


 少し開けたところにいるその大ウサギは柴犬ほどの大きさでそこらに生えている草を食べているようだ。距離は30メートルほど。


『大ウサギを識別しました。詳しい情報を見ますか?』


『うん』


『大ウサギは野ウサギが魔力、正確には魔力のもととなる魔素の影響で大型化したもの。100年ほど前から種として固定。草食。肉は魔力の影響を受けているため長期間にわたり腐りにくく美味。毛皮は衣料などに加工されるため商品価値がある。警戒心が強い上、足が非常に速い』


『ほう』


『さっそく、大ウサギを狩ってみましょう。静かに弓を構えてください』


 チュートリアルぽくなってきたー。


 背中の弓を外し、矢筒から80センチほどの長さの矢を抜き出して弓につがえる。ゆっくりとつるを引きながら、狙いを定めようとしたら、視界に丸に囲まれた小さな十字が現れた。なにこれ? 便利じゃん。


『今見えている十字が、照準になります。十字が大ウサギに重なるよう狙いをつけてください。矢は十字の近くに見える円の範囲内に命中します。十字の安定性と円の大きさは的との距離、的の動き、弓術スキルのレベルによって増減します。また、的がその能力を使い矢を回避することもあります』


 微妙に揺れている十字の位置を修正していると、揺れが小さくなっていき、丸の大きさも同時に小さくなって大ウサギの体が丸からはみ出した。


『……、いま!』


 ナビゲーターの指示に従い弦を離すと、矢は何かがこすれるような音とともに思った以上の速さで突き進み、大ウサギに命中した。


『命中です。大ウサギは絶命しました。矢を回収して、この大ウサギを解体してみましょう。

 その前に弓は邪魔なのでいったんアイテムボックスに収納してしまいましょう。

 アイテムボックスへの物品の収納は、収納したいものを手にして収納と意識するだけです。

 アイテムボックスからの物品の引き出しは、アイテムボックスを意識することでアイテムボックス内の物品を認識できますので、引き出したい物品を選んで、引き出し、ないし排出と意識することでその物品が引き出されます。その物品が手で持てる物なら手の中に、持てないものなら地面に現れます』


 収納と意識したら、手にした弓がアイテムボックスの中に入った。試しにアイテムボックスを意識したら、ナビゲーターの言った通り中に入っている物が分かった。


 大ウサギのもとに駆け寄り両耳をつかんで持ち上げてみたら、思った以上に重たかった。これまで動物なんか殺したことはなかったが結構なんともなかった。メンタルも強化されてるのかな? 早くも順応したのかしら?


 わたしの放った矢にはかなりの威力があったようで、ウサギの肩口から入った矢が矢羽のところまで突き刺さり、矢じりの方は胸の下、みぞおちあたりから3分の1ほど抜け出ている。矢を抜くのが難しそうだと思っていたら、


『矢じりの返しの部分を持って左回りに半回転させると矢の柄から矢尻が外れます』と、ナビゲーターがアドバイスしてくれた。


 アドバイス通り、矢じりの返しの部分を持って矢じりを半回転させたら柄から外れた。そのまま、矢羽の方に矢を引っ張ると矢はウサギの体から簡単に抜けた。矢に矢じりを付け直し、アイテムボックスから取り出した布で矢の汚れを拭いて矢筒にしまった。その布は腰のベルトに挟んでおいた。


『血抜きをしましょう。

 その前に周囲に脅威がないか、安全を確認することをお勧めします』


 確かに。


 視界の右下の方にレーダーマップは点いたままだったので、確認したところ、色の付いた点はなかった。今のところ安全なのだろう。たまに確認した方がいいな。


『安全が確認されたなら、

 まず、紐をアイテムボックスから取り出し、ウサギの左右の後ろ足に結んで近くの木の枝に両足を開き頭が下になるようにして吊るします』


 アイテムボックスの中を意識すると簡単に紐が見つかった。その紐を取り出してウサギの後足に結び、近くの木の枝にウサギを吊るしてやった。


『ウサギの耳元の膨らんでいる部分が静脈です。ナイフで耳の後ろを刺して耳に沿って動かし、静脈を切断してください。片側ができたら、反対側も切断します』


『ウサギの血は栄養豊富なので、ウサギの頭の下に皿を置けば回収できます。

 そのまま、アイテムボックスに収納出来ますしアイテムボックス内では時間は停止しているため腐ることも劣化することもありません』


 栄養満点かもしれないが、やはり今回は遠慮しておこう。そういえばスッポンの血っておいしいのかしら?


 アイテムボックスに入っていたナイフはすごく切れそうな一品だった。ナビゲーターの指示通りウサギの右耳の付け根辺りにそのナイフを当て、膨らんだ部分を切断するよう横に引いたら、そこから血が噴き出してきた。左側も同じように切ってやったら、すぐにぽたぽたと垂れるくらいまで血の垂れる勢いは落ちた。


『血抜きはそのままにしておけばだいじょうぶなので、次は解体です』


『まず、ウサギの下腹部にナイフを入れ、のどまで切り上げます』


『おなかを開いて胃と腸を取り出したら、いったん後ろ足の骨を骨盤から外し、残った内臓を取り出します』


『肛門までしっかり切って、背骨に沿った動脈部分に切込みを入れ、残った血を出します』


『足首に丸く切込みを入れたあと、腹の方からナイフを入れ、外に向かって皮だけを切って切れ込みを入れます』


『切れ込みが入った後は手で皮を引き剥がしていきます』


 ……。


 ナビゲーターの指示通りナイフを使い、きれいに大ウサギを解体することができた。ここまでで10分ほどか。


『最後に、ナイフ、ウサギの毛皮と肉を水洗いします。生活魔法で水を出してみましょう。『ウォーター』と念じてみてください』


「ウォーター」


 とぼとぼと右手の先から水が出てきた。びっくりしたが、なんとか毛皮と肉を洗うことができた。洗った毛皮と肉はそのままアイテムボックスにしまった。ついでにさっき使った矢は簡単に布で拭いただけだったので、水で洗ってから布で拭いておいた。



[あとがき]

ウサギの解体は猟師兼ライター『畠山千春 』さんのこちらの記事を参考にさせていただきました。http://chiharuh.jp/?p=2940

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