第97話 2日目の夜。2回目の襲撃


 2日目の移動を終えたわたしたちは野営の準備を始めた。


「ハーネス隊長、今日は肉を焼こうと思っているんですが、一緒にどうですか? カルヒも一緒で」


「おう、それは済まんな」


「ありがと」


「何を手伝おうか?」


「大き目のかまどを作ってください。肉だけだとさみしいからスープも作りたいし」


「わかった」


「わらわたちはたきぎを集めてくるのじゃ」


「行ってくるね」


「わたしは下ごしらえしておく」




 今回はどうせなので5キロほどのイノシシ肉を二かたまりまな板の上に出してナイフでスライスしたものをまな板の上に並べていき、ある程度たまったら軽く塩コショウしてから皿の上に移していった。大きなまな板は使いでがあって便利だし、作業の切り替え時にクリンで手先をきれいにできるのが実にありがたい。



 昨日は肝臓レバー心臓ハツの下ごしらえするのを忘れていたので、スライスして水を張った鍋の中に入れて、残っていた血を洗ってやった。ホロホロ鳥の肝臓レバー心臓ハツははっきり言って小さかったけれど、イノシシの肝臓レバー心臓ハツは相当大きいので食べでがありそうだ。


 このまま水に入れておけば、2、3時間であらかた臭みも取れるだろう。焼く前にクリンをかければ完璧だ。


 肉関係の下ごしらえの後、里イモの皮をむいて一口大に切り、ボウル代わりの小さい鍋に水を張ってその中に入れておいた。スープのコクを出すためデーツを薄く輪切りにしておいた。


 下ごしらえが終わった頃、立派なかまどもでき上がり、ナキアちゃんとキアリーちゃんもたきぎをどっさり抱えて戻ってきて、かまどの中に薪を組んでくれた。わたしは薪の上に木炭を置いた。網焼きだものね。


 薪の準備が終わったところで、わたしはかまどの上に大型金網を置き薪の下の方に入っていた枯れ葉に火を点けた。


 すぐに火は大きくなり炭にも火が着いたので、金網の隅の方に大き目の鍋を置いた。その中に出汁用に取っておいた昨日のホロホロ鳥の鶏ガラを入れ水を足した。


 鍋を見ながらスライスした肉をトングで金網の上にどんどん乗せていった。


 鍋が煮立ってアクが沢山出てきたのでお玉ですくっていき、アクをあらかた取り終わったところで鶏ガラを取り出し、塩と一緒に輪切りのデーツと里イモを鍋に入れ良くかき回しておいた。こっちはでき上がるまでしばらくかかるだろう。


 網焼きの方はでき上がってきて、いい匂いが漂い始めた。炭焼きなので実においしそうに肉が焼き上がった。


 焼き上がったイノシシ肉のスライスを一人2枚ずつ木皿に乗せて渡していった。


 最初はハーネス隊長。


「ほう、うまそうだ」


 次にカルヒ。


「……」


 予想通り。空いた金網には肉を乗せていく。


 そして、ナキアちゃんとキアリーちゃん。


「うまそうなのじゃ」


「ヘビやカエルより断然おいしそう」


 そして、わたし。塩加減は申し分なし。炭を買っててよかった。


 2巡目の肉を食べている頃スープの里イモにも火が通ったので、深皿にとってみんなに渡した。


 堅パンをハーネス隊長とカルヒが食べ始めたので、ナキアちゃんがちゃんと柔らかくしてやった。柔らかいパンを食べた隊長は感激していた。


 結局用意した肉を全部焼き、ホロホロ鳥とイノシシの肝臓と心臓も焼いたんだけど、残った肉は半分くらいで肝臓と心臓は3分の2くらいだった。パンを食べてスープも飲んでるけど、食べ過ぎじゃないかしら。


 残った肉と鍋に入ったスープはもちろんアイテムボックスにしまっている。


 片付けが終わったわたしたちはめいめい毛布を敷いて横になった。前回と同じなら、今夜またオーガの襲撃があるはずだ。


 今のわたしにとってオーガなどどうってことはないけど、目を閉じただけで寝られないまま横になっていたら、レーダーマップの端に赤い点が映った。同時にナビちゃんが『敵が現れました。数は4体です』と警告してくれた。前回はたしか5匹だったはずだから1匹減っている。昨日3匹たおしたおかげなのだろう。


 わたしは押し殺した声で「東方から何かが迫っている。数は4。距離は150歩」と告げた。


 ハーネス隊長以下4人はわたしの声を聞いてすぐに跳び起きた。


 ヘルメットと手袋はみんな外して寝ていたけどほかの防具は身につけたまま横になっている。みんな急いでヘルメットをかぶり手袋をはめ、おのおの武器を構えた。



 今回の隊形は、キアリーちゃんがナキアちゃんの前で、ナキアちゃんを挟んでカルヒ、ハーネス隊長。わたしはキアリーちゃんの2歩前。


       東

      わたし


     キアリーちゃん

 カルヒ ナキアちゃん ハーネス隊長




 前方から立ち木が折れたり引き裂かれるような音が近づいてきた。


 不射の射の構えを取って前方を睨んでいたら、星明りの中でモンスターの上半身が見えた。オーガだ。距離は60メートル。


「モンスターはオーガ。距離100歩。

 いきます!」


 見えない弦と矢から指を放した瞬間、オーガの頭が吹き飛び、その音がわずかに聞こえた。これで1匹。


 不射の射の構えでそのオーガの左右をのぞいたら、左右に1匹と2匹、横に広がってこちらに向かっているのが見えた。


 2射目、3射目、4射目。


 そこでわたしの頭の中にシステム音が響いた。レーダーマップ上赤い点はなくなった。戦闘終了だ。


『経験値が規定値に達しました。レベル34になりました。SSポイントを1獲得しました。精神力が+1されました。スピードが+1されました。巧みさが+1されました』


 ほんの10秒ほどで4匹のオーガをたおしてしまった。オーガの4匹や5匹なら簡単に撃破できる。数十匹全方位から押し寄せる飽和攻撃を受けない限りオーガなどはいい的に成り下がった。


「オーガ4体、全てたおしました」


 後ろに振り向いてハーネス隊長に報告した。


「もうたおしてしまったのか!?」


「シズカちゃん、ちょっとすごすぎなのじゃ」


「すごい」


「……」



「魔石を取ってきます」


 わたしはハーネス隊長にことわって、オーガの元に走った。


 昨日と同じで、4匹とも頭がきれいに吹き飛んでいた。


 暗がりのなか見当をつけてオーガの胸をムラサメ丸で割いて魔石を回収していった。


 すぐにみんながやってきて、「おおっ!」とか「今回も」とか「うわっ! 何かが上から垂れてきた!」とか言っていた。


 みんなが見守る中、10分ほどで魔石を全部回収し終わった。


 野営地に戻って、ヘルメットと手袋を取ったわたしたちは毛布の上に横になり夜明けまで眠った。


 寝る前に確かめたわたしのステータス。


レベル34

SS=25

力:33

知力:30

精神力:31

スピード:45

巧みさ:41

体力:37


HP=370

MP=600

スタミナ=370


<パッシブスキル>

ナビゲーター

取得経験値2倍

レベルアップ必要経験値2分の1


マッピング2(76パーセント)

識別2(65パーセント)

言語理解2(90パーセント)

気配察知1(90パーセント)

スニーク1(47パーセント)

弓術8(43パーセント)

剣術8(6パーセント)

威風(10パーセント)

即死


<アクティブスキル>

生活魔法1(37パーセント)

剣技『真空切り』

アドレナリン・ラッシュ

威圧

弓技『不射の射』


 2度目のオーガの襲撃を撃退し、魔石も回収したわたしは、夜明けまでの眠りについた。


[あとがき]

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https://kakuyomu.jp/works/1177354055157990850

転移とか転生ではないので、あたりまえの固有名詞のようなものが使えず少し書くのが大変だったものです。

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