第124話 ダンジョン1
ゆらぎを通ってナキアちゃんとキアリーちゃんがこちら側にやってきた。
「この先にも洞窟が続いておったのじゃな」
「ほんとだ。向こうの方、洞窟自体が光ってるのかな?」
さすがはキアリーちゃん。
「このランプの光じゃ向こうまで届かないから、そうだと思う」
「奇妙な洞窟なのじゃ」
奇妙な出入り口とか、洞窟自体の発光のことを考えるとこの洞窟は、見たことないけどダンジョンの可能性が高い。これでモンスターでも湧いて出てきたらダンジョン確定だ。
「ナキアちゃんもキアリーちゃんもダンジョンって聞いたことがないかな?」
「地下牢?」
「元はそんな意味だったみたいだけど、わたしの国サイタマではモンスターが湧いて出る特別で不思議な洞窟なんかをダンジョンと言っているんだよ」
「さすがは修羅の国なのじゃ」
わたしは修羅の国の住人認定されてしまった。弥生時代人から鎌倉武士に格上げされたかも?
「まだモンスターに出会っていないからダンジョンだとは言い切れないんだけどね」
わたしは警戒するためレーダーマップで通路の先を見たところ、どうもレーダーの有効範囲がかなり狭くなって100メートルくらいしかない。100メートルあれば十分と言えば十分なんだけど、やはりここは今までとは違う環境だと再認識した。
そう思った矢先、いきなり赤い点が3つマップ上に現れた。距離は90メートルくらい。向こうからやってきたんじゃなくて急に現れた感じだったんだけど、本当に湧いて出たのかもしれない。モンスターがダンジョンの適当なところから湧いて出るとかweb小説なんかで読んだことがあったから、そんなには驚かなかった。でも、いきなり至近からモンスターが現れたら嫌だよ。
「何かわからないんだけど何かがこっちに近づいてきてる。まだ遠いから近づいてくるまで待っていよう」
レーダーマップの赤い点はどんどん近づいて50メートルくらいまで迫ってきたけど視認できない。どういうこと?
「距離は90歩弱。見えないな」
「わらわも見えんのじゃ」「わたしも」
「とにかく適当に真空切りで切ってみる」
わたしはムラサメ丸を取り出し、鞘だけアイテムボックスに戻して両手で構え、レーダーマップ上の赤い点に向かって3度ムラサメ丸を振った。
見えない斬撃が確かに赤い点を捕えたハズだけど、赤い点は何事もなかったように近づいてくる。
「真空切りは効かなかったから、不射の射を試してみる。これが効かなかったらいったん戻ろう」
キアリーちゃんがナキアちゃんの前に立って盾を構えた。
ムラサメ丸を抜き身のままアイテムボックスにしまったわたしは不射の射の構えを取りレーダー射撃で3つの赤い点に向けて3射放った。
ドーン、ドーン、ドーン。
3度破壊音が響いてカラコロと吹き飛んだ小石が洞窟の底面に落っこちて転がる音がした。レーダーマップ上の3つの赤い点は消えていた。
「たおしたはずなんだけど、何をたおしたのか分からなかったから確かめに行こう」
不射の射で壁や底面を壊した辺りまで3人で急いでいったら、そこら辺にバケツで水をぶちまけたように洞窟が濡れていた。これはひょっとしてスライム?
「びちょびちょに濡れておるが血ではないようじゃ」
「触った感じちょっとヌルヌルする。クリン」とキアリーちゃん。変なものは素手で触らない方がいいと思うけど、何ともないみたいだからセーフだったんだろう。
赤い点でこんなところにいた以上モンスターに違いない。となるとこの洞窟はダンジョンと思って良さそうだ。そしてゴブリンでもないモンスターをたおした以上魔石がどこかに転がっているはず。でも不射の射で爆発しちゃったから魔石も粉々になっちゃったかもしれない。
「何だかわからないけどモンスターだったはずだから、どこかに魔石か魔石の
ランプを掲げてその辺りを3人で調べたら、ビー玉ぐらいの黒くて丸い球を見つけることができた。
「これって魔石だよね」
「そうじゃな」
意外と魔石ってじょうぶなんだ。その後もう少し探したら3個全部見つけることができた。
「生きておる間はどのような姿かたちをしておったのかは分からぬが、死ぬと水のようになってしまったのじゃな。変わったモンスターじゃ」
「ナキアちゃん。それってクラゲと一緒じゃないかな? クラゲのモンスターだったんだよ」
「わらわはクラゲの実物を見たことはまだないのじゃが、クラゲは海におる生き物なのじゃろ? それが洞窟の中をフラフラ浮かんでおったんじゃろか?」
「今のはスライムってモンスターだったんじゃないかな。体がゼリー状のモンスターで、いろんなものを溶かして食べちゃうっていう。それが透明で周りの岩と区別できなくて見つけられなかったんだと思う」
「それも
「それは物語の中にだけ出てくるモンスターなんだよ」
「物語の中にだけ出てくるモンスターが本当に出てきたということは、例えば物語の中だけにしか現れぬ
「そういった大きくて強そうなモンスターが出てくるかもしれないけれど、こんな入り口近くじゃなくって、そうとう奥の方、しかも広いところだと思うよ。ほら、ボスってもったいぶるのが好きそうじゃない」
「じゃあ、この洞窟というかダンジョンも奥の方まですごく長く続いてるのかな?」
「今のところはそうだとは言い切れないけれど多分そうなんじゃないかな。
ちょっと寄り道してこの洞窟を探検してみない?」
「馬車旅で退屈しておったところじゃから、ちょうどよいのじゃ」
「となると、防具なんかに着替えてからの方がいいよね」
「だね。
いったん外に出て着替えてからまたここにこようよ」
「そうじゃな」「うん」
「ここから転移で戻れるか試して見ようか?」
「いや、その前に、あの黒い板を何とかして通らなければならぬのではないか?」
「そうだね」
わたしたちは黒い板まで戻っていった。
「これは扉なんじゃろか?」
「開かなくてナキアちゃんとキアリーちゃんがこの板の中から急に現れたよ」
「ということは表側のゆらぎと同じで、そのまま通れるってことかな?」
「試して見よう」
わたしはゆらぎの時と同じように黒い板に向けて指を前に出していったら、水面の中に指を入てたように何の抵抗もなく黒い板の中に指が入っていった。引っこ抜いたら何事もなく指は元通りだった。
「ゆらぎと同じで抜けられるみたいだよ」
そう言ってわたしは黒い板の中に入っていき向こう側に抜け出た。振り返ったら岩壁の前にゆらぎがあった。その後すぐにナキアちゃんとキアリーちゃんがゆらぎからにゅるりと現れた。
転移が使えないと不便なので、試しにそこからスライムらしきものをたおした場所を思い描いて二人を連れて跳んだら、ちゃんと跳ぶことができた。そこから今度は馬車の前を意識して跳んだら馬車の前に戻ることができた。
「これならいつでも戻って来られるから、かなり奥の方までいけるね」
「馬車をここに置いておくのはちょっと心配じゃな」
「確かに」
「馬車の方はアイテムボックスにしまえるけど、シルバーとウーマはアイテムボックスに入らないから困ったね」
「シズカちゃんは、シルバーとウーマを連れて転移できる?」
「できると思う」
「そしたら、2頭をあの厩舎に預けたらいいんじゃないかな」
「そうだね。
今から探検はちょっと中途半端だから、ここで野営してシルバーとウーマは明日の朝預けに行って、それから洞窟探検しようか?」
「そうじゃな」「うん、そうしよう」
シルバーとウーマを3人で馬車から外してやり、その後はキアリーちゃんが面倒を見てやった。
わたしは水桶と飼葉桶にそれぞれ水と飼葉を入れてやった。飼葉桶の中にはサービスでニンジンを2本ずつ入れておいた。
その後は恒例のかまど作り。牛肉の野菜炒めが好評で何日か続いたので、今日は鶏肉を焼くことにした。スープは昨日の残りがまだあるので作らなくても済む。鶏肉の付け合わせにナスビを焼くことにした。鶏肉は縦に半分にして半身焼き、ナスビも縦に半分にして焼くことにした。
どうせなので鶏を3羽、まな板の上で縦に切って半身を6切れ作り塩コショウしておいた。ナスビの方は6本を半分に切っていったん水を入れた鍋の中に浮かべてアクをとっておいた。
半身焼きは時間がかかりそうだったので、ナキアちゃんが集めてきた枯れ枝の上に大目に木炭を乗っけて枯れ枝に火を点けた。
金網が温まったところで鶏の半身を並べていき、金網の空いたところにナスビを並べてやった。
そのうち、半身から脂が垂れ始めたので裏返し、先に焼き上がったナスビは皿にとった。
30分ほどかかって半身焼きもでき上った。
各自のお皿に半身焼きを乗っけ、付け合わせの半分に切ったナスビ2つ乗っけて軽く塩を振った。
次にスープを深皿に取り一応夕食の準備ができた。ナキアちゃんが柔らかくしてくれたパンも配られている。この日の飲み物は日本酒にした。最初の樽は空になったので2つ目の樽を飲んでいる。まだ樽の4分の3は残っているけどもう4分の3しか残っていない。
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