第150話 白玉1


 プリフディナスの生活を羨みながら露天風呂でお酒を飲んで極楽気分を味わった。


 宮殿に戻ってきたけどまだ時刻は9時半だった。明るくなると目が覚めて活動を開始する縄文人生活をしばらく続けていた弊害かもしれない。



 部屋の中には小さなテーブルに椅子が2つしかない。露天風呂から戻ったところでキアリーちゃんが自分の部屋から椅子を一つ持ってきて、3人でテーブルを囲んで駄弁り始めた。


「昼食までまだ2時間近くあるけどどうする?」


「さすがに風呂はもうよいから、何か面白い遊びでもないもんじゃろか?」


 うーん。遊びとなるとゲームとかかな。さすがのこの国でもテレビゲームはないと思うけど、リバーシとか定番ゲームは明日香が作っていそうな気がする。


 侍女を呼んで何かそれっぽいものがないか聞いてみよう。


「なにか面白そうなものがないか侍女に聞いてみようか」


 呼び鈴を押したらすぐに侍女がやってきた。


「何か部屋の中で遊べるものってないかな?」


「陛下がお作りになったリバーシというゲームがありますがそれは2人用です。あとはジェ〇ガという木でできたブロックを積み重ねたあと、一本ずつ順番に抜いていって崩したら負けというゲームがあります。ジェ〇ガは4、5人でふつう遊びますが、3人でもできます」


 リバーシは明日香に勝ったことないんだよね。わたしの場合、ナキアちゃんとキアリーちゃんがルールをちゃんと覚えてゲームに慣れてしまったら負けると思うんだよ。それはちょっと寂しいので、ジェ〇ガを持ってきてもらうことにした。


 侍女が箱に入ったジェ〇ガを持ってきてくれて、ルールを説明しましょうかと言ってくれたけど、わたしも知っているので断った。ブロックタワーを組み立てたあと、実演しながらナキアちゃんとキアリーちゃんにルールを説明した。


 実演中二人ともすごく真剣な目で見てた。最後に適当なところを引っこ抜いてブロックタワーが倒れたところで、再度組み立ててゲーム開始だ。


「ほーう。まずはやってみるのじゃ」


「じゃあ組み立てたわたしが最初で、次がナキアちゃん、それからキアリーちゃんの順番ね」


 わたしが真ん中あたりの一本を抜いて一番上に置いた。


「では、わらわは無難にここから抜いてやるのじゃ」


 ナキアちゃんが無難に比較的上の方から一本抜いてわたしが置いたブロックの隣りに置いた。


「じゃあ、わたしはここから」


 キアリーちゃんは大胆にも下から2段目のブロックに手をかけて抜こうとした。そしたらブロックタワーが揺れた。


「おおっと、危ない。これ抜いたら倒れないかな?」


「諦めて別のところから抜いてもいいんだからね」


「そうなんだ。でも、これに挑戦する!」


 キアリーちゃんは最初に狙ったブロックをゆっくり引き抜いていったもののそのブロックに上からの重みが乗っていたようで、上の方がズレていきとうとうブロックタワーが崩れてしまった。


「ギャー!」


「ヒャー!」


「アハハハ!」


「ヒャヒャヒャヒャ!」


 二人とも大笑いしてほんとに笑い転げてしまった。


 それから、2回戦目に突入。


 笑いをこらえきれなかったナキアちゃんが笑いながらブロックタワーを作ったんだけど1本目からブロックタワーを崩して終了。


 3回戦目。今度はキアリーちゃんが笑いをこらえながらブロックタワーを作り、前回同様下の方からブロックを抜こうとして、あえなくブロックタワーは崩壊。



 部屋中大笑いで大騒ぎ。


 この世界の人には刺激が強すぎたようだ。



 暇つぶしのつもりで始めたジェ〇ガで昼食に呼ばれるまで盛り上がってしまった。


 わたしたちが宮殿に戻ったとは言っていないけど、ここのセキュリティーは宮殿内での転移を監視しているという話だったからそこから連絡が関係各所に行ったんだろう。


 その日の昼食は同じ階にあった小食堂に案内された。メニューはうな重だった。山椒の粉も付いていて本格的。肝吸いもおいしかった。ここでも無駄に敗北感を感じながらおいしくいただいてしまった。


 昼食後、緑茶を3人で飲んでいたら、侍女がやってきて明日香が呼んでいるというので3人揃って侍女についていき、昨日の会議室に案内された。


 部屋の中には明日香がもう座っていた。テーブルの上には昨日わたしが渡した白玉が座布団の上に乗って置かれていた。


「もちろん完全じゃないけど、この玉のことがだいぶわかったわ」


 わたしたちが明日香の向かいにテーブルを挟んで並んで座ったら明日香が話し始めた。


「それで、何だったの?」


「結論から言って、純粋な魔力の塊。魔石はモンスターの体内で体液に魔力が沁み込むことで硬くなりそれがだんだんと成長していったものなんだって。そういう意味では魔石の中に蓄えられている魔力はそれほど大した量じゃないの。

 だけどこの白い玉は、魔力そのものがどういった方法でなのか分からないけれども結晶のように固まったものなんだそうよ。同じ大きさの魔石とこの白い玉の魔力量を比べると、最低でも1兆倍、もしかすれば1京倍なんだって」


「水爆級のエネルギーってことなのかな?」


「そうかもしれない。

 ある意味すごく危険な代物なのよ。こんなのが爆発すれば、この盆地が吹き飛んでしまうのは確実らしいよ。

 ということなので、静香のアイテムボックスの中にしまっておいてね」


 そう言われたわたしはすぐに白玉をアイテムボックスにしまった。


 アイテムボックスの中では時間が止まっているからまさか爆発はしないと思うけど、お尻の辺りがキュッとするような。


 ナキアちゃんとキアリーちゃんはボーっとした顔で明日香の説明を聞いていたけど、最後のプリフディナスの盆地が吹き飛ぶという話で幾分実感がわいたようだ。


「それは大ごとなのではないのか?」


「シズカちゃん、3つもアイテムボックスの中に入れてるけどだいじょうぶ」


「たぶん。

 だけど、なんでそんなものがあそこに3つ揃って置いてあったんだろう?」


「そもそもあのダンジョン。わらわたちのためにはかったようにお宝ザクザクじゃったものな」


「そうだよねー。あのヒールポーション最高だものね」


 キアリーちゃんは、ちょっと方向性が違うかのしれないけど、確かにわたしたちのためにあつらえたようなダンジョンのお宝だった。巨人をたおしたインスタントデスアローもあそこで手に入ったんだし。


「本当にわたしたちのために用意されたものだったとしたら、白玉もわたしたちのため? 3つあるから一人に一つずつってことなのかな?」


「わらわは持たなくてもよいのじゃ」


「わたしも」


「あなたたち3人のためじゃないと仮定して、3つの玉が必要なものって何か心当たりある? 特にとんでもなく大きな魔力が必要なもので」


「3つ。……、うーん」


「3つ。……、うーん」


「3つ。……、うーん。あっ! あった!」




[あとがき]

暇つぶしからひつまぶしを連想して昼食のメニューをうな重にしました。

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