第151話 白玉2、神殿へ


「ガーディアが崩壊せず形を保てているのは巫女たちの魔力で星をつなぎとめているからだとかアドミナが言ってたんだよ。もしかして、あの神殿の中の機械にくっ付いたケースの中で死んでいた3人の巫女の代わりになるんじゃ?」


「ああ、筒の中で真っ黒になっておったアレじゃな」


「あの筒って、開けられるのかな?」


「巫女の能力を持つ者が新たに現れたらあの死体と取り換えるって言ってたから開けられると思う」


「また巨人みたいなのが現れる前に、うまくいくか試した方がいいんじゃない」と、明日香。


「善は急げ、これから着替えていってみようか」


「そうじゃな」「そうしよう」


「わたしも興味があるから同行する。ジゼロンも連れて行った方が良さそうだから静香、ジゼロンも連れていってくれる?」


「いいよ。

 わたしたちが着替えたらどこに迎えにいけば良い?」


「そうね。わたしの私室に来てくれる? 人をやらなくても静香は転移で来られるでしょ?」


「いける」


「じゃあ、そうして」


「そういえばわたしたち3人は3人ともアイテムボックスの中に防具なんかも一式入れてるからどこでも着替えられるの。このまま4人で明日香の部屋に跳んでいってそこで着替えた方が早いよ」


「それでもいいわ」


 3人がわたしの手をそれぞれ取ったのでそのまま4人で明日香の部屋に跳んだ。


 そこでわたしたち3人は防具に着替えようとしていたら、明日香は角を外して角置きの上に置いた。ナキアちゃんとキアリーちゃんは驚いていたので角のことを簡単に説明しておいた。


 明日香は着ていたちょっと豪華なワンピースを脱いで、クローゼットの中からトレーニングウエァみたいな長袖の上着に長ズボンのパンツを出してそれを着た。サンダルから履き替えた足元はどう見てもランニングシューズだ。明日香は最後に頭の上に角を乗っけて着替え終わった。また微妙に敗北感を感じてしまった。


 4人全員の支度が終わったところで明日香が小ぶりな箪笥の上に2つ置かれた呼び鈴の内、小さい方の呼び鈴を鳴らした。5秒ほどしたらキンラメのちゃんちゃんこを着たジゼロンおじさんが部屋の中に現れた。


「陛下、お呼びでしょうか?」


「これからこの4人でダンジョンの中にある神殿まで行くんだけど、何が起こるか分からないし、あなたいろんな魔法が使えるから付いてきて」


「かしこまりました。ところで、ダンジョンというのは陛下の知識の中にあったあのダンジョンでしょうか?」


「そう、そのダンジョン。

 じゃあ、静香お願い」


「みんなわたしの手を取ってくれる? 神殿の中に直接転移する」


 4人の手がわたしの手を取ったところで、ダンジョンの神殿にあるあの銀色の円柱の手前に転移した。



「ふーん。これがそれか。実物は未来の機械っぽく見えるね」とか言いながら明日香はキンラメのちゃんちゃんこおじさんを連れて円柱の周りを一回りした。わたしたち3人は明日香たちを眺めていた。


「確かに12個ケースがあって。9個は生きてるけど3個は死んでる。

 ケースを開けるスイッチってどこかにあって欲しいけど、円柱はツルツルだものね。

 ジゼロン何か見つかった?」


「いえ、何も」


「ジゼロン、このケースを開ける魔法はないの?」


「さすがにそのような魔法はないのでは?」


「あなたは何でもできるようにわたしが召喚した最高の召喚獣・・・なんだから何とかしなさいよ」


「そうおっしゃられても」


「宝箱を開ける魔法ってあるんじゃないの?」


「そう言われればあったような。

 試してみましょうか?」


「やっちゃって」


「それでは、ノック。……」


 ノックとかいう魔法をジゼロンおじさんが黒くなったケースに向かってかけたら、ケースの中の黒く濁った液体がみるみるうちにどこかに排水されて、ケースの中がすっかりきれいになりケースの中はチューブにつながった黒いミイラだけになった。


 わたしたちがケースを囲んで黒いミイラを眺めていたら、神殿の表の方から何やら振動が響いてきた。


「なに?」


 神殿の入り口に立っている石柱の並びの隙間から外を見たら、神殿前の境内の先の広場の真ん中から真っ黒な柱が何本かせり上がってきていた。柱の数を数えたら5本あった。


 みんなで神殿の中から出て、真っ黒な柱がせり上がっていくのを眺めていたら、正確には分からないけれど高さが40メートルくらいになったところで上昇が止んだ。柱の一本一本は一辺20メートルほどの5角形の頂点に位置していた。これって、この前壊した円盤台の並びと同じだし、この前壊した円盤台の根っこの部分がせり上がったらこんな感じになるんじゃ?


「アレの根っこがそのまま上に上がったらこんな感じになるよね」


「そうじゃな」


 そんなことを言ってたら5つの柱の先端が青白く輝き始め、輝く先端から蒼白い稲妻が柱の囲む空間に放たれた。


「何が起こるんじゃろか?」


「壊した方が良くないかな」


「この状態の物を壊してだいじょうぶかな?」


 どうしようかと迷って結局何もせずに成り行きを見守っていたら、稲妻が何かの形を作り始めた。


 こうなってくると、その先を見たくなるのが人情だ。でもそこで思い出したんだけど、アレって一つ目の巨人が出てきたところにあったんだよね。


 稲妻は放たれ続け、その何かは意味のある形を取り始めた。柱の先端から放たれていた蒼白い稲妻が止んだとき、5本の柱が囲む空間にはあの一つ目の巨人が立っていた。悪い予感は当たるってことだ。


 でもわれにインスタントデスアローあり! そう思って烏殺とインスタントデスアローをアイテムボックスの中から取り出そうとしたら、明日香がジゼロンおじさんに命令した。


「ジゼロン、元の姿に戻っていいからあの巨人をたおしなさい」


「気は進みませんがやってみます。わたしにもしものことがあったら、わたしの部屋のものは中身を見ずに捨ててください」


「分かったから早くしなさい。巨人がこっちを睨んでるわよ」


 ジゼロンおじさんがわたしたちをねめつけている巨人の方に50メートルほど走っていきそこで立ち止まり両手を横に広げた。


 そうしたらジゼロンおじさんの金色のちゃんちゃんこが金色の光を放ち始めた。光はどんどん眩しくなっていき思わず目を閉じてしまった。光が止んだところで目を開けたらジゼロンおじさんの立っていたところに金色の翼を広げた金色のドラゴンが立っていた。巨人よりも少しだけ小さいところは今一だったけど単体で見ればド迫力だ。


「ジゼロンおじさんって金色のドラゴンだったの?」


「うん。ドラゴンの中でも最強と言われるエンシャント・ゴールドドラゴン。他のドラゴンと戦ったことはないから、最強なのかどうかは分からないけどね。今回コンバットプルーフできるんじゃない」


「もしジゼロンおじさんのエンシャント・ゴールドドラゴンが負けたらまずいんじゃないの?」


「痛いことは痛いけど、また召喚すればいいだけだからそこまで困らないわよ」


 二人はそんなドライな関係だったの? 確かジゼロンおじさん、エンシャント・ドラゴンが死んじゃったりしたら女王が悲しむとか言ってたような。まあいいけど。



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