第152話 白玉3、エンシャント・ゴールドドラゴン
[まえがき]
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目の前に自分と匹敵するほどの巨大な
ジゼロン・ドラゴンには羽が生えているので飛び上がることもできたんだろうけど、そうすると巨人がわたしたちのところに突っ込んでくるので敢えて巨人を受け止めた。
ジゼロン・ドラゴンは巨人のタックルに力負けすることなく、広場の真ん中まで巨人を押し戻した。そのせいで5本の円柱のうち3本が折れてしまった。
そこから殴り合いが始まった。ジゼロン・ドラゴンは巨人と比べ腕が短いためやや不利なのだが、一撃一撃が重いらしく
ジゼロン・ドラゴンと巨人の殴り合いがしばらく続いた。巨人はこのまま殴り合いを続けていれば不利となることを悟ったのか、巨人は素早くジゼロン・ドラゴンから一歩、二歩と後退して腰を沈めてジゼロン・ドラゴンに最初の時よりも力強いタックルを仕掛けた。普通の相手なら通用したかもしれないけれど、ジゼロン・ドラゴンはふわりと浮き上がり、かかとで巨人の頭を踏みつけて、巨人の後ろに着地した。
腰を落として前傾体勢で突進した巨人は頭を踏みつけられた拍子に、体勢を崩し数歩たたらを踏んだ。着地したジゼロン・ドラゴンは後ろを振り返ることなくしっぽで巨人の足を払ったことで、巨人は前のめりに倒れてしまった。巨人の顔がわたしたちの立っているところにかなり近づいてきた。何せ巨人の頭は大きいから感覚的にはかなり近いんだけど実際はそれほどでもなかったみたい。
ジゼロン・ドラゴンは余裕をもって振り向き、起き上がりかけた巨人の背後に詰め寄って両腕で巨人を羽交い絞めにした。
巨人を羽交い絞めにしたジゼロン・ドラゴンは翼をはためかせ巨人ごと浮き上がり300メートルはある天井近くまで上っていってそこで巨人から両手を離した。
巨人は宙を掴むように手を動かしていたけどそのまま広場の真ん中に仰向けに落っこちてまだ石畳からいくらか突き出ていた石柱の残りの部分をへし折った。巨人は墜落のダメージに耐えて死にはしなかったようだけどかなりのダメージを受けている。その巨人に向かって空中からジゼロン・ドラゴンが青白いブレスを浴びせた。
青白い炎に包まれた巨人はしばらくもがいていたけどそのうち動かなくなってしまった。それでも青白い炎は燃えていて、肉の焼かれる臭いがここまで漂ってきた。
ジゼロン・ドラゴンは圧倒的な強さだった。もちろんわたしたち3人でどうこうできるようなレベルでないことも良く分かった。最初からブレスを使っていればもっと早く勝負がついていたと思うんだけど、ウルトラの巨人同様ジゼロン・ドラゴンにもそれなりの事情があったのだと思っておこう。
巨人をたおしたジゼロン・ドラゴンがゆっくりと神殿の境内の上に舞い降りて金色の光に包まれ縮んでいきジゼロンおじさんの姿に戻った。
「ジゼロン。ご苦労さま。
さっさと作業の続きをするわよ」
明日香はジゼロンおじさんをこき使ってるように見えるんだけど。よそ様のことだから、別にいいけど。
『ジゼロンおじさん、少しかわいそうに見えるのじゃ』
『うん、そうだね』
ナキアちゃんたちもそう思ったみたい。
わたしたちは明日香とジゼロンおじさんの後について神殿の中に戻り例のケースの前に移動した。
「ジゼロン。もう一度ノックをかけたらケースが開くかもしれないからやってみて」
「はい。ノック」
そうしたら、明日香が言った通りケースの上蓋が円柱側を支点にして上に開いた。
「ジゼロン、やったじゃない」
「はあ。実感はありませんができましたね。
それで中に入っているこのミイラどうしましょうか?」
「ミイラにつながってるパイプは、栄養分とか排泄用のパイプだと思うけど、もう死んでるんだから気にせずパイプを体から引っこ抜いて、ミイラはどっかにやっちゃって」
ジゼロンおじさんがケースの底に横になっていたミイラにつながっていたパイプを引っこ抜いてからミイラを抱き上げ壁際まで持っていき、そこに丁寧に置いてやった。そしたら、みるみるうちにミイラは砂が崩れるように粉になってくずれていった。不思議なことにミイラが崩れてできた砂は少しずつ消えていきそのうち跡形もなくなった。
「死んだ後も装置につながって、文字通り全てが吸いつくされちゃったんだろうね。
静香、白玉をジゼロンに渡してくれる?」
アイテムボックスの中から白玉をジゼロンおじさんに渡した。
「ジゼロン、その玉をケースの中に入れてみて」
「チューブはつながなくていいですか?」
「チューブはどう見ても繋げないでしょ。穴がないんだから」
「おっしゃる通りです。ケースの底に置いておきます」
ジゼロンおじさんが白玉をケースの底に丁寧に置いた。
「これでよろしいですか?」
「そうね。あとはそのケースのフタを閉めれば何か起こると思うけど、ケースのフタを閉める魔法はないの?」
ないんじゃないかなー。
「さすがにそのような魔法はありませんから手でやってみます」
ジゼロンおじさんが上に開いたままになっていたフタに手をかけて下に引いたらフタは勝手にスーっと閉まった。どうやら正解だったらしい。
そのあと空気の抜ける音と一緒にケースの中に液体が流れ込んでケースは液体で満たされた。長い年月動いていなかったような機械のくせにちゃんと動くようだ。
感心していたら、白玉がケースの底から少し浮いて、そこで青白く光り始めた。ケースの中で眠る健全な巫女の青い光と同じに見える。これってやったんじゃない?
「明日香、うまくいったんじゃないかな?」
「うん。そんな感じだよね」
「ジゼロン、あとの2つも同じようにね」
「はい」
ジゼロンおじさんが2つ目ケースの中のミイラを取り出して片付けたところで2つ目の白玉を渡した。ジゼロンおじさんがケースを閉じたら、最初のケースと同じように液で満たされて白玉は青白く光り始めた。
ジゼロンおじさんが3つ目のケースからも同じようにミイラを取り出して白玉を置いた。これでガーディアを保つ機械は正常になったはずだけど確かめようがない。
「奥の間にあるガーディアの模型に何か変化があるかもしれないから見に行ってみようよ」
わたしが先頭に立って奥の壁にあるスイッチを操作して仕切りの壁を床に沈めた。
「大層な仕掛けだわね。
これがガーディアか。ふーん」と明日香がガーディアの立体映像を眺めて一言。
「そのうち測量用の飛行機を作ってこの世界の地図を作ろうと思ってたんだけど、こんな立体地図もいいわね。ジゼロン、あなたの魔法でこんなの作れない?」
「さすがにこれは無理かと」
「ジゼロン、あなた時間を見つけて魔法の精進した方がいいわよ」
「かしこまりました」
明日香は実際女王さまだけど、あの系統の女王さま気質も発揮してるよね。
それでこの立体模型なんだけど、前回4分の1くらい欠けてたところが少し盛り上がっているような。
「そう思わない?」
「そう言われればそんな気もしないではないのじゃが、はっきりとは分からんのじゃ」
「いや。確かに少しだけ盛り上がってる。多分だけど」
「これ以上どうしようもないから、様子を見るしかないんじゃないかな」
そう言葉に出したところで、いきなりわたしの意識だけあの真っ白い空間の中にいた。
そしてアドミナの声が意識の中で響いた。
『ありがとう。巫女の力を借りなくても宝珠の力でガーディアは安定します』
それだけでわたしの意識は元に戻った。
「今わたし一言だけアドミナの声を聞いたの。
巫女の力を借りなくても宝珠の力でガーディアは安定するんだって」
「それじゃあ、ミッションコンプリートってことだね」
「そう思う」
「巨人もモンスターの大群も現れなくなるのじゃな?」
「あの白玉があれば魔力がちゃんと循環するんだろうからそうなるんじゃないかな。
それじゃあ帰ろうか」
「静香、その前にヒールポーションの流れ出てる壁の場所を教えてよ」
「みんなで行こうか」
4人がわたしの手を取ったところで、あの部屋に転移した。
もちろん誰かがここを訪れた感じはない。
「これね。勢いよく出てるよね。
ジゼロン、あなたのアイテムボックスの中に直接取り込めない?」
「流れ出ているのを取り込むのは効率が悪そうなので池に溜まったものをアイテムボックスに入れてみます」
最初に池の中のヒールポーションが空になり、それから5分ほどでまた池の中が一杯になったところでジゼロンおじさんがアイテムボックスに収納した。入れ物なしでアイテムボックスに入れちゃったけれど、使う時難しそう。
ここに来ればいくらでも手に入るから、一度にたくさんは必要ないけどね。明日香のところではそのうち量産するといってたから、研究用にでも使うのかな?
「それじゃあ、宮殿に帰りましょう」
「わたしたちは部屋に戻るわ」
「ジゼロンとわたしは、わたしの部屋に戻るわ。今日の夕食でこの世界の復活のお祝いをしましょう。準備ができたら静香の部屋に人をやるわ」
「了解」
ジゼロンおじさんと明日香が消えて、わたしたちも宮殿の部屋の前に転移した。
[あとがき]
次話でシズカ編最終話となります。そのあと引き続き、明日香がガーディアに召喚されてから静香と再開するまでを描く明日香編となります。
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