第115話 これからのこと。
[まえがき]
ここからシズカ編完結の153話までが序破急で言うところの急って感じになります。近況ノートにも書きましたが、その後前日譚に相当する明日香編(おそらく十数話)になりますが、外伝とするかそのまま続けていくかは未定です。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
送別会が終わり侍女に伴われてわたし以外の4人は各自の部屋に戻った。わたしだけは侍女に連れられて明日香の私室に連れていかれた。
「静香、あなた転移術が使えるんだって?」
「もう聞いたんだ」
「それはそうでしょ」
「『転移術』のスキルがあるのを知ってすごく便利そうだったから取ったんだよ」
「スキルを取った?」
「そう、SSポイントで。ものすごく高くて50ポイントも使っちゃったけど、取った価値はあったわ」
「何それ?」
「あれ? 明日香SSポイント知らないの?」
「知らない」
「スキル・ステータスポイントって言って、ポイントを使えばステータスを上げたり、スキルを取ったりできるんだけど。ホントに明日香は知らないの?」
「わたしにはそんなの何もないよ。そもそもわたし明確なスキルなんてないし」
「じゃあ、わたしだけ? ジゼロンおじさんは『転移術』が使えるって言ってたからわたしもって思ったんだけど?」
「ジゼロンは召喚する時、便利能力マシマシになるようにって召喚したから。
召喚時能力を与えることはできても自分でスキルとかそういった物を手に入れることはできないはずよ。わたしは召喚する立場だからそういった能力なんて何もないの」
「そうなんだ。
女神さまは人によって差を付けてたってことだよね」
「うん。そういうことだと思う」
「なんでだろう?」
「静香とわたし、役割が違うからかもしれないけどね。
それはそうと、静香。向こうに帰ってもこっちに来るのよね」
「そのつもり。転移術が使えるようになったからいつでもここに跳んでこられるしね。
ジゼロンさんに3カ月後迎えに来てって頼んでたんだけど、必要なくなったからそう伝えておいて」
「分かった」
「適当な時に戻ってくるから、あの部屋わたしの部屋にしていいでしょ?」
「もちろんいいけど」
「じゃあそうする。
今思い付いたんだけど、わたしは向こうに帰ったら旅に出ようと思ってるんだ。いろいろあってお金もたくさん持ってるしね。この世界を満喫しなきゃ」
「それはいいわね。わたしも一緒に行きたいけど、ここを放ってはいけないから無理だな。こっちに戻って来た時旅の話を聞かせてよ」
「うん。
明日香はここで女王さま続けるのはいいとして、明日香はこの国をこの先どうしていこうと思っているの?」
「普通の国にしようと思ってる。
いまの国民のほとんどはわたしが召喚した魔族なんだけど、少しずつカップルが生まれて、そして子どもも生まれてきてるのよ。
だから、その子たちのためにも立派な国、豊かな国を作っていくつもり。
人族に対する領土的野心は全然ないけど、経済的な野心は持ってるの。とは言ってもまずは交易からだけどね。いちおう静香の国のドライグ王国にはそういったことも見据えて2年くらい前から拠点を構えてるんだよ」
「ふーん。そうなんだ。
わたし、縁があってドライグ王国の王都にある商業ギルドのギルド長のこと知ってるんだよ。何かあれば紹介しようか?」
「へー、静香ってこの世界にきてまだ2カ月くらいなんでしょ? よくそんな人と知り合いに成れたわね」
「追い剥ぎに襲われていたその人の息子夫婦と孫二人を助けたんだよ。助けた時はそんなこと知らなかったんだけどね」
「ふーん。なんだか、静香ってやけに運が良くない?」
「この世界に来る前、余ったSSポイントで運のステータスを上げてるから運はいいの」
「静香のSSポイントってホントにチートだよね。
そのSSポイントって使うのはいいとして使ったらなくなるんじゃない? どうにかすれば増えるんだよね?」
「モンスターをたおしているとそのうちレベルが上がって1レベルにつき1SSポイントもらえるんだよ」
「静香、レベルもあるんだ! わたしレベルもないよ」
「ほんと?」
「嘘言うわけないじゃない」
「ふーん。そうなんだ。
わたしは生きてさえいればいいって女神さまに言われてたんだけど、モンスターに殺された時生きていくって簡単じゃないって思ったんだよ。やり直した今はイージーモードだものね」
「何にせよ、いわばあの世で再会できたって奇跡だよね。でもそれも静香の運のおかげだったのかもしれないけど不思議だよね」
「そうだね。
じゃあわたしはそろそろ部屋に帰る」
「送っていくよう侍女を呼ぶから待ってて」
「転移で戻るからだいじょうぶ」
「そうだったわね。いいなー」
「あはは。じゃあね」
転移で部屋に帰って部屋着に着替えていたら、扉がノックされた。
『シズカちゃん、わらわたちじゃ』
「今開ける」
ナキアちゃんとキアリーちゃんが立っていた。
「どうしたの?」
「シズカちゃんに頼みがあってキアリーちゃんと一緒にきたのじゃ」
「頼みって?」
「クローゼットの中の服を全部持って帰りたいのじゃが、リュックに入りきらなかったのじゃ。シズカちゃんのアイテムボックスにまだ空きがあるようなら入れてもらいたいのじゃ」
「空きならたくさんあるからだいじょうぶ。
順番に入れていってあげる」
先にキアリーちゃんの部屋に行き、クローゼットの中に入っていた衣装や靴、それにタンスに入っていた下着なんかを全部アイテムボックスの中に収納した。
「すごい!」
「つぎはナキアちゃん」
ナキアちゃんの部屋でも同じように衣装と靴と下着なんかを全部アイテムボックスにしまっておいた。
「しっかし、シズカちゃんのアイテムボックスはすごいのじゃ」
「ほんとだね」
「えへへへ。
これで片付いたから、まだ早いし、少し飲んでから寝ようか」
「そうじゃな」
「賛成!」
そういうことで、酒盛りを始めてしまった。
「あの濃い方の白い酒が欲しいのじゃが、どうにかならんじゃろうか?」
「あれおいしかったね。今日飲んだ薄い方の白いお酒も良かったよ」
「どっちも欲しいのじゃ」
「この国と交易が始まれば手に入るようになると思うよ」
「なるほど。交易となると商会が活躍するわけじゃろうから、あの商会を手放したのは失敗じゃったか?」
「わたしたちじゃ商会なんて切り盛りできないからあれはあれでよかったと思うよ。仕事に付き合ってたら遊べなくなるし」
「これ以上金を貯める必要もないのじゃから、そうじゃったな」
「モンスターの脅威も無くなるわけだから、わたしたちが国に戻ったら調査隊は解散すると思うけど、そしたら二人はどうするの?」
「カディフに帰って、今まで通り過ごすことになるんじゃろうな」
「そう思う」
「そういうシズカちゃんはどうするのじゃ?」
「わたし遠い国からあの国にやってきたんだけど、王都とブレスカしか見ていないから旅に出ようと思ってるの」
「それは面白そうなのじゃ。わらわも一緒に行きたいのじゃ」
「わたしも一緒」
「なら、馬車を買って3人で旅しない?」
「そうするのじゃ」
「賛成!」
「ナキアちゃん。カディフの誰かに旅に出るって知らせなくていいの?」
「そうじゃった。知らせておかねば心配する者もおるので一度カディフに帰った方がいいじゃろう。王都にあるカディフの公邸に一言言っておけばそれですむのじゃがな。荷物も置いておるので公邸には顔を出す必要はあるのじゃし」
「公邸は別にしても、王都で馬車を買って、ゆっくりカディフに行こうよ。わたしもカディフを見てみたいし」
「そうじゃな」
「そうだね」
わたしたちの帰国後の予定が決まった。幌馬車を買って少し手を加えたりすればキャンピングカーだ。夢が広がる。馬車旅、なんだか楽しそう。
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