2.5 東京

 悪い夢を見た。

 悪い夢を見た。


 でも、僕は知っている。これが本当だってことを。


 思い出したくないんだ。本当のことは知りたくないんだ。

 だから、話しかけないでほしい。僕に話しかけないでほしい。一生、永遠に目をつむって生きていたいんだ。


 みんなだってそうだよね。きっとそうだよね。僕みたいな人って案外多いと思うんだ。


 康太郎の頬を涙がつたった。


 また、思い出してしまった。忘れていたいのに。自分が自分であることからは、逃れられないね。誰も。


 康太郎は、自分の部屋の窓の近くまで歩いていくと、窓を開けて外を眺めた。

 東京の夕方は、とても寂しくて、たくさんの人の独り言が、自然と耳の中に流れ込んでくるようだった。

 赤い夕陽が、東京タワーを照らして、六本木ヒルズの周りは笑顔ではしゃぐOLや、スーツ姿のサラリーマンで賑わっていた。


 パソコンとタブレットを片手に仕事の話に夢中だ。

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