11 諫め
「ルシファー。何故、貴様がここにいる?」
天使の中の一人が男に向かって言った。赤髪で燃えるような瞳をした天使だ。
「いや違ったか。こんな品格のない風貌でもないし、背が少し彼より低いな」
赤髪の天使は独り言のように呟いた。
男はその天使を睨んだ。
「なんだ人間風情が」
リアと康太郎の手を握り、上空から天使と男のやり取りを見守っていたもう一人の天使は、地上へ二人を下ろすと、赤髪の天使の下へ飛んでいった。
「神は等しく平等に、どの存在にも侵すべからざる自由と、その存在における思想と発想の自由を与えた」
赤髪の天使を諭すもう一人の天使。
「戯言をぬかすか。卑賎を擁護する者、アザゼル」
アザゼルと呼ばれたその天使は、ただ穏やかに笑みを浮かべて、赤髪の天使を見つめた。
「ミカエル。そんなに人間を憎むな」
アザゼルはミカエルに歩み寄ると、軽くミカエルの肩をたたいた。
怒りに燃えた表情でアザゼルを睨み、手から衝撃波を放ちアザゼルを攻撃するミカエル。アザゼルは身を翻し、ミカエルの背後に瞬時に移動した。背後の気配に気づいたミカエルは、左手で後ろに振り向きざま一撃を見舞ったが、アザゼルの姿はなかった。
懐に飛び込んだアザゼルの両手が、ミカエルの腹部に衝撃波を見舞う。
塔の彼方に吹き飛び、ミカエルの姿は消えた。
「ああ、もう駄目だ。エル家とゼル家で戦争になってしまう。みんな、引き上げてウリエル様に報告しよう。これ以上これには、かかわらないほうがいい」
天使たちは口々に言い合うと、アザゼルを尻目に引き上げていった。
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