126 増殖

「おかしいな。一向に数が減らない。むしろ増えている気がする」

 ウリエルから意図せず思念波が漏れる。


 惑星上に生み出された二足歩行生物と宇宙空間に漂う柱を破壊し、それらに囚われた仲間を解放する作業に従事していたウリエルとラファエルであったが、それらの数が減少する気配は全く見られなかった。


「まさか。もう一体いるのか」

 ラファエルが疑念の波長を発する。

「いや、この増殖具合から見て、一体では済まされない可能性がある」

 ラファエルに思念波を返すウリエル。

 二人は一旦、柱と二足歩行生物の破壊を止め、不法系外来種族を捜索した。


 “それ”は空星の公転軌道上にいた。


「おい。お前」

 “それ”に向けて思念波を飛ばすラファエル。

 “それ”は意識をウリエルとラファエルに向けて近づいてきた。

 先ほどまで“それ”が放出していた幾つもの柱が宇宙を漂い離れていく。


 “それ”が発する波長は荒く、話が通じるかどうかが危ぶまれた。


「どこから来た」

 ウリエルの思念波に“それ”は答えず、一定の距離を保ちウリエルとラファエルに意識を向けたまま宇宙空間に静止した。


 不意に衝撃が走ったと思った時にはもう遅かった。

 二人は柱に取り込まれ、宇宙空間に浮遊していた。


 もう一体の不法系外来種族が、空星の陰から姿を現した。

「もうここしかないんだ。居場所が。俺達を追い出さないでくれ。虐めないでくれ。お前は知っているか。この宇宙の孤独を。恒星系と恒星系、銀河と銀河の間にある無を。ただただ広がる漆黒の宇宙空間に横たわる絶対的な孤独を」


「知ったことか。ここから出せ。これを破壊しろ」

 二体目の不法系外来種族は、ラファエルの思念波を無視して、もう一体の不法系外来種族と、柱と二足歩行生物の創造に取り掛かった。


 その二体は空星へと向かって姿を消した。

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