6 歩きはじめる

「ここは何処だ」

 康太郎が聞いた。

「知らない」

 リアは腕を組みながら、上半身をゆらゆら揺らし、おどけて見せた。

「これは夢の中だ。幻覚だ。目を覚ますにはどうしたらいいんだ。現実に戻りたい」

「本当に? ダメ、ずっとここにいて」

「お前は外に出たくないのか?」

 リアは突然、視線を床に落とすと、俯き黒髪を揺らしながら泣き始めた。

「なんでそんなこと言うの」

「ただ聞いてみただけだろ。なんで泣くんだよ」

「とにかく出ようよ」

「私もいっしょに連れてってくれるの?」


 康太郎はリアに背を向けて小さくうなずいた。

 リアは駆け寄って、背後から康太郎に抱き着いた。

「行こう」

 康太郎はそう言うと、リアの手を握って歩き始めた。

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