39 探し人

「見つけましたよ。あなたが探していた人。たぶん本人です」

 女の声がする。

 

 薄暗い部屋に幾つものモニターが並んでいる。広い壁一面に19インチの画面が敷き詰められている。



 ようやく見つけた…



 イピテル発見の報告に胸をなでおろす男。

 報告を受けた男が礼を述べると、女は部屋を後にした。



 監視ポイントは全部で7万箇所。しかし今だにミカエルらの、所在は特定できていない。

 あの大災厄の後、ミカエルらの召喚場所がエル家の地下深くだということは突き止めたが、既にミカエルらはエル家の家臣によって、火星に飛ばされていた。

 長い歳月の拷問にも、エル家の家臣は口を割らなかった。その後、”科学”というものが発達し、天使の異能力と科学を合わせ、人間の記憶を読み取る技術を開発。

 

 エル家の家臣の記憶を読み取り、火星の地下深くにミカエルらの依り代となる肉体があると分かった。

 

 調査隊と武装隊を派遣する。

 

 それはあった。


 人一人、入れるサイズの浴槽型のカプセルが無数に並ぶ、地下10キロメートルに建造されたドーム。その中に目を閉じた肉体が、溶液に浸かって浮かんでいた。


 ほとんどのカプセルの開口部分は閉じていたが、内4つのカプセルの上部が開口しており、その4つだけ中に浸かっているはずの肉体がなかった。


 

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