133 現時点
目を開くと見慣れた光景が視界に映りこんだ。
リュナがこっちを見ている。
ポコは大きく息を吸い込み、溜め息をついた。
「彼らは失敗した。太陽系から脱出する前に大群が太陽系に到達してしまったんだ。後は柱と二足歩行生物が溢れ返り、それを生み出した狂神すら飲み込んで、人間はどんどん増えていった。
そしていつしか、自分が何者なのかも忘れてしまったのかもしれない。
僕とルシファーを追放した光球の力で、きっとアンタレスは回復した。
その後も、恐らく、アンタレスで創造に憑りつかれた狂神が現れるたび、この太陽系やそれに類する恒星系に追放されたんだと思う。
記憶を消され、人工人格を植え付けられた僕とルシファーは、人間と狂神の溢れ返った太陽系に放逐され、それまでの自分を捨て別の存在として生き始めた」
カーテンが少し揺れると、開いた窓から無限に広がる灰色の大地が見えた。太陽に熱せられ陽炎が立ち上っている。
リュナは黙って話を聞いていた。
ゆっくりと頷くリュナ。
そして、揺れるカーテンの向こうに広がる景色に目をやった。
しばらく二人は何も話さずに、灰色の大地と、まばらに生い茂る雑草が風に揺れるのを眺めていた。
「時間だ」
先に口を開いたのはポコの方だった。
「そうね。またいらっしゃい」
ポコは首を縦に振ると部屋を出た。
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