18 老人の家

「なぜ、私の強さが分かったのですか」

アザゼルが、オミトと名乗った老人に聞いた。

囲炉裏いろりを囲んで二人は向かい合って座っていた。

「今でこそ、こんな老いぼれじゃが、昔はこれでも大陸一帯でわしの名を知らぬ者はおらぬほどの剣使いじゃった。一目見ただけで、その者の強さは大体わかるものじゃ」

「天使を見たことはありますか」

「突然何を言い出すかと思えば」

「天使はないが悪魔ならある。この地は八本腕の神によって守られておるよって、悪魔は近寄ってこぬが、山脈と大森林に囲まれた、この地の外側には、若い娘をさらい生贄と人間の血に飢えた悪魔がおる。わしも小さい頃、山脈で遭難した時、見たことがある。白い翼を生やし、燃えるような赤い瞳と赤い髪をした悪魔じゃった」

「赤い瞳と赤い髪?どこで見たんですか」

「ここから北東に、一週間ほど歩いたところにあるモレンナ山脈じゃ。お主なら三、四日で着くじゃろう」

「ありがとうございます」

そう言うと、アザゼルは立ち上がった。

「おう、待たんかい。そんなに急ぐこともなかろう。わしも強い奴は好きじゃ。武勇伝の一つや二つ、聞かせて言ってはくれぬかの」

「いえ、急いでいますので」

そう言うとアザゼルは、老人の家を出ていった。

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