24 オシュドナガの家

オシュドナガの家は、藁の家を二つくっつけたような形になっていた。


入口からすぐの部屋が半球上の空間になっており、そのすぐ奥に同じ形状の部屋がつながっていた。


奥の部屋にその男はいた。血はすべて拭き取られており、特に怯えている様子もなかった。

「ケガによるものではないようです」

男の傍らにいたオシュドナガと思しき男が言った。

「血の雨を浴びたと言っています」

「ここがソムドですか?」

男が聞いてきた。

「あんた名前は」

ロボルガリが聞き返した。

「パウです」

「ソムド?この集落の名前のことを言っているのか?ここはベラエリカの村だ」

パウは俯き涙を流した。

「たどり着けなかった」

パウが呟いた。

「いや、モレンナ山脈とイシュの大森林に隔絶されたこの地方と、その外側ではそもそも土地の呼び方が違うのかもしれない」


パウは突然、床に頭を打ち付け拳で床を何度も何度も殴り始めた。男の叫びが部屋の中に充満した。

掴みかかったり殴りかかってくるわけではなく、男はただ自傷的な行為を激しく繰り返すだけだった。

「やめろ。腕がだめになる。せっかく拾った命なんだ。大事にしろよ」

ロボルガリがパウの腕を掴んだ。

パウは泣き叫んだ。


「くそ! 助けられなかった。自分だけ逃げ延びてしまった」

パウは唇をかんだ。

「私は臆病者です。仲間が、家族が、悪魔に食い殺されているのに、助けることができなかった。命を投げ出して守ってやるべきだったのに、見捨てたんだ」

ロボルガリ達は何も言わずパウを見た。

「おちつけよ。責めたいだけ自分を責めて、気が済んだらゆっくりと、今後のことは考えればいい。あまり自分を傷つけるな」

パウの涙は止まらなかった。誰も彼の心を癒すことはできなかった。

何時間も泣き続け、疲れ果てると、パウはその場で寝入ってしまった。

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