121 過去

「それじゃ、始めましょう」

 ポコは目を閉じて背もたれに身を預けた。

「アマナさんのところではどれくらい思い出せたの」

「昔の名前と自分がしたことです」

「思い出せる一番過去の記憶は?」

 ポコの表情が歪む。

「わからないな…光が満ちた部屋…これが…最後の記憶…わからない…」


 光が溢れた白い空間。おぼろげにポコの脳裏に浮かぶ見覚えのない光景。

『お前たちはそこへ戻れ。そしてここで起きたことを忘れる』

 記憶の中のポコは意識が朦朧としており、視界も定かではなかった。声の主の姿や顔も思い出せない。ぼんやりと声が頭の中で響いている。


 気が付いたら玉座に座っていた。

 いわれのない怒りがこみあげてくる。


 そこへ呼ばれた時、いやな予感がした。十分に警戒したつもりだったが相手が悪かった。ただその思いだけが残っている。


 呼ばれた私と仲間は眠らされ何かを植え付けられた。

 自分が自分でなくなっていくのがわかる。


 怒りと破壊の衝動、今までに感じたことのないすべてを滅ぼしたいという欲求が、自分の中に芽生えるのを感じた。

 そうか、何かに逆らったからか。それで呼ばれ、偽りの人格を植え付けられ、その出来事自体は記憶から消去。送り返されたのか。


 殺してやる。許さない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る