154 宇宙災害対策機構

 男は帰っていった。


 あれが仕組まれたものであろうとなんであろうと、今の私には全く関係のないことだ。彼らに任せておけばいい。

 山小屋の主はそう思った。


 幾つもの年月が流れ、何度かの肉体の交換を行い、ただ時は流れていった。


 もし、あの柱と二足歩行の生物の蔓延が、仕組まれたものだとして、仕組んだ者たちは今どこで何をしているのだろうか。

 最後のアンタレスの醜態的文明の崩壊は私がもたらした。あまりに堕落した人間を滅ぼし、同じように堕落してしまった自分自身を戒めるために。


 そして彼らは、アンタレス恒星系を去っていった。まあ、同じような手法で他の恒星系や銀河系の侵略を試みているのだろう。

 この恒星系には、あの三人がいる。心配ない。




§§§




 地球

 人工島日本島

 東京

 新宿区

 SDCO JAPAN

(Space Disaster Countermeasures Organization:宇宙災害対策機構)



「調査によると、およそ一億九千万九千九百年前、アンタレス恒星系に人間が攻撃を仕掛けました」

 会議室で説明するルフレル。

「アンタレスの肉体を持たない種族は、最終的に空間創造魔法を常時発動することで、アンタレス恒星系を覆うように長大な距離を出現させました。出現し続ける空間によって、アンタレスへの接触と攻撃が不可能な状況に追い込んだわけです。これにより、アンタレスには平和がもたらされましたが、その攻撃から九千年後、二足歩行の生物と柱がアンタレスに蔓延しました。彼らはこれが人為的に作り出されたものだということに気づきませんでした。

 これはアンタレス内部に存在した悪意ある者が、九千年前に撃退した人間と結託した結果もたらされたものです。これらの蔓延の真の原因を突き止められないまま、アンタレスの肉体を持たない種族は、柱や肉体に取り込まれ人間化していきました。人間化は自由自在な可動性と、魂が本来持っている能力、記憶の喪失をもたらしました。

 これがより、人間化したアンタレス族を洗脳しやすい状況へと追いやりました。人間と内通した悪意ある者は、長い時間をかけ元からいたアンタレス族と、人間化したアンタレス族が対立するように仕向け、二つに分断させられた種族の争いは白熱していきました。

 これらの過程で、柱と肉体の創造に憑りつかれる狂創病も並行して蔓延し、アンタレスを混沌と無秩序が支配し、否応なしに狂神追放令は可決されました。狂創病も当然、人工的に造りだされたものです。これが、太陽系を含むいくつかの恒星系に影響を与えました」

 ルフレルは、テーブルの上に置かれたペットボトルの水を一口含んだ。

「九千万年前、ルシファーとミカエルがアンタレスに到着した頃には、光球によってすべての人間は滅ぼされており、僅かに残った肉体を持たない種族もアンタレス恒星系外に追放されていました。アンタレスに残った残留思念と光球、収監ナンバーAaあ子00000000の記憶を照合した結果、判明した事実の概要は以上です」

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