12 その後
その後も引き続き天使たちは、人間の列の前に立ち次々と歩み出る人間たちの頭上に手をかざしては、人間を消し去っていた。
先ほどまで、アザゼルとミカエルの格闘に騒いでいた警護の天使たちも、どこかへ行ってしまった。
「すまない。ありがとう。助かった」
青い目の男がアザゼルに言った。
「何を話していたんだ?」
アザゼルが青い目の男に話しかけた瞬間、男の姿が消えた。男の体は数十メートル先に吹っ飛んでいた。
ミカエルの蹴りを左腕で受け止めるアザゼルの姿。
「面白いことをしてくれるじゃないか」
笑いながら、アザゼルの喉元に手刀を突き刺すミカエル。アザゼルの残像だけがその場に残っていた。
「同じ手は食わん」
すぐさま、ミカエルは背後に後ろ蹴りを見舞った。ミカエルの蹴りを両腕で受け止めるアザゼル。蹴りの衝撃でアザゼルは吹き飛んだが、宙返りをするとすぐさま方向転換し、ミカエルのもとに飛翔した。
アザゼルの姿が消えた。
「だから、何度も何度も、バカの一つ覚えみたいな同じ手は食わないんだよ。俺を愚弄しているのか」
ミカエルが後ろを振り返り、一撃を見舞ったがそこにアザゼルの姿はなかった。ミカエルは嘲り、自分の腹部を防御した。アザゼルの渾身の一撃を受け止め切ったミカエルは、瞬時にアザゼルの背後に回り込み、首を両腕で羽交い絞めにした。アザゼルは呻き白目をむいた。
「やめろ!」
二人のもとに走りながら叫ぶ、吹き飛ばされた男の姿があった。
アザゼルは、一瞬気を取られたミカエルの隙を逃さず腕を振りほどき、足払いでミカエルの体制を崩し喉元に手刀を打ち込んだ。アザゼルの手刀を白刃取りで受け止めるミカエル。
そのまま腕ごとねじり回し、腕を掴まれたまま上下さかさまになって旋回したアザゼルを、ミカエルの無数の拳が襲った。
アザゼルは吹き飛んだ。意識が眩む中、既に背後に回り込んでいたミカエルが放った無数の衝撃波がアザゼルを襲う。
地面に、仰向けになって倒れたアザゼルのもとに降り立つと、ミカエルはアザゼルの喉に手刀を放った。
血飛沫が上がった。
青い目の男が交差させた両腕で、ミカエルの一撃を受け止めていた。
手刀から腕を引き抜くと男は飛び上がり、ミカエルの顔面めがけて飛び蹴りを食らわせた。男の飛び蹴りは、ミカエルの顔面を直撃したが、ミカエルは表情を変えず微動だにしなかった。
ミカエルは、ゆっくりと右腕で男の足をつかむと、そのまま男の身体を振り上げて地面にたたきつけた。
男は、地に伏せたまま血を吐いた。
「やはりこの姿ではきついか…」
身体が膨らみ、背中から翼を生やす男。体中が光り、頭上に輪状の光が現れ、男の咆哮が建物中に響き渡ると、身体から発せられた無数の衝撃波が、同心円状に放たれた。
ミシミシと音をたて左右の腕の付け根から肌を突き破って生えた新しい腕。八本の腕が獲物を探すかのように宙を漂っている。
異形の存在になった男は頭上の光輪から迸る光と衝撃波を放った。
それらを
男の八本の腕が、それらの攻撃をすべて薙ぎ払った。ミカエルの眉間にしわが寄る。ミカエルの衝撃波の連弾と、拳や蹴りのラッシュが男を襲ったが、男はすべてそれらを受け切ってしまった。
「バカな」
目を見開くミカエル。
「あの星の人間を開放しろ」
男が言った。
「俺は知っている。あの惑星の住人は、すべて元はお前たちと同じ天使だ。何か理由があって記憶を消し、翼と光輪を奪い人間にされ追放されたのだろう。違うか?」
ミカエルは怒りに燃え、衝撃波と拳を異形に何発も撃ち込んだが、異形は身を翻しすべての攻撃をかわした。
「お前、何者だ」
ミカエルの問いには答えず、異形が右腕で薙ぎ払うと、ミカエルは吹き飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます