31 降下
藁ぶきの円錐形の小さな平屋に、高床式の木造家屋が連なった家の外。切り株のテーブルを囲んでお茶を飲んでいるのは、オミトとロボルガリ達だった。畑仕事の後の人息をついているようだ。
「どれくらいで来るんだろうな」
ロボルガリが宙を見ながら、誰にともなく問いかける。
「もうじき来るじゃろうて」
オミトは茶葉の入った器にお湯を注ぎながら答えた。
空が光った。
光の筋が草原に伸び、二つの光球が下降していくのを見て走り出すロボルガリ。オミト、べロスガリア達もその後に続いて走り出した。
§§§
光球が落下した辺りから、光の霧が立ち昇っている。霞がかった視界の向こうに二つの人影が見えた。
長身で白銀の髪。一重の目。アザゼルがそこにいた。
「そっちの人は?」
ロボルガリがイピテルを指差した。
「そうか、新しい身体で、向こうで目覚めたからな。私だよ」
「イピテル様?!」
「そうだ」
「だいぶ変わりましたね」
「体は変わっても中身は一緒だ」
「前はがっちりした巨人みたいだったのに。今は、ただの人間にしか見えないですね」
異形の姿から人間の姿に戻ったイピテルの容姿は、中肉中背で、長くも短くもなく切り揃えられた黒髪。特徴と言えるのは青く澄んだ瞳くらいだった。
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