叫びの星

93 きっかけ

　持論を親友の松木大輔（まつきだいすけ）に熱弁した赤坂真太郎（あかさかしんたろう）は、ついさっき話したばかりの内容を他のゼミ生の前で披露した。

　反応はまずまずだった。

「先生の『見えざる扇動者』理論を応用したのか。もっと証拠文献は必要だけどなかなか面白い着眼点だと思うよ」

　と他のゼミ生が言っていた。

　個人個人の対立から国家間の対立までそれらすべては、対立している二者に原因があるのではなく、見えない第三者によって引き起こされている。

　それが、炎堂刃流浪（えんどう　はるろう）教授が提唱した『見えざる扇動者』理論だった。

§§§

　自宅に帰りパソコンの電源を入れ立ち上げると、赤坂は自分が運営している『世界史探訪』というブログにログインした。

　ダイレクトメッセージが届いていた。

『間部（まべ）です。今回も楽しく読まさせていただきました！　フランス革命をそう捉えますか…　お見事！』

　間部とは半年くらい前からブログのダイレクトメッセージでやり取りをしていて、赤坂の運営する『世界史探訪』の愛読者だった。

　音楽や読書、漫画、アニメ、YouTube等、共通の趣味も多く、歴史や陰謀論以外の話題でも盛り上がることが多かった。

『どうでしょうか？　先日の件、考えてくれましたか？』

『よろしくお願いします』

　間部はいくつか会社を経営していた。飲食チェーンの運営会社やウェブマーケティングの会社の役員をしており、経営論関係の書籍も出版していた。

　赤坂の『世界史探訪』を気に入った間部は、知り合いの出版社の編集者に『世界史探訪』のことを話し、赤坂がその気なら『世界史探訪』を書籍化する企画を立ち上げてもいい、という話を取り付けてくれたのだった。