85 啓発

 アメリカ合衆国 

 コロンビア特別区 ワシントン市 

 ヘデンフィガース ストリート


 NASA本部 長官室


 革張りのオフィスチェアに座った長官トーマス・ドライデンの前に、副長官のリチャード・ボールデン、宇宙科学局 チーフエンジニアのポール・ハリソンが机を挟んで立っていた。


 部屋の中が眩しさに包まれると、もう一つ光輝いた人影が現れた。

 白銀の長髪が光と共に現れた疾風になびいている。

「私を信じてくれてありがとう」

 アザゼルは軽く頭を下げた。


「今でも信じられん」


「で、要求は何だ」


「いえ、そんな表情をされなくても。私はあなた方を脅しているわけではないのです。あなた方が管制室のモニターで見た、人影の正体が何なのかもうお分かりですね」


 ドライデンは黙って眉間にシワを寄せアザゼルを見つめた。


「あれは一瞬でこの星の人間を滅ぼす力を持っています。この星の人間が力を合わせ、立ち向かっても勝てるかどうかわかりません。奴の気まぐれによって偶然生きながらえているだけです。

 ただ、ほとんど勝つ見込みのない戦いとはいえ、勝つ確率を上げる努力はするべきですし、その手段、方法を私は知っています。私はあなた方の力になれます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る