9 案内人

 飛び交う小型の飛空艇に交じって、一人の天使が、都市の上空を旋回していた。


 天使はリアと康太郎のもとに降りてきた。

「迷い人だね」

 天使は二人に視線を向けた。

「案内するよ」

 天使はそう言うと、二人の手をつかみ、空に向かって浮かび上がった。

 二人は重力の束縛から解かれ、天使の手から伝わってくる不思議な力に身を委ねた。


 天使とリア、康太郎は上空から都市を眺めた。

「あれがオルベルトの塔」

 天使が眼下にそびえる塔を指差した。塔の最上部からは、無数の光線が上空に向かって伸びていた。

「あそこから、他のところからやってきた人間たちが、再びたくさんの惑星に送り込まれるんだ。行ってみるかい?」


 二人はうなずいた。


 最上階には上位天使が89人おり、その一人一人の前に長蛇の列が続いていた。

 塔の最上階は、先ほどまで二人がいた白亜の空間と同じくらい広く、ワンフロアが一つの都市と言っても過言ではない広さだった。端から端まで到達するには徒歩で一ヵ月はかかるだろう。ここで生まれた人間は、外に出るまで、ここが構造物の最上階であることに気付くこともないだろう。


 並んでいる人間たちは、一人一人、上位天使の前に進み出た。

 上位天使が、人間の頭上に手をかざすと、人間の体が光りだし姿を消した。そんな光景が、何人もの上位天使の前で繰り広げられていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る