159 終わりの始まり
心地良い。
風を切り飛翔する。雲に視界を遮られ、抜けた時の青。
そろそろ二人が現れるころだ。
オルベルトの塔の最上階に建てられた召喚棟から、観世康太郎とリア・ロロ・アーナプオが姿を現した。
二人のもとに舞い降りるアザゼル。
「迷い人だね」
アザゼルは二人に話しかけた。
アザゼルを視界に認めた康太郎は、俯き自嘲気味に笑った。
「この時を待っていた。幾度この世界線を通り抜けたことか」
十四の光輝く人型の陽炎が3人を取り囲んでいた。
「遅かったな。待ちくたびれたよ。いつになったら私を止める者が現れるのか、ずっと待っていたんだ」
「初めてその可能性に気付いた時、苦しかったよ。涙が止まらなかった。だがそれもここで終わる。永遠に回り続ける因果の歯車から、今お前を解き放ってやる」
康太郎はアザゼルを睨むと涙を流し笑った。
「薄々、気づいてはいたが、もう疲れた。この邪悪で荒廃したゲームに引導を渡す存在をいつしか心の底から求めていた。ありがとう。邪悪な私を止めてくれて」
「お前が気付いていた次元はフェイクだ」
「そうか成長したんだな」
康太郎はアザゼルを殴った。数メートル先に吹き飛ぶアザゼル。
避けもせず、反撃するそぶりも見せない、アザゼル。
康太郎は涙を流しながら、馬乗りになってアザゼルを殴り続けた。康太郎の哄笑が響き渡る。
十四の光輝く陽炎から光の鎖が現れるとアザゼルは拘束された。
アザゼルは安らかに微笑んでいた。
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