160 朝

 ビルとビルの間を飛ぶ。

 街。

 朝が早いせいか、人影はまばらだ。

 澄み切った早朝の風を切りながら、遊泳飛行を楽しむのが僕の日課だ。

 新しい東京の朝。

 太陽との位置を調整し、プレートの位置も自分好みのあの時に戻した。

 21世紀と呼ばれていたあの頃。

 僕の罪が許されてから、どれくらいの時が流れただろう。

 飛翔散歩を終えると、僕はこの時代には不釣り合いな白いドーム型の家に帰った。


「おかえり」

 玄関のドアを開けると、ミカエルの声が聞こえた。

「コーヒーでいいかい」

 アザゼルは軽く頷くと、ありがとうと言って出されたコーヒーを一口飲んだ。

 カーテンを開くアザゼル。

 ベランダからは、朝日がちょうど顔を覗かせている。

「ルシファーとルフレルはジョギングに行ってる」

 アザゼルはベランダに出ると、朝の空気をめいいっぱい吸い込み深呼吸した。

 両手を広げ手の平から光の粒を解き放つと、それらは空に集まって光の雨となって降り注いだ。

 家の窓から幻想的な光景を眺める住民たち。

「また降らせたのか」

「うん。楽しいからね」

 ジョギングから帰って来たルシファーの問いかけに笑顔で答えるアザゼル。


 四人は朝食を済ませると、東京や日本、アメリカ、ロシア、パキスタンを飛びながら視察した。

 地球全体を見回した後は、火星とエアの宇宙災害対策機構支部に寄り、支部長からの報告を受ける。


 次はアンタレスだ。

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