第二章

36 夢

「夢か」

 ルーシェは自宅のベッドで目を覚ました。シーツが汗でびっしょりと濡れている。バスルームで汗を洗い流し、ベッドの横にある椅子に座り机に顔を伏せるルーシェ。

 窓から見える満月から零れる光を眺めていると、次第に眠気が襲ってきた。




§§§




「夢診断?」

 ルーシェは食べかけの牛丼を、急いで飲み込むとクミコに聞き返した。

「ねえ。面白そうじゃない?」

 スマホのサイトをルーシェに見せながら笑うクミコ。

 ”遊夢ゆうむ”と丸文字で表示された、ウェブサイトがスマホに映し出されている。

 マミツオリユミア学院の食堂で、ルーシェとクミコは昼食をとっていた。

「すぐ近くにあるんだよ。駅ビルの中に。行ってみようよ。悪い夢見なくなるかもよ」



 この時代は魔法と科学が共存する世界。324年前に火星を襲った超自然災害により、火星は死の星となった。

 エル家に代わり火星を管理し始めたゼル家、ファー家、ロ二オス家によって文明は急速に復興し、人類の人口も増え始めていた。


 マミツオリユミア学院は魔法と科学を専攻する学院である。ゼル、ファー、ロ二オスの三部族によって出資されているが、この学校は主にゼル家が運営を行っている。




§§§



「はやく! はやく!」

 手招きしながらルーシェの先を走るクミコ。

「急かす意味が、分かんないんだけど!」

 ルーシェは、だいぶ先を行ってしまっているクミコに呼び掛けた。

 駅ビル一階のカフェのテラス席では、OLやサラリーマンがノートパソコンに向かいあったり、談笑を楽しんだりしている。

 ルーシェは昼下がりの和やかな光景を尻目に、クミコの元へ走った。

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