14 怒り

 城内に叫び声が聞こえる。

 ミカエルの怒声だ。


 そこらじゅうの壁に、大小さまざまな穴が開き、今にも城が崩れ落ちそうだった。

「くそが、くそが、くそ野郎が! 下僕の分際で、人間の分際で。家畜風情が。内蔵を引きずり出し生きたまま四肢を捥いでやるわ!!」

「ミカエル様、もうその辺で」

 ラファエルがミカエルに言った。

「何故あの場で討ち取らなかった」

 ミカエルが怒鳴った。


 ミカエルの前には、ラファエル、ガブリエル、ウリエルが跪いていた。

「敵の攻撃の最中に逃げられました」

 ラファエルが続けた。

 ガブリエルは意味ありげに、不敵な笑みを浮かべた。

 ミカエルはガブリエルの顔面を殴ったが、ガブリエルは片手でミカエルの拳を受け止めていた。

「貴様。なんだその顔は。言いたいことがあるなら言ってみろ」

 ミカエルがガブリエルを睨みつけた。

「自分でやれば、よかったんじゃないですかね?」

 ミカエルは怒りの形相で、ガブリエルに掴みかかり、何発も顔面を殴った。ミカエルが衝撃波を放つ構えをとった瞬間、ラファエルがミカエルを引き離し、ウリエルがガブリエルを引き離した。

「ガブリエル、いい加減にしろ」

 ガブリエルを窘めるウリエル。

「彼の次は、僕がこの城の当主だからね」

「いい加減にしないか!」

「今の僕なら勝てる」

 次の瞬間、ウリエルのボディブローがガブリエルの腹部を撃ち、ガブリエルは気を失った。

「後で、教育しておきます。罰はこの私目に何なりとお申し付けください」

 ミカエルの面前で跪き、ウリエルが言った。

「では、左腕をよこせ」

 ウリエルは右手で自らの左腕をもぎ取り、ミカエルに差し出した。

「次は左腕だけでは済まぬぞ」

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