15 疑心

アザゼルの城の大広間で、アザゼルと康太郎、リア、イピテルという名だった異形が、円卓を囲んで座っていた。

「これからどうするんだ」

康太郎がアザゼルに言った。

「君たち二人も、本当はあそこから別の星に飛ばされるはずだったのにすまない」

「そうだったんだ。べつにいいよ」

「これから審議会が開かれるだろう。エル家の都合のいいように進められるだろうが、可能な限り私たちの立場が悪くならないように、対話するしかないだろう」

「転生堂でミカエルと何を話していたんだ」

アザゼルがイピテルに聞いた。

「火星を解放するように頼んでいた。人間の女は天使たちに好き勝手に凌辱され、気まぐれに命が奪われる。火星はそんな星だ。私のような人間を管理する者だけが、記憶を消されず任務に就かされ、それ以外の火星人は皆自分を人間だと思い込んで生きている。高々100年足らずの寿命で、死ねばそれで終わりだと思って生きているんだ。自分たちが本当はここの住人だったということは、記憶を奪われ、遥か昔に忘れてしまったというわけだ」

「バカな、さすがのエル家でも、そこまでのことをするわけがない。そんなバカな話は一度も聞いたことがない」

アザゼルが身を乗り出して、イピテルに詰め寄った。

「では、自分の目で確かめてみたらどうだ?」

「だめだ。あの星は、エル家の管理下にある。エル家の者以外は、立ち入ることができない」

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