130 脱出

「すまない。止められなかった。狂神追放令が可決されるのを」

 彼方から発せられる思念波。

 ミカエルは訳が分からず、ただ前方に現れた気配に意識を向け続けた。

 警戒を怠らず不穏な動きが少しでもあれば、攻撃に転じられるよう攻撃態勢をとるミカエル。

「今、出す。待ってくれ」

「お前は一体何者だ。何故謝る」

「私はルシファー。この恒星系と、それに隣接するいくつかの恒星系に溢れ返った狂神を、我々の管轄する恒星系外に無差別に追放する狂神追放令を食い止めるのが私の任務であったが失敗に終わった。すまない」

「私たちの恒星系にやってきた狂神を何とかしろ」

「私にできる事なら何でもやる」


 暗闇で満たされた空間に光の筋が差し込み、その筋は勢いよくその数を増した。あっという間に輝きと明るさが暗闇を薙ぎ払った。ルシファーによってミカエルの肉体が破壊されると、自動で質量が生み出されるシステムは機能せず肉体の呪縛からミカエルは解放された。


「私にできることは君の恒星系に赴き、狂神を拘束すること、柱と二足歩行生物を破壊することだが、困難を極めるだろう。君の恒星系を元の状態に戻せる可能性は五分五分だ。君に対する仕打ちを見ればわかるが、当局は自らの管轄領域以外を顧みることはない。時代遅れの太古の規律を守ることだけにそのすべてを費やしている」


 明るさを取り戻した空間に再び闇が訪れた。

「まずい。出るぞ」

 ルシファーがそう言うと暗闇の空間に迸る光の亀裂が走った。

「出ろ」

 2人がその亀裂から外に出るとそこはアンタレス恒星系内の宇宙空間だった。

 輝く恒星アンタレスとそれに連なる惑星群を二人は見降ろしていた。

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