98 脅迫と強要

「確かに我々は一度主君を、エル家を裏切り、人間として生きることを選んだ」

 落ち着き払った顔で、述べるジェイマス。

「忠義とは何だ。我々は何のために存在しているのだ。裏切り、そして、信頼されぬがゆえに偽りの記憶を植え付けられ、使役されるるこの愚かで醜い存在を何と呼ぶ」

 動揺を隠しもせず、感情をあらわにするナトリア。


「知らねえよ。被害者ぶっても何も変わらねえ。お前らがクズなのは何百万年も前からわかりきってることだ」

 怒りの形相で歩み寄ろうとする公寿郎を、右腕で制するアザゼル。

「自らの愚行により蒔いた種だ。自業自得だろう。いくら罪悪にさいなまれようが、お前たちを引きずってでも、私たちは私たちのゆくべき道を行く」

 アザゼルの声が静かに響いた。


「ここで断ったところで、記憶を消され、いいように情報を吸い取られるだけ。ここは協力する振りをして、裏をかこうなんて馬鹿な事を考えている人はいますか?」

 仙寿は三人の表情を見まわしながら尋ねた。

「さすが。普通だったら、こんな質問投げかけられたら、少しくらい表情や雰囲気に違和感が出てしまうものだけど、影の帝王って呼ばれるだけはありますね。

 一つ忠告しておきますけど、こっちは遠隔地から人の記憶を読み取ることのできるスーパーマジックを用意してるから、下手なことはしないことですね」

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